エピローグ
「うん。
もう、分かったよね。
彼女の子供が誰なのか。
彼女を見捨てたボクを、キミは軽蔑する?
うん。
そうだよね……。
あぁ、ポエット、彼の服が出来上がったんだね。
うん、よく出来てる。
さぁ、キミはこの服に着替えて。
着替えてどうするのかって?
決まっているさ。
彼女のところへいくんだ。
彼女は町ごと亡くなったんだろう、って?
ふふん、馬鹿を言っちゃぁいけないよ。
彼女も、彼女の旦那さんも、その仲間達も。
超一流の魔法学科学研究者なんだよ?
キミには話したよね。
ボクが訪れた町のことを。
本の町に竜の町、鳥族の町に亀の町、もふもふの町に植物の町、それに、夜の街も。
最後の町から羅針盤に強制転移させられる時、ボクは彼女にボクの荷物すべてを預けたんだ。
竜の町の防御シールドリング。
植物の町の大樹の木の実と歌声。
夜の街の結界の霊札。
これらを組み合わせたら、どうなると思う?
わからないかな?
でもわからなくてもいいんだ。
ほら、ボクの羅針盤。
最後の町を示すのはこのライン。
ね?
綺麗な緑でしょう。
ボクは彼女の子供が無事に育つように、安全な世界に渡ったんだ。
中でも、あの世界に良く似た世界を選んだつもりだよ。
そしてボクが持っていた防御シールドリングと、予備の羅針盤を持たせて、信用できる老夫婦に預けたんだ。
何でキミを、ボクが育てなかったのか、って?
理由はいくつかあるけれど、旅人だからかな。
ボクは一つの場所に留まり続けれないんだ。
この場所はちょっと特殊でね。
どこにでもあって、どこにもない場所だから。
うん、準備はいいかい?
彼女に会いに行っておいで。
本当はね、こんなに何年も時間がかかる予定じゃなかったんだ。
ボクの羅針盤は緊急転移やら何やらで酷く脆くなっていてね。
しばらく使うことが出来なかったんだ。
ほんとに、ごめんね。
さぁ、空間を開くよ。
大丈夫、安心してこのトンネルを通るといいよ。
うん、もうすぐ向こうに町が見えているよね。
一番町に近づく瞬間を狙ったから、ほんの数歩で町につくさ。
ん?
老夫婦にはもう会えないのかって?
大丈夫だよ、キミの両親は最高の魔法学科学者なんだから。
うん。
無事に向こう側にたどり着いたね。
正直ボクはここ数年、ずっと心配だったのさ。
ボクの羅針盤は故障して、そうそう彼の元にも彼女の元にも渡れなくなってたからね。
これで肩の荷が下りるってもんだよ。
あぁ、貴方もね、一緒にボクの話を聞いてくれてありがとう。
ん?
貴方だよ、貴方。
わからない?
まぁ、いいよ。
紅茶でも飲んでゆっくりしていってよ。
ボクが話したい町は、まだまだいっぱいあるんだから」
これにて完結となります。
ありがとうございました!




