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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第134話 極振りヒーラー、ジャックポット

ダンジョン最奥――そこに、巨大な扉があった。


金色の装飾が施された石造りの扉。

近づくだけで、胸の奥を押されるような圧迫感がある。


コインが肩の上で毛を逆立てた。

低く、小さく唸る。


その瞬間――

扉が、音もなく開いた。


警戒しながら足を踏み入れる。


内部は、広大な空間だった。

天井は遥か上方。声を出せば反響しそうなほどの広さがある。

床一面には金色の紋様が刻まれ、淡い光を帯びていた。


そして中央に――それはいた。


《黄金の番人 ギルデア》


全身を黄金の甲冑で覆った、巨大な騎士型モンスター。

頭頂はソルの倍以上。静かに立っているだけで、空間そのものを支配しているような威圧感があった。


両手に握られた大剣が、松明の光を受けて鈍く輝く。


「でかい……」


思わず呟く。


コインがさらに毛を逆立てた。

普段の余裕は消え、警戒だけが残っている。


ギルデアが、ゆっくりと大剣を持ち上げた。

重い金属音が空間に響く。


次の瞬間――大剣が横薙ぎに振るわれた。

ソルは反射的に跳び退いた。刃が空を裂き、わずかに遅れて風圧だけが頬を撫でる。


当たらない。


「外れた……?」


回避というより――攻撃そのものが外れた感覚だった。

直後、ギルデアの大剣が淡く発光する。クリティカルの予兆。


「っ」


踏み込みを止め、さらに距離を取る。

振り下ろされた大剣が壁へ叩きつけられ、石床を深くえぐった。


「運が絡む攻撃か……面白い」


命中も、回避も、クリティカルも。

すべてが確率に支配されている。まるで、自分と同じ土俵だ。


ソルは踏み込んだ。


「《ラッキーストライク》!」


確定クリティカルの一撃。

黄金の光が炸裂し、ギルデアの巨体がわずかに揺れる。HPが大きく削れた。


即座に反撃。

大剣が振り下ろされる。


――当たらない。


「よっしゃ!」


間髪入れず追撃する。


「《奇跡の連鎖》」


クリティカルが連続発生。

一発、二発、三発――連鎖のたびにSTR、VIT、AGIが底上げされていく。

視界が澄み、体が軽い。一撃の重さも明確に増していた。


さらに踏み込む。


「《フォーチュンブレイド》!」


LUK依存の強化をまとった剣閃が、黄金の装甲ごとギルデアを斬り裂いた。

HPを大きく削ったことで、ギルデアの動きが変わった。


ギルデアの動きが変わった。

大剣をゆっくりと頭上に掲げる。刃先に金色の光が集まり――


次の瞬間、無数の光弾が放たれた。


扇状に広がる広範囲攻撃。

一発ごとは確率で外れるが、数が多すぎる。回避を前提にした攻撃ではない。


最初の一斉射。

完全には躱しきれない。


三発が、紙一重で体をかすめた。


「っ……」


HPが削れる。

直撃ではない――それでも軽い痛みでは済まない。


続けて第二射。

弾幕はさらに密集していた。


一発が肩を抉るように掠める。


「っ……!」


HPが大きく削れた。

掠っただけでこのダメージ。直撃していれば終わっていた。


「多すぎる……」


その時、肩の上でコインが短く鳴いた。


「《幸運の爪》!」


小さな爪が光を帯び、ソルの体に触れる。

瞬間、LUKが大きく跳ね上がった。


「コイン……!」


体がふっと軽くなる。

視界が澄み、弾道がはっきりと見えた。


次の一斉射。


躱せる。


一発、二発、三発。紙一重で回避していく。

一発がかすめたが、今度はダメージが浅い。回避率そのものが底上げされている。


「回避率が上がってる……!」


間合いを詰める。


「《ダブルアタック》!」


二連の斬撃が閃く。


「《ラッキーセブン》!」


七連の剣閃が途切れなく叩き込まれた。

《幸運の爪》で底上げされたLUKが乗り、一撃ごとの威力が跳ね上がる。


ギルデアのHPが、ついに残りわずかまで削れた。


直後――動きが変わる。


大剣を両手で構え直し、全身に金色の光をまとい始めた。

重い予備動作。だが、その分だけ圧力が凄まじい。


ソルは息を整えながら、わずかに重心を落とした。


躱せないわけじゃない。

だが――まともに避け切れる保証もない。


一撃でも深くもらえば終わる。

VITゼロという事実が、嫌でも現実味を帯びていた。


その時だった。

コインの瞳が、静かに光る。


「《幸運招来》!」


コインが持つ確率判定を強化するスキルが発動した。

柔らかな光がソルを包み、空気がわずかに軽くなる。

《フォーチュンブレイド》が、今までとは違う輝きを持っている。


「……これ、いける」


ギルデアが大剣を振り下ろしてくるが、ソルは躱さずに、敢えて踏み込んだ。


「《フォーチュンブレイク》!」


渾身の一撃を叩き込んだ瞬間、《奇跡の一撃》が発動し、剣が白金色の光に包まれた。

通常の何倍もの火力が一点に凝縮され、炸裂した。


ギルデアのHPが一気に削られ、巨体が音もなく崩れ始めた。



ソルはその場に膝をついた。


「……ギリギリだった」


HPゲージを確認する。

細い。あと一撃でも掠めていれば、間違いなく終わっていた。


小さな足音が近づく。

コインが駆け寄り、前足でソルの頬をぺしぺしと叩いた。


「いたた……わかった、大丈夫だって」


心配しているのが丸分かりで、思わず苦笑が漏れる。

その時――


足元の金色の紋様が淡く輝いた。


空間がきしむように揺れ、光が一点に集まる。

やがてその中心から、ゆっくりと金色の宝箱が姿を現した。


重厚な装飾が施された、いかにも特別な箱だ。


「……宝箱?」


ソルが思わず呟く。


コインが小さく鳴き、宝箱の前にちょこんと座った。

まるで「開けろ」とでも言うように。


ソルは立ち上がり、ゆっくりと手を伸ばした。


《ジャックポットシリーズ》


《ラッキーハット》(頭)

クリティカル発生時、追加でLUKが一時的に上昇する。【LUK+20】【AGI+10】

幸運を呼び込む金色の帽子。コインが転がるたび、運命が微笑む。


《フォーチュンコート》(体)

被ダメージ時、一定確率でダメージを無効化する。【LUK+25】【AGI+15】【VIT+5】

奇跡を纏う金色の軽装。幾千の幸運が、その身を守る盾となる。


《ジャックナイフ》(右手)

攻撃時、LUKに応じて追加ダメージが発生する。【LUK+20】【STR+10】【AGI+10】

幸運を刃に宿した短剣。気まぐれな運命が、時に神をも超える一撃を生む。


《ポットナイフ》(左手)

二刀流時、クリティカル率が追加で上昇する。【LUK+20】【AGI+15】

もう一つの幸運を宿した短剣。表と裏、二つの奇跡が揃う時、真の力が解放される。


《コインステップ》(足)

移動速度が上昇する。戦闘中クリティカルが発生するたびにAGIが一時的に上昇する。【AGI+20】【LUK+15】

幸運の足取りで戦場を駆ける。コインが弾む音が、勝利へと続く道を示す。


《ラッキーソール》(靴)

回避率が上昇する。回避成功時、次の攻撃のクリティカル率が大幅に上昇する。【AGI+25】【LUK+15】

幸運に導かれた一歩が、次の奇跡を呼び込む。金色の軌跡が、戦場に幸運を刻む。


「……全部LUKとAGIか」


思わず笑う。


「俺にぴったりじゃん」


ソルは視線を落とし、隣にいるコインを見た。


「コイン、お前がここに連れてきたんだろ」


コインは静かに前足を揃え、いつもの招き猫のポーズを取る。

まるで、それが答えだと言うように。


ソルは小さく息を吐いた。


「……ありがとな」


コインが、満足そうに小さく鳴いた。




ギルドホームに戻ると、ルナが真っ先に気づいた。

「装備、全部変わってる!?」


「コインが連れてってくれたダンジョンで手に入れた」


「コインが?」とステラが目を丸くする。

「テイムしたばかりなのに、もうユニーク装備をゲットさせてくれたの……?」


ヒマワリが呆れたような顔でコインを見る。コインはソルの肩の上で得意げに鳴いた。


「俺の運、さらに上がったな」

「調子に乗りすぎ」とルナが即座に返す。


ルナは装備をじっと見つめたまま、小さく頬を膨らませた。


「いいなぁ……ユニーク一式とか、私も欲ーしーいー」


指先でソルのコートの端をつまみ、羨ましそうに揺らす。


「私もコインに連れてってほしい……」


ソルがコインに視線を向ける。コインは金色の瞳で静かに見返していた。

テイムした翌日にユニーク装備一式を揃えてくれた猫。

幸運というより、最初からそうなると知っていたかのような導き方だった。


ソルが小さく笑う。


「いい相棒だな、コイン」


コインは招き猫のポーズのまま、尻尾だけをゆっくりと揺らした。

次は5/21 21時投稿予定

お楽しみに!

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