面接
久し振りの投稿。待ちくたびれた方、終わりまでご期待下さい。
「まあ、座ってくれたまえ。君のことはようけ知っておるわい。あの弟子を取らなかった東崎シェフが唯一認めた弟子だな。」
今、来翔は黒鷹グループが経営している「麺やブラックホーク」のバイト面接に参加している。
「はい。確かに、唯一認めた弟子と言われておりますが、俺はまだ師匠には及びません。」
「その謙虚な姿勢。料理人の模範だな。私達も見直さなければ。それで一流の料理人である君が、どうしてこの店に来るんだ?店を畳んでこっちに来る必要も無いと思うが。」」怪訝そうに尋ねてくる。
「自分は調理専門学校に行ったこともない、とんかつだけを料理してきた男です。日本語を習得している我々ですが、英語を身につけると世界が広がる。それと同じように、私がラーメンについて学ぶことによって料理人としてのアイディアが浮かんだりすると思います。」
腹の中を見せずに一生懸命話した。半分、嘘をつきながら。
「流石だな。お前みたいな奴が居れば、より良い経営につながるだろう。よし。採用だ。暫くは研修だ。でも、すぐに終わるだろう。料理人としての知見は十分にある。」面接官の店長は感激していた。
「有り難き幸せ。ここで切磋琢磨してより飛躍を遂げられるように努力します。店は息子の東崎瑛士に継がせることにします。たまに休みを頂くことがあるかも知れませんが、出来る限り尽くさせて頂きます。」
「早速、明日から研修期間に入ってもらう。マニュアルなんて無い。体で覚えて、見て盗め。だ。分かったな?」
「はい。分かりました。宜しくお願いします。」
来翔は、面接が終わると急いで『東房洋風軒』に戻る。坂本さんが3階で待っているのだ。
3階の休憩室に向かった。坂本さんは、珈琲を飲んでいた。
「それでどうだった?中岡。」
「思い出したような言い方ですね?坂本さん。」
「今まで来翔って呼んでたからな。特製燻製カツ丼二つ頼んどいたで。味は変わらんのかな?」
「それで、結果は合格しました。これから潜入していきたいと思います。」
「気を付けろよ。殺し屋なんて雇われていたら、大変だからな。初代は、かなりやばい男らしいからな。黒鷹甚三郎という老人。」
「分かっていますよ。老獪な手法で手中に収める。強敵です。」
「師匠。坂本さん。特製燻製カツ丼です。」瑛士がカツ丼を持ってきた。
「頂きますね。」来翔は口に運ぶ。
「頂きます。瑛士さん。」久世もカツ丼を口に運ぶ。
「やはり。味が変わらなくて良い味です。素晴らしい。」
「僕が最初に食べた味と同じだ。瑛士さん。やはり、父上の血を引いているだけの事は有りますね。」
「止めてくださいよ。親父に到底及ぶ物じゃありませんから。 」そう言って彼は泣きそうになる。
「情け深くなったな。瑛士。」久世はそう言った。
来翔の挑戦が始まろうとしていた。




