第114話 極振りヒーラー、ルミナとソラリスの育成
翌日、ステラとヒマワリは第四層「磐嶽回廊」の岩山エリアへと足を踏み入れた。岩肌に沿って続く細い道を歩きながら、二人はそれぞれの指輪を見つめる。
「ルミナとソラリスのレベル上げ、しないとね」
ステラが指輪に触れる。
「《招致》」
淡い光が広がり、小さな不死鳥が姿を現した。
手のひらに乗るほどの大きさで、金色の炎がふわりと揺れている。
くぅ、と小さく鳴いてステラの周りを一周した。
「《招致》」
ヒマワリも指輪から小さなフルグラウスを呼び出す。
白銀の子獅子が地面に降り立ち、たてがみから細い雷光が散った。
金色の瞳がヒマワリを見上げる。
「かわいい……」
ステラが目を輝かせる。
「育成に集中しよう。あそこにモンスターがいる」
ヒマワリが前方を指差す。岩陰から、岩石で構成された魔物「ロックゴーレム」が姿を現した。第四層の標準的な敵で、防御力が高い。
「私が引きつけるね。《ハイヒール》《再生の祝炎》!」
ステラが回復魔法を連続で発動する。
《リストア・ヴェール》がバリアとして展開され、《再生の祝炎》の継続回復がバリアの上限を押し上げていく。
「《挑発》!」
淡い赤の衝撃波が広がり、ロックゴーレムの敵意がステラに向く。
重い足音を立てながら、ゴーレムが拳を振り上げた。
「来い……!」
ステラがバリアを前に構える。
ゴーレムの拳がバリアに激突し――
バリアが軋む。そして《リフレクト・ヴェール》が発動し、膨大なダメージが反射される。
ゴーレムのHPバーが一気に削れ、そのまま光の粒子となって消えた。
「……あ」
ステラが固まる。
「反射で倒しちゃった……」
「反射は強いけど、こういう時は扱いづらいね」
ヒマワリが苦笑する。
「自分が受けるダメージを抑えられたらいいんだけど……」
ステラが少し考えてから、次の方法を試すことにした。
次のモンスターが現れた。
今度は「アイアンビースト」という鉄の鎧を纏った狼型の魔物だ。
「《プロテス》!」
ステラが自分自身のVITを大幅に上昇させる。防御力が底上げされ、受けるダメージが減る。
「《スイート・レギオン》――キャラメリア!」
淡い光が広がり、デバッファーの聖霊が姿を現した。
杖を持った少女の姿で、ふわりとステラの隣に降り立つ。
「敵を弱めるわ♪」
「お願い!敵を弱くして」
「任せて♪」
聖霊は軽やかに宙を回り、杖をくるりと振った。
「《甘い誘惑》――《粘つく呪縛》!」
キャラメリアが杖を振ると、甘いシロップのようなエネルギーがアイアンビーストを包み込む。
移動速度が大幅に低下し、攻撃力も下がった。
「《挑発》!」
ステラが再び敵意を引きつける。
アイアンビーストがゆっくりとステラに向かって突進してくるが、速度が遅く、威力も抑えられている。
拳がバリアに当たり――今度は反射ダメージが控えめだ。
アイアンビーストのHPバーがわずかに削れたが、まだ大部分が残っている。
「よし、これならいける! ヒマワリちゃん、お願い!」
「了解。《加速》!」
ヒマワリが移動速度を上昇させ、アイアンビーストの側面へと回り込む。
「《ウィンドスラッシュ》!」
風を纏った斬撃がアイアンビーストの側面を切り裂く。HPバーが削れていく。
「《甘美なる束縛》!」
キャラメリアがさらに強力な拘束スキルを発動する。
アイアンビーストの足元から甘いシロップが這い上がり、全身を包み込んで動きを完全に封じた。
「今だよ!」
ステラがルミナに声をかける。小さな不死鳥が羽ばたき、アイアンビーストの上空へと飛んだ。
「《燐火》!」
ルミナが小さな炎の玉を放つ。金色の炎がアイアンビーストに命中し、HPバーがさらに削れた。
「ソラリスも!」
ヒマワリが呼びかける。小さなフルグラウスがたてがみの雷光を集中させ――
「《雷吼》!」
細い雷撃がアイアンビーストを貫く。
HPバーが赤くなり、あと一撃で倒せる状態だ。
「もう一回!」
ルミナとソラリスが同時に攻撃を放つ。
《燐火》と《雷吼》が命中し、アイアンビーストが光の粒子となって消えた。
「やった! レベルが上がった!」
ステラが嬉しそうに言う。
ルミナとソラリスの体がほんの少しだけ大きくなった気がする。
――実際気がしただけなのだが…
「この調子で続けよう」
同じ要領で、次々とモンスターを倒していく。
ステラがキャラメリアがデバフで敵を弱体化し、ヒマワリが剣で大部分のHPを削る。
そして最後にルミナとソラリスがとどめを刺す。
「なんだか親鳥みたい」
ステラが戦闘の合間に呟く。
ルミナがステラの肩に止まり、くぅ、と鳴いた。
「ルミナは雛鳥みたいなものだしね」
ヒマワリが笑う。
ソラリスが足元で小さく吠え、まるで自分も褒めてほしいと言っているようだ。
「ソラリスもがんばってるよ」
ヒマワリがソラリスの頭を撫でる。
ソラリスが嬉しそうに尻尾を振った。
何度かモンスターを倒し、レベルが順調に上がっていく。
レベル二、レベル三、レベル四――
そしてレベル五に到達した瞬間。
「あ、新しいスキルを覚えた!」
ステラがステータスを確認する。
ルミナ――《微光の再生》を習得
HPが一定以下の味方に、微量のHP回復を自動で行う。
「回復スキル! すごい、ルミナも回復できるんだ」
ソラリスも新しいスキルを習得していた。
ソラリス――《陽閃》を習得
主人が連続攻撃を成功させるほど、クリティカル率が微増する。
「連続攻撃のサポートか。ヒマワリちゃんと相性良さそうだね」
「そうだね。これは試してみたい」
ヒマワリが剣を握り直す。
「でも、今日はこれくらいにしよう。疲れたし」
「そうだね。ギルドホームに帰ろう」
二人が《帰還》を使い、ルミナとソラリスを指輪の中に戻す。
光の粒子が指輪に吸い込まれ、静かに収まった。
ギルドホームに帰ると、全員が揃っていた。
ノエルがテーブルの上に様々な素材を広げ、目を輝かせている。
「装備にスキルを付与できるんだ! これでもっと強い武器が作れる!」
「ノエル、落ち着いて……」
「だって武器にスキルを付与したら魔剣みたいじゃん!一度魔剣を作ってみたかったんだ」
「なんていうか……男の子だねえ」
リリアが苦笑する。
「あ、ステラとヒマワリが帰ってきた。どうだった?」
ルナが二人に気づく。
「テイムモンスター、手に入れたんだよね? 見せて見せて!」
「うん。ルミナとソラリス」
ステラとヒマワリが同時に《招致》を発動する。小さな不死鳥と小さなフルグラウスが光の中から姿を現した。
「わあ……!」
ルナが目を輝かせる。
「かわいい……!」
リリアが手を伸ばす。ルミナがリリアの手のひらに止まり、くぅ、と鳴いた。
「ソラリスもかわいいね」
ノエルがソラリスの頭を撫でようとするが、ソラリスが小さく吠えて威嚇する。
「あ、警戒されてる」
「ソラリス、人見知りなのかもね」
ヒマワリがそう言うと、ソラリスは彼女の足元へと戻り、くるりと身体を丸めた。
「……これから、どうするの?」
ティアが淡々と問いかける。
「第四層のボスを倒して、次のエリアに進むつもり」
「それなら、みんなで行こう」
バルトが自然に言った。
「うん!」
その後、全員で第三層のボス「嵐竜ガルディア」に挑んだ。
八人全員が揃った【星天の翼】の戦力は圧倒的だった。
ティアの《七の矢 神降》が翼を貫き、ヒマワリの二刀流が弱点を切り裂く。
ルナの《サンダーボルト》が雷属性の弱点を突き、ノエルとバルトが前衛を固める。
ステラがフルサモンで十体の聖霊を召喚し、全員をバフと回復で支える。
リリアとソルが後衛を援護し、戦闘は順調に進んだ。
嵐竜ガルディアは最後の咆哮を上げて光の粒子となり、【星天の翼】は第四層への道を開いた。
「やった! これで全員、第四層に進出できる!」
ノエルが拳を握り、嬉しそうに声を上げる。
「次の探索が楽しみだね」
ステラが微笑んだ。
「……その前に、準備を怠らないこと」
ティアが落ち着いた声で釘を刺す。
「わかってる。明日から、また頑張ろう」
ヒマワリが静かに頷いた。
全員が揃って、第四層へと続く扉を見つめる。
新たな冒険は、もうすぐそこだ。
ルミナとソラリスもまた、その旅の一員となった。
小さな仲間たちと共に、【星天の翼】はさらに高みを目指していく。
次は5/1 21時投稿予定
お楽しみに!




