1-13 Cランクパーティー〈アニマリー〉
「良かった、魔石だけは無事ですね」
嵐が止んだ後、ライトは、ロックゴーレム(だった平地)へと下り、魔石を回収した。
「さて、彼女らの所に戻りますか」
魔力を全身に巡らし、悠々と助けた少女達の下に駆け戻る。
戻るまでに掛かった時間は、10秒程。
「よっと、怪我はありませんでしたか?」
「いえ、大丈夫よ。それよりも、助けてくれてありがとう」
「感謝する」
「ミケも感謝」
「ありがとうございますっ!」
感謝の言葉がバラバラな少女達に、思わず笑みが浮かぶライト。
すると、一番最初に感謝を口にした四人のリーダーらしき、狼の少女が一歩前へ出て、再度口を開く。
「アタシは、イレーヌ。このCランクパーティー〈アニマリー〉のリーダー、改めて感謝するわ。そっちの三人がうちのメンバー、兎のがルト、猫がミケ、羊のフォークよ」
「よろしくお願いする」
「ん、よろしく」
「よろしくです!」
「僕はライト・ミドガルズ、しがない旅の冒険者、よろしくお願いします。〈アニマリー〉の皆さん」
互いに簡易的に自己紹介を済ませる。その最中、ライトは密かに彼女らを観察していた。
イレーヌは、赤色の髪のショート、剣と盾を装備している所から騎士等の剣士、あと少し気が強そう。言動など全体的にリーダー感が溢れている。
ルトは、空色の髪のセミロング、短剣を装備している所から盗賊等の遊撃、常に落ち着いた雰囲気だ。恐らく、このパーティーの参謀役、頭脳だろう。
ミケは、ライトブラウンの髪のボブ、弓を装備している所から狩人等の弓士、口数少なくクールな感じ。多分空気は読めるタイプ。
フォークは、ライトグレーの髪の……癖が強いから判断しにくいがショート、杖を装備している所から間違いなく魔法使い、元気がいっぱいだ。ムードメーカーだと思う。
言動、体の動きや癖から大体の性格などを推測し終えた。全くもって、呆れた観察眼と推測力である。
まあこれは、自然と育ってしまった能力なのだが……。
ピシッとした感じだったイレーヌを含め、〈アニマリー〉全員の身体から力が抜けて行き、地面へとへたり込む。
如何やら、緊張が解けて、身体の力が抜けたようだ。
「いや、本当に助かったわ……」
「正直に言って、ライトさんが居なかったら私達、死んでたしね」
「ん、危なかった」
「だから戦う前に全力で逃げた方が良いって言ったじゃないですかぁ」
実にタイミング良くライトが駆け付けたお陰で、助かったが実際死んでいても可笑しくなかったのだ。
その安心感が、少女達の身体の力を抜いていく。
「でも、そろそろ良いかなぁって思ったのよ~」
「全く、あの時は思わず乗ってしまったけど、逃げるべきだったよね」
「やっぱりコツコツやっていくしかないわね~」
「でも皆さん、動きは良かったですよ?」
「ん?ミケ達のこと見てたの?」
「そりゃあ、見て無いと助けに来たりしませんし」
緩い雰囲気の中で行われる反省にライトが口を挟む。
遠目に見た感じではあるが、相手が悪かっただけで十分に彼女らは強かった。冒険者の先輩として、ライトは少し彼女らにアドバイスをすることにしたのである。
「皆さんの戦い方は、前衛の二人が隙を意図的に作り、後衛がその隙を狙う形が基本ですよね?」
「そうですね、私達はそれでやって来てます!」
「それは、悪くありません。寧ろその戦い方はBランクでも通用する程に、良い連携でした」
「でも、ロックゴーレムは駄目だった」
「当然です、ロックゴーレムは皆さんの戦い方が通用しない、というよりも向いてない魔物ですから。どんな魔物にも通用する戦い方、そんなものは存在しませからね」
ライトのその言葉を聞くと同時に、少女達の眉が下がる。
「じゃあ、アタシ達はこのままじゃ駄目なの?」
「上を目指すなら、申し訳ありませんが駄目ですね。皆さんは、自分達が作り出した基本に囚われ過ぎなんですよ」
「基本に囚われている?」
「僕が先程言った、皆さんの基本の戦い方、それしか多分皆さんしたこと無いでしょ?」
「言われてみれば……確かにですね!」
少女達は、ライトの言葉にハッとした表情になった。
ニヤりとライトの口が歪む。
「どんな魔物にも通用する戦い方は無い。魔物にはそれぞれ合った、有効な戦い方というものが存在します、大体はですけど。高ランクの冒険者は、それをしっかり理解して、色々な戦い方をするんですよ」
「つまり……」
「皆さんが更なる高みに上るには、個々の力を上げるのも重要ですが、複数の戦い方を覚え、臨機応変に切り替えられるようにならなくてはなりません」
「そういうことなのね……」
言葉を受け、思考する少女達をライトは微笑ましそうに眺める。
「それは、簡単じゃありません。今までの染み付いた基本がありますからね、でも皆さんなら出来ると思いますよ?それくらいの才能を皆さんに僕は感じましたから」
「……ありがとう、ライトさん」
「良い顔です……これも何かの縁という奴ですよ。お節介を焼いてしまいすいませんね」
「いや、今後の私達の為になること言ってくれて、感謝する。何だか、感謝してばっかりだね」
先程とは打って変わって、活力の漲る顔をしている少女達に、輝かしさを感じ、ライトは少しいい気分になった。
「僕も暫くは、ラビルで活動することにしているので、また会うことがあるかもしれませんね」
「……その時は、また指導をお願いしてもいいかしら……」
「あまり得意ではないのですが……まあ頼まれたからにはするとしましょうか……ああそうだ」
「ん?」
ライトは、イレーヌに言葉を返し、離れようとした所で何かを思い出し、ミケの方を向く。
見られたミケは、特に心当たりを感じず首を傾げる。
するとライトは、手に"黒い矢"を取り出す。
「確かミケさん、矢を切らしてませんでしたっけ」
「ん、そう」
「じゃあこれ上げますよ、黒いですけどしっかりしているので、このまま探索するにしても戻るにしても攻撃手が一人減るのは痛いでしょうし」
「ありがと、ライト」
ミケに黒い矢を複数本を手渡し、彼女から感謝の言葉を貰うと同時に、ライトは彼女らに背を向ける。
「では、また何処かで、幸運を祈っています――」
「速いっ!?」
駆けて数秒で豆粒ほどのサイズに見える、正に疾風の如き速さで、ライトは少女達から離れた。
「不思議だけど良い人でしたね!」
「それに、とても強い、ミケ達じゃ束になっても、無理」
「それどころか、うちの騎士団全員でかかっても到底勝てないように、私の眼には映ったね」
「ルトの眼がそう言ってるなら、多分それくらいか、それ以上なことは確定しているってことよね?あの人、底が見えなさすぎじゃない?」
ライトが居た時とは、また少しだけ雰囲気が変わって話始める少女達。
「ランク……S、ですかね?」
「恐らくだけどね。尤も、そんなランクの人間が、このアインに居る理由が分からないけど」
「観光じゃない?口ぶりから最近来たみたいだし」
「……この矢、何か変」
ミケが、ライトから貰った矢の一つを手に取り、注意深く眺める。
異常な矢の軽さと表面に刻まれた魔法陣を見ているのだ。
そんなミケの呟きを聞き、他の三人が近付いてくる。
「何が変なのよ」
「軽すぎ、それにミケの鑑定が効かない」
「ミケの鑑定は超級ですよ?それが効かないって、相当高位の物じゃないですか?」
「……ミケ、済まないけどそれ、使わないで取っておいてくれるかい?」
「ん、分かった。仕方ないけど、戻るまでサポートに回る」
「助かるよ」
そう話し合う、彼女らの装備には、遠吠えをする狼の紋様が刻まれていた。
◆◇◆
未踏破ダンジョン『大迷宮』アイン 15層。
少女達と別れ、目的の人形系統の魔物を討伐することも出来たライトは、他の魔物は全無視で、さっさとアインの最下層に来た。
今は、開け放たれている最後の広間へと繋がる扉の前に立っている。
此処で、ダンジョン最下層の階層主について解説しよう。
最下層の階層主は、他の階層主と幾つか違う点があるのだ。
先ず、強さや種類が一定ではない、そのダンジョンに出る最高ランクの魔物が出てくるが、他の階層主と違い毎回出てくる魔物が変わる。
無限にある種類がある訳では無く、限界はあるが連続して同じ魔物が出ることは無い。
稀に複数体出てくることもあったりする。
そして、討伐と同時に体が消失せず、ダンジョン内の普通の魔物と同様に手が加えられると消失しなくなり、放置すると他の階層主同様に消失してしまう。
また、宝箱も現れるが、こちらは他の階層主の時と大して法則は変わらない。
「此処で階層主を倒したら、今日は終了です。張り切って行きますよ、ヨル」
<分かったのじゃ>
その言葉を口にした後に、ライトは広間に足を踏み入れた。
扉が音を立てて閉まる。
空間中央に白い魔法陣が形成され、
「あれは正常なっ――熱っ!?」
上層の者とは違い、極彩色の光を放ち、それと同時にライトは右手に異常な熱さを感じた。
手袋を外し、見てみると黒き彩王が暗き光を放っている。
突如、空間に無機質な声が響く。
『『黒剛の王』の彩王紋を確認、今代の試練記録を検索』
『該当無し、これより今代の『黒剛の王』ライト・ミドガルズの"神の試練"を行います』
「――何がっ!?」
<――むっ?>
刹那、魔法陣が漆黒に染まり、暗き光が空間を包む。
◆投稿
次の投稿は、8/31(水)です。
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◆蛇足
語り部「面白くなりそうですねぇ!」
蛇の王「気味が悪いのう」
語り部「酷くない?ちょっとテンション上げただけで気持ちが悪いってさ」
蛇の王「気持ちが悪いのではない、気味が悪いのじゃ」
語り部「屁理屈をこねるな!大して意味変わんねぇよ」
蛇の王「でじゃ、神の試練とは如何なものであろうな?」
語り部「相変わらず急すぎる・・まあ、何か倒すんじゃない?この作品一応バトルファンタジーだし」
蛇の王「メタいのじゃ、だがそうだろうな」
語り部「と、言うことで、次回34.5話『怒髪天を衝く蛇王』よろしくなっ!」
蛇の王(お主も大概急だと思うぞ、我)
語り部「そう言えばこのコーナー名前付いたらしいぞ」
蛇の王「なぬっ!?」
語り部「蛇足コーナーだとさ、蛇に関連してて良かったな~」




