番外編 センター試験直前!受験生応援の巻
「いやぁ、ようやくこの季節が来たな。」外山来翔、この店の主人は呟いた。
「センター試験っすね。ところで店長、センター試験受けるはずだったんですよね。何で大学行かなかったんですか?」
先代店主の息子で、現在は来翔の元で腕を磨いている東﨑瑛士が彼に言った。
「あぁ。この店のとんかつを食べたら、もうどうでも良くなってな。ここで働くことに決めたんだ。それに大学行ってまで勉強したくなかった。」
「それでも、師匠は流石っすよ。仕事を頑張れるなんて。俺なんて勉強したく無かったし、就職も嫌だったから結局荒れてしまって。」
「瑛士!今日は多めに仕込むぜ。後は宅配要員でアイツの手も借りることにした。」
この時期の定番だと思う。カツ丼というものは。
大晦日に年越しそばを食べ、正月にお餅や、七草粥。そしてセンター前のカツ丼だ。
店に来る制服姿の学生は多いはずだ。
そして、直前まで諦めずに問題を解く人の為に、カツ丼のデリバリーをこの日だけすることになっている。
「おまん、今日呼び出して何ぜよ。」
「坂本さん済まねぇ。明日は大戦が有るから兵士を元気づけなきゃならんからな。」
来翔は二代目坂本龍馬…真言宗の元僧侶で、久世武峰という男だ。今は髪を伸ばし、僧侶を辞めている。
「そうじゃったな。センター試験か。懐かしい。俺も仏教大学をセンターで受かったからな。今じゃこんな身になっておるがな。」
「久世さん。ここで働いたら良いじゃありませんか。流石に、(株)亀山社中の運営だけだと暇じゃありませんか?」
「うむ。確かにそうじゃな。だが、六波羅観音寺の檀家としての仕事を務めなければならないからな。まぁ、宅配ぐらいはやってもいいかも知れんな。」
彼はデリバリー専門で働くことになった。
「先生!来たんですか。あんなに味がわからないって言ってたのに。」
突然来訪したのは、味の分からない嘗ての担任…浜谷である。
「悪いか?外山。お前もたくましくなったものだな。最近、味がわかるようになってきた気がする。」
「先生、ホントですか?こないだまで俺は味がわからねぇって言ってたのに。」
「何だよ。俺を疑っているのか?」先生は少し動揺していた。
「先生、よく分かりませんから。ところで、センター試験はどう受けるといいでしょうか。」
「やはり、自分を信じて突き進むことが大切だ。そして、採点は二日目以降にした方がいい。良くても悪くてもな。それより、燻製カツ丼宜しく!」




