さンザイ砂漠とヤクホーシの謎 新たな旅立ち
モモトたちはサンザイシティへ戻ると、すぐにフンサイ長老と合流した。
長老は傷だらけのオーディとサイリュウを見ると、表情を曇らせる。
「……間に合わなんだか。」
モモトはテンビーンで起きたことを、一つ残らず話した。
ヤクホーシを奪われたこと。
キンキという男のこと。
そして、ユウガイ旅団という名を。
話を聞き終えた長老は、静かに目を閉じた。
「なんと……。ユウガイ旅団か。」
「長老、知ってるの?」
モモトが尋ねる。
長老はゆっくりとうなずいた。
「最近、この辺りで耳にするようになった集団じゃ。」
「自分たちだけの国を作ろうとしてるらしい……そんな話を聞いておる。」
そのとき、一人の町人が口を開いた。
「長老。旅団の者たちは、スイザイの国の住人だと聞いたことがあります。」
「スイザイ……。」
モモトはその名を小さくつぶやく。
その横でビリュウは、ぎゅっと拳を握っていた。
「取り返したい。」
誰にも聞こえないくらい小さな声だった。
しかし、その目だけは真っすぐ前を向いていた。
「ヤクホーシを……取り返したい。」
長老は静かに首を横へ振る。
「それは、危険じゃ。」
「スイザイは隣の国とはいえ、行く途中には見たこともない魔物も数多くいると聞く。」
「そのうえ、ユウガイ旅団じゃぞ。サイリュウでも歯が立たなかったんじゃ。」
「今のお前ではとても無理だ。」
ビリュウはモモトを見る。
少しだけ不安そうに。
それでも勇気を振り絞るように言った。
「お願い……。一緒に来て。」
モモトは笑顔でうなずいた。
「もちろん。ぼくも一緒に行くよ。」
長老は止めようと口を開く。
「待て。」
「お前たちだけでは——」
その瞬間だった。
ピルケースがまぶしく光り始めた。
炎の部屋が、再び赤く輝く。
「えっ!?」
モモトが手に取る。
光はビリュウを包み込み、モモトの体も浮かび上がる。
「モモト!」
「ビリュウ!」
長老が手を伸ばした。
しかし届かない。
赤い光は二人を優しく包み込むと、そのまま空へ舞い上がった。
「わあああっ!」
次の瞬間——。
二人の姿は、光の中へ消えていた。
気がつくと、モモトは「まほの薬局」の中に立っていた。
「……戻ってきた。」
目の前では、おじいさんが驚いた顔をしている。
「モモト……?」
「おじいちゃん!」
おじいさんは何度かまばたきをすると、モモトの姿を上から下まで確かめた。
「さっき、赤い光に包まれて消えたと思ったら……。」
「今度はまた急にまぶしくなって、目を閉じたほんの一瞬の間に戻ってきおった。」
「えっ?」
モモトは驚いて店の中を見回した。
何も変わっていない。
どうやら、サンザイ砂漠であれだけの時間を過ごしたのに、こちらの世界ではほとんど時間が経っていなかったらしい。
モモトはサンザイ砂漠で起きた出来事を夢中で話した。
ヤクホーシのこと。
テンビーンのこと。
そして、ユウガイ旅団のこと。
おじいさんは最後まで黙って聞くと、静かにうなずいた。
「そうか、次はスイザイと言ったんじゃな。」
そう言うと、木箱の中を探り始める。
「さて……。」
取り出したのは、目盛りのついた細長いガラスの容器と、小さなカップだった。
「おじいさん、それなあに?」
「メートルグラスと薬杯じゃ。」
おじいさんは二つを優しく並べる。
「向こうの世界でどう使われるかは分からんが、この世界ではシロップや薬液の量を量る道具じゃ。」
「きっと、次の冒険でも役に立つはずじゃろ。」
そう言って、モモトへ手渡した。
「ありがとう!」
と言ってうれしそうに受け取った。
モモトはポケットからピルケースを取り出す。
七つの部屋のうち、水の部屋だけが淡く光っている。
モモトはピルケースを胸に抱いた。
頭に浮かぶのは、傷ついて倒れたオーディ。
ヤクホーシを守ろうと最後まで立ち向かったサイリュウ。
そして、ヤクホーシを奪い、テンビーンとともに去っていったユウガイ旅団。
炎の部屋をのぞくと、一包の細粒が静かに収まっていた。
モモトはそっとほほえむ。
「待っててね。」
「みんなで、きっと取り戻そう。」
そうつぶやくと、水色のしずくの刻印へ、ゆっくりと手をかけた。
カチッ――。




