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1-17 卑怯上等とカプセルトイ



 割れた仮面からドロリとした白金色の液体が流れ出て、人型のナニカに集まっていく。



「ここからが本番みたいですね……」

<"神創金属(デウスメタル)"か、あの流体金属は、物理魔法両方に完全な耐性を持つ。まあ蛇王蛇法なら耐性を抜けるが……ライト、大丈夫か?>

「何を今更言ってるんですか……勝ちますよ」



 人型のナニカ――機械めいた骸骨のようなそれに集まり切った、液体が形を成す。

 白金の全身鎧に、三対六個の同じく白金の翼、そして真っ黒な天使の輪と称(しょう)すべき物が頭上に浮かんでいる。


 それを見て、歪な焦燥(しょうそう)の笑みを浮かべる。

 実はライト、口では強気だが冷や汗が止まらない。

 何故なら、



(不味いですねぇ、大型と戦うことしか考えて無かったので、あのサイズはキツイ……ん?いや、そっちもまだ動くんですか)



 大型への対策しかしていないからである。

 八岐大蛇は、お役御免かと思ったところで、白金の騎士の抜け殻が脈動し始めた。

 それらは、先程のように大砲を作るだけでなく、剣、槍、斧、鎚――様々な巨大な武器となった。



「八岐大蛇を上からの攻撃の盾にしながら、アイツと戦うって感じになりそう……全く、骨が折れますよ」



―――疑似・剣の理:雲耀(ウンヨウ)・(・)武御雷(タケミカヅチ)・(・)虚偽(フェイクス)



 刹那迫る神速の刃が、ライトの首を――



「――あぐっ――ぶないっ!」


 

 断ち切らない。毎度の如く、超反射神経で間に杖を挟み込んで直撃を防ぐ。が、その勢いに押し負けて吹き飛ばされた。

 

 着地して間もなく、再び神速の刃が迫り、脈動する大砲に煌めきが灯る。

 


「不味いっ」


《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》


―――上級時空魔法:リムーブワープ



 ライトが掻き消えると共に、先程まで居た場所に閃光と爆発が巻き起こる。

 肝心のライトが何処にいるのかと言うと、



「吹き飛ばされて、八岐大蛇から離されると上を防げなくなる……動かされなきゃいい話なんですけど、それが難しいんですよねぇ」



 八岐大蛇の尻尾の上だ。難しいと言いながらも、そこにさっきとは全く別の余裕の笑みが浮かぶ。



―――惑(まど)わし潜(ひそ)む幻蛇(げんだ)



 幻の蛇が、巨大な八岐大蛇をライトごと隠し消す。白金の騎士は、見失ったライトを探している様子だ。



「だから……今の内に、これ以上手も出させず叩き潰すっ!!」


《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明-会心》


―――虚の理:≪愚者に許されし繰延法《ポストポーン・コンペセイト》≫



 ライトの左の瞳、その結膜(白目)と角膜(黒目)の色彩が反転する。

 それと同時にライトは、杖を白金の騎士へと向け、意識を集中した。八岐大蛇の十六の瞳に灯(あかり)が宿る。



―――封(ふう)じ縛(しば)る牢蛇(ろうだ)・十重(デクテット)

―――穿(うが)ち抉(えぐ)る雷蛇(らいだ)・八連

―――断(た)ち別(わか)つ風蛇(ふうだ)・八連

―――増(ふ)え爆(は)ぜる炎蛇(えんだ)・八連

―――包(つつ)み狂(くる)わす水蛇(すいだ)・八連

―――止(と)め閉(と)ざす氷蛇(ひょうだ)・八連

―――壊(こわ)し散(ち)らす滅蛇(めつだ)・八連

―――終(お)わり絶(た)える冥蛇(めいだ)・八連



 八つの口から放たれる蛇を模した天変地異が、無防備な白金の騎士を容赦なく襲う。

 正に卑怯上等と言わんばかりの不意打ち連打である。

 ここで重要なのは、ライトがド畜生(ちくしょう)なことではなく、蛇王蛇法を使っているのにライトが、蛇王蛇法の発動の要である文章を口に出していないことだ。


 まあ、皆様は私がこうして文章化しなければ、分からないのですが。



<お主、もうちょっと矜持というか、風情というものを考えたらどうかのう?>

「ハァ、真面戦ったら勝てないって言ったのヨルじゃないですか、何言ってるんですか本当に」

<むむ、そうであったな。でものう……>



 困惑したような様子で念話で語り掛けてくるヨルに、ライトは心底呆れた言葉を返す。

 ライトは、ヨルの言葉通りに邪道で攻略しているたけだ。間違ってなどいないし、そもそも戦いに於いて正否なんて存在しない。

 だが、ヨルの気持ちも理解出来なくはないだろう。皆様も思っただろう、形態変化から攻略早過ぎない?と。

 しかしながら、本作は、全てとは言わないが……今回が特別かもしれないが、主題的にこういう展開も十分にあることは理解しておいてほしい。



「さて、どうかなっと……良い感じにバラバラに――げっ、再生し始めてます」



 攻撃が終わりに、透過した視界で白金の騎士を見る。

 そこには、機械めいた骸骨とそれに徐々に集まっていく白金色の液体があった。

 眉をひそめて、不快を惜しげもなく顔に出すライト。



「核は……頭蓋の中、ぶっ壊しにいきます、かっ!!」


 拳ほどの大きさの核をその眼で捉え、尻尾から全力で跳躍して杖を構え、内の力を外へと溢れさせる。



《黒剛彩王-蛇王蛇法-杖術:天級-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明-会心》


―――天級杖術・変異:天喰(テンク)ラウ禍(マガ)ツ蛇(ヘビ)ノ絶牙(ゼツガ)



 溢れ出た濃密な黒がライトの全身を包み込み、巨大な蛇と化す。黒い蛇は大きく顎を開き、急速で骸骨へと落下し――嚙み砕く。

 天井のパイプ群の脈動と白金色の液体の流動が停止する。黒い蛇は風船が弾けるように霧散し、杖で核らしき緋色の球体を貫いているライトのみがそこに残った。



「ふぅ……」



 ライトは、核から杖を抜き、息を整える。戦闘の高揚が徐々に冷めていく。

 空間に無機質な声が響く。



『挑戦者による試練の突破を確認』


『今代の『黒剛の王(シュヴァルツ)』ライト・ミドガルズ、貴方様の力を認め、正統なる王の証と細(ささ)やかな宝物(ほうもつ)を捧げます』


『貴方様の今後に幸と栄光、そして神々と世界の祝福があらんことを』



 声が終わると、目の前に白い魔法陣が現れた。その右隣に一つの宝箱。左隣には、中に色とりどりの球体が入った手前に回転するであろう機構の付いた箱、皆様の世界では所謂――ガチャガチャと言われる物があった。



「あれは帰還用の魔法陣、あっちは討伐報酬の宝箱、じゃああれは……何なんでしょう?」

<ガチャガチャ……正式名称カプセルトイじゃな。>

「あれの名前何でしょうけど、あのカプセルトイとやらは、一体何の為に現れたんですか?」

<そんなこと我には分からん……と、言いたいところだが、恐らくアレも報酬の一つだろう>

「分かるんですか?」

<ああ、我も使ったことがあるからな>



 ヨルと念話しながらライトは、先ず宝箱の方に向かい、それを開ける。

 中に在ったのは二つの物体。

 片方は、彩王紋の刻まれた真っ黒な指輪。もう片方は、紫色の球体、ぐるっと一周するように線が入っているように見えた。

 ライトは、それらを手に取る。



「これが正統なる王の証の指輪だとして、こっちは何ですか?心なしかあっちに入っている球体に似ている気がしますけど」

<それは、スキルカプセルじゃな。お主の感覚通り、あっちの機械の中のと分類としては同じものじゃ>

「スキル?これがスキルなんですか?」

<そうじゃ、開けると自動的に取得されるぞ。ダンジョンなどの報酬で稀に手に入るものでのう、我も使ったことがある。早速開けてみよ>

「どうやってですか?」



 どうすれば良いのか分からず掌で球体を転がすライト。



<その境目の線を人差し指と親指で挟むように力を籠めてぐっと押すのじゃ>

「ぐっとですかっ――うにゃ!?消えましたよ!?ヨルッ!?」



 ヨルの指示通りに球体を押すと、瞬時に球体が消失してしまう。球体の消失に驚くライト脳内に、ヨルのケタケタと笑う声が響く。



<くくっ、開けると自動的に取得されると言ったではないか。大丈夫じゃよ、お主の内に吸収されただけじゃ>

「そうですか、良かった……スキルの確認しますか?」

<いや、あのカプセルトイでもスキルが手に入る筈だ。そっちも取得してから一気に確認した方が良いだろう>

「分かりました。じゃあそうします」」



 取り敢えずライトは、指輪を巳蚓魑(ミヅチ)の中に突っ込み、カプセルトイの方へと向かう。

 正確に言えば、中に入っているのは玩具(トイ)ではなく才能(スキル)なので、この場合カプセルトイという名称は間違っている。

 だが、そんな細かいことは誰も気にしないだろう。少なくともライトとヨルは気にしていない。



「う~と、これを回せばいいですかね?」

<そうじゃな。その回転式のレバーを回せばいい>

「了解です」



 ゆっくりとレバーを回すと、ガチャリと小気味いい音が鳴り、一つの球体が排出された。

 それを手に取り、ライトは少し驚く。



「"透明"なんですけど、ヨル。ガラスみたいに透明なんですけど、ヨル……あれ?あの機械消えてるんですけど」

<一度使用されると勝手に消えるのじゃ……あとそのカプセルは我も見たことが無いな。まあでも問題ないじゃろ>

「……分かりました」



 少し適当なヨルの返答に一瞥(いちべつ)の不安を抱えながらも、ライトは球体に力を籠める。

 先程と同じように球体は消失した。



「さて、確認っと」



―――明(あ)かし晒(さら)す探蛇(たんだ)




■=====================■

 スキル-悪逆非道(デッドリーロード)

 ラン―――


「――これは――あぐっ、何っがっ」



 突如、途轍もない疲労がライトへと襲いかかり、それと同時に全身の力が抜け、後ろ向きに倒れる。

 


「――お主、この六日間休みなく活動していたからな。それにさっき≪愚者に許されし繰延法≫を使ったじゃろ?それの清算が行われたのじゃよ」

「う、ヨル?……僕、別に動いてませんけど?五日間は寝てたじゃないですか……」



 これまたいつの間にか人型になったヨルが倒れたライトの前にしゃがみ込み、話しかけてきた。

 ライトは、ヨルの言葉に反応して口を開くが、ヨルは分かっていないという風に首を振る。



「メモリーダイブは、意識、つまりは精神を記憶の中に送る魔法じゃ。五日の間、精神的疲労が溜まっていたのじゃよ。その前にも半日ものを考え、戦闘前には新たな術も作った。戦闘も合わせれば、相当な疲労が溜まっていて当然だ」

「そういう、ことですかぁ……駄目です……もう、意識が……」

「もういいぞ、ゆっくり眠れ、帰りは我が何とかしておくからのう」

「ありがとう…ございます…………」



 寝息がたち始めた。ライトは、睡眠の海へと落ちて行ったようだ。

 ヨルは、寝ているライトの頭を軽く撫で、



「全く、良く頑張ったのう……」



 そう、小さく呟いた。



◆投稿

次の投稿は、9/10(土)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!

してくださると作者は嬉しすぎて、涙が滝のように溢れます。



□■□■□



◆技解説

蛇王蛇法技録

封(ふう)じ縛(しば)る牢蛇(ろうだ) 対象を半透明の鎖で拘束し重ねた数に応じて一定の能力を封じたり減衰させたりする

包(つつ)み狂(くる)わす水蛇(すいだ) 水で包んだ対象の思考・精神状態を悪化させる 包まれている時間が長い程効果上昇

止(と)め閉(と)ざす氷蛇(ひょうだ) 対象と対象の周囲に存在する水分を使用して凍結させる 水分が無い場合は広範囲に渡って強制的に水分を集める 水分量に応じて強度変化

壊(こわ)し散(ち)らす滅蛇(めつだ) 放たれた球体に当たった対象を物理法則を無視して破裂させる 但し生物には効果なし 生物が閉じ込められた物体の場合効果あり


スキル技録

疑似・剣の理:雲耀(ウンヨウ)・(・)武御雷(タケミカヅチ)・(・)虚偽(フェイクス) 自身を加速させ一撃で対象を切断する技 模造品の為本来の効果はあまり発動していない 即死効果は確立発動


魔法技録

上級時空魔法:リムーブワープ 自身の記憶の中に在る場所に即座に転移する 転移距離に応じて消費魔力増減


虚の理:≪愚者に許されし繰延法《ポストポーン・コンペセイト》≫ 指定した時間の間あらゆる魔法や技の発動過程を無視してそれらを使用することが出来るようにする 時間が終了すると消費した現力・体力・精神的消耗全てが清算され使用者に課される 使用終了した時点から指定した時間と同じ時間この魔法は使用できなくなる


◆蛇足

語り部「ガチャガチャってさ、何か偶に見ると無性にやりたくならない?」

蛇の王「いや、全然じゃ」

語り部「そうか……作者はそうらしいぞ、まあ結局はどうすんだコレってなって捨てることも多いが」

蛇の王「一時の興味だけでこうどうしてはいけんのじゃよ」

語り部「蛇王は、それだけで行動してそうだけどな。言動が」

蛇の王「何を?我には深い考えがあってだな。言動の一つ一つに無意味なことは無いのじゃ」

語り部(本当にか?でも蛇王、自分の欲望に忠実じゃん。欲望に任せた行動結構あるよね?アレに考えとか意味ありそうに思えないけど?欲一直線じゃん)「ああ、そだねー」

蛇の王「何じゃ?その反応は?」

語り部「いや、何にも」


こういう時の空気を読む能力は高い語り部であった。



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