第4話 夜の試練と、小さな宴
今回ちょっと短いです。
夕暮れ時、村の周囲に作った簡易防衛線の最終確認を終えた。
竹で作った音笛が風に揺れて不規則な音を立て、強めのハーブを焚いた煙が風下へ流れている。
見た目は粗末だが、これで魔狼が近づきにくくなるはずだ。
リリアが俺の隣で汗を拭いながら、熱っぽい目で言った。
「悠真様……本当にこれで大丈夫でしょうか?
もし何かあったら、私……悠真様を守りますから」
彼女のワンピースは汗で肌に張り付き、胸の谷間や腰のラインがくっきりと浮かび上がっている。
甘い体臭と熱い吐息が、すぐ近くで感じられた。
俺は苦笑しながら答えた。
「大丈夫。みんなで村を守るんだ。
俺は……ただ、のんびり暮らしたいだけだから」
夜が深まる頃、村人たちが集まって見守る中、森の奥から魔狼の遠吠えが聞こえてきた。
トムが緊張した声で言った。
「来た……今年は本当に大きい群れみたいだ」
カイルが斧を握りしめながらも、俺をチラリと見た。
「悠真さん、本当に戦わなくていいのか?」
俺は静かに頷いた。
「音と臭いで十分追い払えるはずだ。
もし近づいてきたら、その時は……まあ、その時考えよう」
時間が経つにつれ、狼の気配が近づいてきた。
しかし、竹の音が不規則に鳴り続け、ハーブの強い煙が漂うと、魔狼たちは混乱したように吠えながら徐々に距離を取っていった。
結局、一匹も村の畑には近づけずに森の奥へ退散した。
村人たちから大きな安堵の歓声と拍手が上がった。
「やったぞ!」
「戦わずに追い払えた!」
「悠真さん、ありがとう!」
マリアさんが俺の背中をバンバン叩きながら笑った。
「すごいわねえ! 頭良いだけじゃなくて、落ち着いて指示出すなんて。リリア、良い人捕まえたわよ~」
リリアは真っ赤な顔で俺の腕にぎゅっとしがみついた。
「悠真様……本当に、ありがとうございます。
あなたが来てくれて……この村、変わりそうです」
その夜、村では小さな祝宴が開かれた。
焚き火を囲み、ビールに似た醸造酒と、俺が少し調味料を加えた料理が並ぶ。
村人たちは皆、笑顔で杯を交わしていた。
トムが俺に杯を差し出して言った。
「悠真さん、今日本当に助かったよ。俺たちだけじゃ、絶対に戦うしかなかった」
カイルも頷いた。
「これで今年の収穫も安心だ。悠真さん、しばらくこの村にいてくれよ」
俺は杯を受け取りながら、静かに内心で思った。
(……みんな良い人たちだ。
でも、俺は目立ちたくない。チートも最小限。
本当に、ただのんびりしたいだけなんだ……)
リリアが俺の隣にぴったりと座り、肩を寄せてくる。
彼女の体温と甘い香りが、夜の空気の中で濃く感じられた。
俺はまだ気づいていなかった。
この小さな村で起こり始めている、静かな変化の予兆に。
21時に投稿していきます。
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