2-28 毒蛇To突入
「……マジでそれで行くんですか?」
「多分これが一番だよ。他に居ても邪魔なだけだしね。」
「まあ、正直それで僕も楽なんですけど、他の所とかから反対とか出ていないんですか?」
話し合いが開始して数分、その通常では無茶としか言いようのない作戦に、ライトが悩んでいた。
内容自体は良いのだが、反発とか無いのかと。
「大丈夫、全部黙らせたから」
「流石、ソヨ様。暴君だ」
「黙らせたって……まあ良いです。で、本当に"四人"だけで良いんですよね?」
「うん」
ソヨが語ったのは、何とかラビル守るから、その内に少数精鋭でU.U.U.倒してきて、という作戦である。
四人というのは、ライト、ミスティアナ、フーリン、リルカのことだ。
「他は多分実力不足、的にしかならないから。うちにはSランク居ないからね、本当に困るよ。お蔭で引退したフーちゃんを呼んで来なくちゃいけなくなったからさ」
「フーリンさんって昔冒険者だったんですか?」
「ええ、残念ながらもそこの神獣の後輩として、Uランク冒険者として活動していましたよ」
「へぇ、なら安心ですね」
流しているが、今現在ラビルには元Uランクが二人居るということなり、それだけで過剰戦力なのだ。
不死身の魔物の軍勢は既に、常人の目でも鮮明に見える程に近付いて来ていた。
「さ、ライくん、ミスティアナちゃん、フーちゃん、リルカちゃん。私はもしもの為に、此処離れられないから、頼んだよ」
「軽いですね。ですが、承りました。行きますよ、ミスティアナさん」
「マスターの仰せのままに」
「全く、私は唯の隠居だというのに」
「ライト、約束、忘れないでね」
「うっ、分かってますよ」
少し締まりがないが、如何やら出撃らしい。
ライトは、虚空へと手を伸ばす。
(ヨル、行きますよ)
<了解じゃ――>
《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明-会心》
―――神喰螺旋蛇杖
―――八彩王法:王の外套・黒虚
現れた蛇杖を握りしめて王気を流し、溢れさせる。
その溢れ出した黒き王気が蠢き、ライトを包む漆黒の外套と化す。
その明らかな戦闘形態への変化に、周囲の空気が一気に引き締まる。
(あの魔物達には、新しい術の実験台になってもらうとしますか)
<ライト待て、その前に言っておくこと、というより良い情報がある>
(何ですか?)
<お主、黒い指輪、覚えておるか?>
(ああ、あのダンジョンの報酬の奴ですか?彩王紋が刻まれた)
<そうじゃ、アレ付けると王気の精神的消耗だったり、他にも色々と効果があるから付けておくとよいぞ付けるなら左手がお勧めじゃ>
(了解です)
ヨルの勧め通りに左手の手袋を外し、久しぶりにしっかりと婚約紋を見る。
その後に虚空から取り出した黒い指輪を人差し指に嵌める。そして再度手袋を着け直す。
場に居た全員が、もう戦いに出ると思っていたので、一連の行動は全てしっかり見られていた。
特に反応したのは、家と年頃的に婚約等に敏感なイレーヌだった。
「ライトさん今の!」
「何ですかイレーヌさん、今から出るのに」
「でも、今のっ!婚約紋よねっ!ど、どういうことなの?」
「どういうこと、とは?僕に婚約者居たら駄目なんですか、文句でもあるんですか」
「そういうことじゃなくてっ!ライトさん今までそんな影なかったじゃない!それに冒険者だし」
近付いて来て、かなりの剣幕で問うてくるイレーヌに、ライトは困る。
ヨルについては、色々と説明が面倒な上に問題を生む可能性が高いからだ。
そこで取った行動は、
「う~ん、戦い終わった後で――皆さん行きますよ」
「ちょ、ライトさんっ!?」
逃亡である。
城壁から一気に跳びあがり、迫る魔物の軍勢の方へと駆けていく。
突然の行動ながらも、付いて来る者も実力者なだけに問題は起こらず。
ミスティアナ、フーリン、リルカも続けて城壁から降りてくる。
「ライトさーん!!後で詳しく聞かせてもらうからねー!!」
「くっ、あの場でやったのはやっぱ失敗でしたか」
「マスター、今は戦いに集中するべきかと」
「そうですよライト君。後で話は詳しく聞きますから」
「私も、聞く」
「うわぁーー!!もう知りませんっ!さっさと片付けますよ!」
もうこの話題を続けたくなくなったライトは、投げやりになり全てを後回しにした。
それが後の自分を苦しめると知っていながら。
目の前の障害を殲滅すると序でにストレス発散の為、杖に魔力を流しながら強くイメージする。
前とは違い、攻撃に重きを置いた新たな術を。
―――死毒・八岐大蛇ッ!!
杖から溢れ出した毒々しい黒が肥大し形成し、八つの頭を持つ大蛇と化す。
前と違うのは、鱗が紫がかっているのと周囲の地面が紫色に変色しているところだ。
三人ともまとめて尻尾の結界の上に転移させる。
「死に晒せっ!!」
その直球な言葉と共に、八岐大蛇の八つの口が開く。
そこから、毒々しい濃霧が魔物達へと放たれる。
被弾した魔物達が、表面から溶けていく。中々グロい。
「成功です」
「流石、マスターです」
「凄いエグい攻撃しますね、ちょっとだけ引きました」
「でも集団戦に於いては、効果覿面。やっぱりこれはヤるしかない」
「溶解させれば、不死性は発揮されないみたいですね。助かりましたよ」
ライトの術、攻撃を手放しに称賛する者、少し引く者、そして何故か熱い視線を送って来る者。
バラバラではあるが、反応や魔物達の様子を見るに術は確実に成功であった。
死毒・八岐大蛇は、前回の序章の待ちのスタイルとは真逆のガチガチ攻撃特化の術だ。
前回同様にスキル-虚の理とリンクさせた、混合蛇王蛇法なのだが今回は唯の魔力ではなく、虚属性の中で二番目に殺傷能力高い系統の毒魔法をメインにしている。
故にこんなTHE毒蛇、みたいな感じになっているのだ。
因みにウロボロンシステムは同様に搭載。
毒魔法をメインにしている為、序章の時のような戦いは出来ず毒系統の術しか八岐大蛇からは使えない。
別に普通に蛇杖から使う分には問題ない。
解説中も八岐大蛇は、毒霧を吐き続けている。
「ライト君、もう良いのでは?あんなに居た魔物の軍勢は、もう全て溶けて無くなってしまいましたし」
「……そうですね。魔力も十分に増えましたし、そろそろ術を解きますか」
言葉と共に、ドロリと八岐大蛇の原形が崩れ、地面に広がっていく。
ライトは、ミスティアナを見た。
「ミスティアナさん、ディグレストーンで八岐大蛇の残留魔力を奪って下さい」
「了解いたしました――《魔力剥奪》」
剝奪槍の穂先が鈍く輝き、周囲に紫色の泥のような魔力を奪い吸収していく。
広がっていっていたそれらを集める様なその光景は、少しだけ現像的だった。
「その槍、オークションで落札した神器ですか。上手く扱われている様で何よりです」
「武器は使ってこそ、ですから。そういえば、リルカさんの得物は?」
「短剣両手持ち。だけど最近片方が壊れて一本になった」
「では良い物があります。この戦いが終わるまで貸し出します」
虚空からガラスのような刃を持つ短剣を渡す。
それ、魂喰剣を受け取った瞬間、リルカの目が見開かれる。
「これは、凄い。手に馴染むし、軽い。これ、何?」
「神器『魂喰剣 ソウルイーター』です。扱い切れるかは、リルカさん次第です」
「神器ッ!?これは、ありがたい。私、頑張る。ライト、ありがと」
「……まぁ、頑張ってください」
「うん」
向けられる視線に、微妙に疲れながらも周囲に気を配る。
だが、そんなものする必要が無い。何故なら全ての魔物は、既に死んでいるからだ。
ミスティアナが作業を開始して数分が経った。
「マスター、終わりました」
「そうで……何か凄く禍々しいですね」
「触っただけで死にそうですよ」
「ん、恐い」
白かった剥奪槍が、禍々しく黒紫色に染まり、暗光を放っていた。
その危なそうな見た目に全員が言葉を漏らす。
しかしながら、そんなものを気にしている時間はない。
ライトは切り替えた。
「では、ドライへ入っていきましょう」
「はい、マスター」
「そうですね、何時に二陣が来ても可笑しくはありませんし」
全身に魔力を巡らして駆け、四人はドライの中へと飛び込んでいく。
◆◇◆
未踏破ダンジョン『大迷宮』ドライ 3層。
広がるのは、生気の無い枯れた木々とくすんだ草原。魔物は一匹も居ない。
その良くない雰囲気が漂う空間に、ライト達は押し黙っていた。
「"変わらず"ですか。これは、U.U.U.の影響なんでしょうかね?」
空気を変える為に、出来るだけ明るい口調でライトは状況の確認を行う。
既に3層なのだが、1・2層も同じ状況だったのだ。
「魔物が居ないのはU.U.U.のせいと考えられますが、このダンジョンの環境の変化は異常です。別の何かが作用している。というのが、私の見解ですね」
「私も同意。環境の変化には、何かの手が加えられてそう、自然的な変化じゃない」
「ダンジョンという環境を加味すれば、ありえなくはないかと思いますが……マスター、情報不足が否めません」
「ですよね……」
意見を聞き、大方自分の考えと変わっていないのを改めて知ってから、歩くペースを上げる。
答えは、見なければ分からないから。
未踏破ダンジョン『大迷宮』ドライ 4層。
「こ、れは……瘴気ですね。然も大量過ぎます」
「自然的に生み出された量じゃ明らかにありません。普通の者なら、意識を簡単に失ってしまいそうでしょう」
「感覚が鈍る。これは厄介」
紫色の霧が空間に充満し、遠くを見ることが出来ない。
大雑把に言うと嫌な気配、不快感を与えるその霧の正体は、全てが瘴気であり、長時間の活動は危険に思えた。
前層と同様に、生き物の気配は一切しない。
「一気に抜けます。流石にこれは危険すぎるので」
「分かりました。マスター」
「了解ですよ、ライト君」
「分かった、急ぐ」
―――纏い駆ける風蛇
全員の身体が風を纏い、突き進んでいく。
纏う風が瘴気を吹き飛ばし、不快感を軽減する。
走ること数分、5層へと行く階段に着く。
「やはり下から溢れて来てますね」
微弱だが、階段から風と共に瘴気が流されてきていた。
発生源は下であることは確か。
「うだうだしてても仕方ありませんか。行きますよ皆さん、気を深く引き締めて」
「はい、マスター」
「分かりましたライト君」
「ん、頑張る!」
静かに、一行は階段を下りた。
◆投稿
次の投稿は12/22(木)です。
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◆技解説
蛇王蛇法技録
死毒・八岐大蛇 八岐大蛇を使用者の虚属性魔力・毒を増幅圧縮物質化して形成する 八岐大蛇の周囲に猛毒の領域が出来る 遠距離攻撃の起点として利用出来るが毒系統の術しか使用できない 毒系統の術の効果超上昇
◆蛇足
語り部「さて、プロローグの術は回収しましたとさ」
蛇の王「タイトルの回収は何時じゃ?」
語り部「多分次の章だな。予定ではクソ強力な術になるぞ」
蛇の王「ふ~むどれくらいじゃ?」
語り部「蛇王なんていちk――あがっ!?」
蛇の王「相変わらず減らず口じゃな」




