51 これが、幸せってことなのだ
「上手に振る舞えてたじゃないか」
ふかふかの大きなベッドの上で、ユナがカフカを抱きしめながら頭を撫でてくれる。
「ユナはちゃっかり王様降りててずるいのだ、私は魔族の代表を降りられないのに!」
「アーティファクトに選ばれちゃったもんは仕方ないだろ。それに、魔族が議会制で上手くいくと思ってる?」
「む……思ってない……というか誰かと喋ることから教えないとならないのだ……」
カフカは、なんとか「いらっしゃいませ」を笑顔で言えるようになった元ドラゴン、オズワルドの姿を思い出した。
ちなみにオズワルドとロザリンドにかけた人型になる魔法は、カフカが解こうと思えばいつでも解ける。でも、真剣に“弱い魔族”として生きる決意を固めた兄妹に水をさすのもしのびないから、そのままにした。
それに、カフカは知っている。ドラゴンの腕は、誰かを抱きしめるのには向いてないのだ。
人型の手にしか、できないことがある。
カフカは魔力量が大賢者並に多い。だから、同時にあちこちで魔法を展開していても特に困ることもなかった。
だってそもそも、心を読む魔法も、探知魔法も、認識阻害の魔法も……あと“変身魔法”も、とるにたらない些細な魔法だから。
魔力の消費量も大したことないのだ。
「——でも、私が困った時は、“私の魔法”が何とかしてくれるのだろう?」
「勿論。俺は大賢者だぜ。あんたのためなら全部、何とかしてやる」
ユナはそう、いつものように軽く言った。それから、眩しそうに目を細めて笑って、カフカにキスをする。
***
ソフィア連邦の外れの、とある王国の跡地に、小さな可愛い赤い屋根のおうちがある。
家の周りには、金色の小麦畑が広がっていた。その向こうに青々とした山脈が見える。
爽やかな風が、小麦をサラサラと鳴らした。
——そこには、幸せな結婚をした『異国のお姫様』と『大賢者』が住んでいる。
***
大賢者の収納魔法の片隅で、時に忘れ去られたアーティファクトが山積みになっている。
その中に、『未来視の鏡』と呼ばれた鏡があった。
『未来視の鏡』
それは、この世界の辿る、最も可能性の高い未来を映し出すアーティファクト。
しかし映像は断片的で、未来に至る過程は一切映さない。
手のひらサイズの『未来視の鏡』が、虹色に反射して光る。
次の瞬間、未来を映した。
それは、薄紫の美しい空と、その下の石畳の街角。色とりどりの屋台が軒を連ねる、賑やかな広場。
白金の長い髪が揺れる。
尖った耳の魔族の彼女は、パンパンの紙袋を持って、こちらを振り向いた。
彼女は、手を差し伸べる。
「ユナ!」
彼女は、弾けるような笑顔で手を引いて駆け出した。
そして、『異国のお姫様』と『大賢者』は死ぬまで幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
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それではまた、次の作品でお会いできますように――




