表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/125

第111話 極振りヒーラー、風神ヴァルムとの決戦

全員が揃った【星天の翼】は、ステラとヒマワリが開拓したルートを進んでいく。

二人が先導する形で、第三層の深部へと足を踏み入れた。


「ここ曲がったところに隠し部屋があったんだよ」


ステラが壁の一点を指差す。


「ほんとだ……気づかなかった」


ノエルが壁を見つめる。どこからどう見ても普通の石壁だ。


「……索敵しても反応がありませんでした。なぜ気づいたんですか?」


ティアが真剣な目でステラに問いかける。


「なんとなく?」


ティアが無言で遠い目をした。



霧を抜け、空の神殿が視界に広がった瞬間、初めて来たメンバーたちは思わず足を止めた。


「わあ……きれい!」


ルナが目を輝かせる。


「雲の上みたいだ」


ソルが感嘆する。


「……確かに、来る価値はあるな」


バルトが静かに頷く。


「写真撮りたい……」


リリアが小声で呟く。


ステラはその光景を眺めながら、初めてここに来た日のことを思い出していた。

あの日もこうして立ち止まり、ただ美しいと思った。

でも今日は違う――みんなと一緒に、その景色を見られた。それが、何より嬉しかった。




神殿の奥、巨大な扉の前で全員が足を止めた。

扉の隙間から漏れ出す気配は、前回来たときよりもさらに重い。


「ボスの情報はほぼゼロです。慎重に」


ティアが冷静に告げる。


「前衛はバルト、ノエル、私。後衛は変わらず」

ヒマワリが仲間の配置を確認する。


「任せろ」

バルトが盾を構え、前に踏み出す。


「私はみんなを守るね」

ステラが杖を握り直した。


扉がゆっくりと開く。

部屋の中央に、巨大な存在――全身が渦巻く風で形成された人型が立っていた。

翼を広げると、部屋全体に暴風が吹き荒れ、床は砕けて浮遊する足場へと変化していく。


「……侵入者か」


低く響く声が部屋全体を震わせる。全員が身構えた。


「なんか……かっこいい」


ステラが少しキョトンと呟く。


「今は感想を言う場面じゃないよ!」


ヒマワリが思わず突っ込んだ。


「《シールドバッシュ》!」


バルトが盾でヴァルムを殴る。スタン効果を狙った一撃だが、ヴァルムは微動だにしない。


「《ブレイクスラッシュ》!」


ノエルが装甲特効の斬撃を放つ。


ヴァルムは《ウィンドバリア》を展開。物理攻撃を風で受け流す防御だ。


「……効いてるのか?」


バルトが顔をしかめる。


「ダメージは通ってるけど少ないね」


ノエルが分析する。


「《マジックブースト》! 《サンダーボルト》!」


ルナが魔法攻撃力を二倍にし、雷を放つ。雷属性が風に乗って増幅し、ヴァルムが大きくのけぞった。


「あ、雷が効く!」

「風属性には雷属性が有効……覚えました」


ティアが冷静に分析する。


「《加速》《ストームスタンス》!」


ヒマワリが移動速度を上昇させ、二刀流の構えを取る。

全身が風と雷の光を纏い、ヴァルムの側面へ高速で接近する。


「《疾風連斬》!」


五連撃が側面を切り裂き、《ストームスタンス》の雷ダメージが積み重なる。


「《プロテス》《剛力》《迅速》《慈愛の抱擁》!」

ステラがバフを重ね、範囲内の全員に適用する。


リリアが《ホーリー・アロー》で牽制し、ソルが《ラッキーストライク》で確定クリティカルを叩き込む。


「よっしゃ、クリティカル!」


ティアが《五の矢 貫》を連射。矢が次々とヴァルムに命中する。


HPは順調に削れていく――しかし。



HPが半分を切った瞬間、ヴァルムの全身から光が溢れ出した。


「《嵐の具現》」


低い声と共に、全身から暴風が解き放たれる。

床が激しく揺れ、足場がばらばらに砕け散る。

継続的な風のダメージが全員を襲い、立っているだけで体力が削られていく。


「……押されてる」


バルトが踏ん張りながら言う。


「《クレセント・ウェイブ》!」


ノエルが衝撃波を放つが、暴風に呑まれてしまう。


「あ……MPがやばい」


ルナが顔をしかめる。連続で《サンダーボルト》を放ち続けた消耗が出てきた。


「ルナ、無理しないで!」


ソルが叫ぶ。


「ステラ、前衛のHP回復が間に合わない……!」


リリアが焦る。暴風の継続ダメージと攻撃が重なり、前衛のHPが急速に削られていく。


「……このままでは消耗戦で不利です」


ティアが冷静に状況を分析する。


「何か手はある?」


ヒマワリが問いかける。


誰も答えられなかった――その時。


「……みんな、少しだけ下がって」


ステラが静かに言った。


いつもの天然な雰囲気とは違う、落ち着いた確信めいた声。全員が反応する。


「フルサモンいくの?」


ヒマワリが確認する。


「うん。任せて」


ステラの全身から淡い光が溢れ出す。

空中に、次々と魔法陣が展開されていく――一つ、二つ、三つ……止まらない。

やがて、十個もの魔法陣が宙に浮かんだ。


光の中から、十体の聖霊が次々と姿を現す。

ナイトショコラ、ジェラート、シュトレン、ビスコルド、チョコガルド、キャンディス、マジョレーヌ、ショコア、キャラメリア、シスタルト。

それぞれが独自の武器と装備を持ち、まるで意志を持ったかのように軽やかに動き出す。


イベントで見慣れた光景とはいえ、十体が揃う光景は圧巻そのものだった。


「全員そろうと、壮観だな……」

ノエルが感心しきりに呟く。


「戦力的には、これで十分です」

ティアは冷静に状況を分析した。


「じゃあ、一気に仕留めよう」

ヒマワリは剣を握り直し、気合を込める。


ビスコルドとチョコガルドが前線へ躍り出る。


「《ビスケットバリア》!」

「《チョコレートウォール》!」


二重の防壁が瞬時に展開され、暴風をしっかり受け止める。

全員の足場が安定したのを確認して――


「今だ!」


ナイトショコラが《ショコラブレード》でヴァルムへ肉薄する。

ジェラートは死角から《ジェラートピアス》を連続で叩き込み、

シュトレンは《シュトレンクラッシュ》で正面から押し込む。


《ポップキャンディショット》

キャンディスの矢が一直線に核を射抜いた。


「《ファイアストーム》!」

マジョレーヌが炎の嵐を解き放ち、ヴァルムを包み込む。


「《甘い誘惑》《粘つく呪縛》!」

キャラメリアの魔力がヴァルムに付与され、動きが目に見えて鈍る。


「《甘美なる力》!」

ショコアが全員の攻撃力を底上げする。


「《シュガーヒール》」

シスタルトの回復魔法が範囲内のギルドメンバー全員を癒す。


「今だ! 《サンダーラッシュ》!」

ヒマワリが雷の如き速度で接近し、二刀から六連撃をヴァルムの核へ叩き込む。


「《七の矢 神降》」

ティアが全霊を込めた必殺級の一射を放つ。発動中の無防備をビスコルドが盾で守り、矢は暴風を切り裂き、核を貫いた。


「《マジックブースト》! 《サンダーボルト》!」

ルナが残りのMPを振り絞り、魔法攻撃力が倍化した雷を連続で降り注がせる。


「《ブレイクスラッシュ》!」

ノエルの装甲特効攻撃がヴァルムの核に突き刺さる。


「《グランドスラム》!」

バルトが盾を地面に叩きつけ、周囲の敵全てを吹き飛ばす。ヴァルムの巨体が大きくよろめいた。


「《ラッキーストライク》!」

ソルの短剣が閃く。


「よっしゃクリティカル!」

《奇跡の連鎖》が発動し、ソルのステータスがさらに上昇する。


「《ホーリー・アロー》!」

リリアの純白の矢が神聖な光を帯びて、ヴァルムの核を貫く。


そして最後に。

ステラが静かに両手を前へ突き出した。


「《聖炎》――!」


浄化の炎が核へ向かって一直線に走る。

光と熱が暴風を押しのけ、戦場を一瞬にして包み込んだ。


核が砕け、ヴァルムの巨体がゆっくりと崩れ始める。

暴風は次第に静まり、足場が安定していく。


「……強者よ……この先に待つ者たちに……備えよ……」


光の粒子となり、ヴァルムは静かに消えていった。



ステラは静かに聖霊たちを解除する。

十体の聖霊は順番に淡い光に包まれ、粒子となってそれぞれの元へ帰っていった。


「みんな、ありがとう」

ステラの声に、自然と温かい笑顔が集まる。


「やったーーー!」

ルナは嬉しさのあまり、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「……さっきまで押されてたのに、フルサモンが来た瞬間に、空気が一変したな」

ノエルは感心したように息を吐く。


「イベントの時もそうだったが……やっぱり圧巻だ」

バルトは静かに頷き、戦場の光景を目に焼き付けるようにしていた。


「タイミングよかったよ。あそこで来るとは思わなかった」

ヒマワリがステラに話しかける。


「みんなが頑張ってくれてたから、ここだと思って」

ステラは微笑みながら答えた。


「……ちゃんと状況見てたんだね」

ヒマワリの瞳に、少しだけ尊敬の色が混じる。


「うん、ずっと見てたよ」

ステラの表情が、少しだけ和らいだ。


戦場には静寂が戻り、淡い光が残像のように揺れる。

勝利の余韻と、仲間たちの笑顔が、その場を満たしていた。


「え、レアドロップ出た!」

ソルがアイテムを手に取り、思わず叫ぶ。


「何が出た!?」

ノエルの目の色が、一瞬で変わった。


「風神の羽根……素材っぽい」

「それ、最高級の軽量素材じゃないか! くれ!」

「俺のだよ!?」

「頼む! 良いもの作るから!」


「ノエル、落ち着いて……」

リリアが苦笑しながら、二人を見守る。


「ノエルって、素材の話になると変わるよね」

ステラも思わず笑みを浮かべた。


「いつものことだよ……」

ヒマワリが呆れたように肩をすくめる。


戦闘の緊張感が嘘のように、場内には軽やかな笑い声が響いた。




ホームに戻ると、全員がそれぞれ思い思いにくつろぎ始める。


ノエルはさっそく素材の加工に取り掛かり、ソルは横で熱心に交渉を続ける。

ルナはそんなソルを応援し、元気な声を上げている。


バルトとリリアは今日の戦闘を静かに振り返り、

ティアはひっそりと次の探索先の情報収集に没頭していた。


ステラはその光景を静かに眺める。

いつもの――【星天の翼】の夜。

賑やかで、少し騒がしくて、でもどこか温かい。


次はどこへ行こう。

何が待っているのだろう。


少しだけ怖いけれど、それ以上に胸が高鳴る。


ステラはそっと微笑んだ。

次は4/28 21時投稿予定

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ