初めてのバイト
洋風軒で初めてのバイトをすることとなった。勉強に精力を注ぎ込んでいたオレ…外山来翔にとっては、何とも新鮮な活動であった。
労働…言ってみれば、自分でお金を得るかわりに自分の体を提供する。べ、別にヤバイ意味じゃないからね!
「店長、今日は宜しくお願いします。」オレは店長に挨拶する。
「来てくれてありがとうな。じゃあ、午前中は皿洗いを頼むぞ。」東崎店主が言った。皿洗いを嫌々やってるようじゃ駄目だ。皿洗いこそ最も重要な職であると続けて彼は言う。
全くその通りだ。
料理はたとえ旨くとも、食中毒になってしまったら元も子もない。皿洗いこそ責任重大な仕事である。
「はい!特製ミルフィーユカツwithローストチェリーチップ。」
何とも長い名称だが、この長さをウリに注文を稼いでいた。
そのうち、全ての肉を薫製にしてカツを作るんじゃないかと思う。
「店長、そこの若者は誰かい?」客の一人が話し掛ける。
「どうも。外山来翔です。来年からこの店で働きたいと思っている高三です。」オレは言った。
「高三か。自分の生きたいように生きればえぇ。」
「そうですね。僕はこの店に食べに来て、とんかつ屋で働きたいそう思ったんです。だからこの店に店で働くことにしました。」
「おじさん、応援するよ。頑張って。タカさん良かったな。この店を継ぐ者が現れてな。」
「まぁ。良かった。全くうちの馬鹿息子の瑛士は、何をやっとるんだか。五年前、この若者と同じ十八歳の時に突然家を出て以来行方が分からないんだよな。」
「店長。息子さん居たんですか?」
「あぁ、不肖な息子だ。高校の頃から煙草や酒に手を出していてな。俺が店を頑張りすぎたんだ。皆、俺が悪いんだ。」
店長、東崎は落ち込みながら、それでいて自嘲していた。
彼はもう辛そうであった。長年溜め込んでいたものがあったのだろう。涙ぐんでいた。
「店長、忙しい中でも頑張ってきたんですよね。家庭と仕事。そう落ち込まないで下さいよ。」
「やけんど、俺は、瑛士をあまり面倒みることはなかった。とんかつ屋で一杯一杯だった。仕事真面目もいい加減にしろ、だよな。」
「でも、何かの物事に精一杯取り組めるのは凄いと思いますよ。音楽のバンドにしても、応援団にしても、命を懸けて物事に取り組む。口では簡単に言えますけど、実現することは難しいです。」
「そうか。俺に対してそんなこと言ってくれる人がいるのか。嬉しいなぁ。」
「まぁ。店長、酒でも飲んで落ち着きましょうよ。こんな暗い話しててもつまりませんから。」客が話を変えようと必死になる。と言うのも店長は笑っているようで、内に悪い塊を秘めてしまう。辛いことを我慢してしまう。要するに兎系男子なのだ。
二人は店を続けた。
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