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兄妹 森デビュー*フワフワ

 相談の結果、屋敷にはまだ神々がまだ居るであろうと屋敷とそこを取り囲む庭というには広すぎる敷地は、認識疎外と侵入不可の結界は張ったままにする。自らには用心の為とルディの教えを守り万能結界常時発動し、認識疎外の結界に於いては拠点の森に住む、いわば眷属や庇護対象らに会いに行くのだから不要だろうと解除とした。


 ここまで話ながら歩いていた兄妹達だが、屋敷前から漸く目指す森へ到達した。無駄に広い敷地に口にはしないが、皆、微妙に辟易とした表情だ。

 森への入り口はすぐに分かった。森を割くように白い石板が整然と敷かれた道があり、その両端には両手の平大の丸みを帯びた白い玉石が並べられている。


「お花が飾ってあるよ!」


 凜佳が嬉しそうに声をあげる。

 敷地の際の道の両端に色とりどりの花が、地面に埋められた竹筒のような物に生けられている。瑞々しく萎れた花弁や枯れた葉の一枚もなく、道や玉石も綺麗に掃き清められている事から、常に気を配り、気にかけているのが窺えた。


「なんだか御供えのような感じがしなくもないな」


「まるで神社の参道のようだな。私が作ったジオラマには道はなかったのだが……」


「もう!綺麗にしてくれてるんだからイイじゃない!あたし達に好意的って事でしょ?」


 確かに害意はないだろうが、まさかの神認識じゃないだろうな……と、妄想との差異が気にかかる兄二人である。互いに目配せにて同じ懸念ありと確認し、武人が凜佳に問いかけた。


「リン、ここの住人達が俺達を神様だと思ってたらどうする?」


「ないない、ないよー。神様扱いで崇め奉られたり、お慈悲を〜とかご加護を〜とかって縋られるなんて面倒くさい事この上ないよ!ないわー!ないない!好き勝手出来ないじゃない!……どう考えても、ないわー!」


 うへぇーと行儀悪く舌を出して、心底嫌そうに顔をしかめる凜佳に安心する彼らであった。面倒事が何より嫌いな彼女が否定するのは分かりきっていたが、事前に仮定を提示しておけば、いざ神様扱いされた場合に幾分かは大人しい対応が期待出来るからだ。念には念をと悠佳が重ねて言う。


「妄想との差異で姿を見せない私達を神と認識してる可能性があるかもしれない」


「あーなるほどね。嫌な可能性だけど、ないとは限らないわね……速攻否定するけど!全力否定するけど!反論は認めない!」


「「賛成だ!」」


 兄妹の意見が一致した勢いに任せて、三人は意気揚々と石畳に足を踏み出した。モフモフ〜♪モッフモフ〜♪と凜佳がご機嫌に口遊(くちずさ)む。

 ほんの十歩程度足を運んだ瞬間である。

 ドゥワアァーッと凄まじい勢いで精霊が四方八方から押し寄せてきた。地球での精霊の比ではない数の精霊がうねる塊となり兄妹の周りをグルグルと取り囲み、周遊している。


 虹色に輝く光の粒ほどの生まれたばかりの精霊と、それよりも育った精霊だろう小指の爪くらいの煌めく綿毛の集合体から歓喜の気配が色濃く感じられた。

 

[ウレシー!会エテウレシー!ズット待ッテタ!]


 彼らよりも更に成長した精霊が片言ながら喜びの思念を送ってくる。虹色の一回り大きな綿毛から頭と手足がぴょこりと覗いた、ちんまりとした者達がクルクルと踊るように飛び回る。


「こんにちは!あたしはリンよ。仲良くしてね」


「俺はタケだ。待たせたな。これからよろしくな」


「私はハル。よろしく。君達が一番育った精霊かな?」


[ナカヨシースル!セイレー、セーチョーオソイ!ガンバルー]


 思念を送れる一応人型の精霊達と喜怒哀楽の気配を僅かに感じ取れる粒と小さい綿毛の精霊のうねりの塊に、兄妹達が挨拶をしたら綿毛を喜びに震わせ、より一層虹色に煌めいた。


「頑張るのもいいけど、楽しいことを一生懸命楽しまなくちゃ!いっぱい笑って、いっぱい食べて、いっぱい楽しむのが精霊ちゃん達のお仕事ね」


[リーンモ、イッショニ!オシゴト、楽シムー!]


 粒や綿毛、人型精霊が凜佳の身体に引っついたり髪に潜り込んだりと、楽しそうに纏わりついた。


「俺達と一緒に来た精霊もいるが、ここではお前達が先輩だ。姉さん、兄さん、友達として色々教えて仲良くしてやってくれ」


[センパイ!我ラ、センパイ!オシエルー!タケー、アンシンスル!我ラ、センパイ!]


 とても誇らし気な笑顔と気配でクルクル跳ね回り、武人に突撃の勢いで精霊達が抱きつき、引っついてきた。


「急がずゆっくり成長していけばいい。これからは私達とずっと一緒にいれるからな。君達の成長の課程もまた、私達の楽しみでもある」


[イッショ!ハル、ズットイッショニイルー!ハルー!ズット、イッショイテー!]


 どこかモジモジした気配と赤らんだ頬の精霊達が意を決したように、悠佳の髪や指の先などにそっと触れてポーッとのぼせたようにフワフワ、ゆらゆら揺れた。


「……タケさん、見ました?」


「……リンさん、見ましたとも!」


「「精霊たらし!」」


 凜佳と武人の言葉を否定したかった悠佳だったが、自分からして精霊の反応に戸惑いつつも認めざるを得なかった。彼は反応してドツボに嵌まるのを回避する為に、ただ天を仰ぐしかなかった。






お読み頂きありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。

ブックマーク、評価ありがとうございます。


時間がとれたので何時もより早めに投稿♪

精霊に先に見つかりました……モフモフへの道は遠かったりするかも?するかも?(大汗

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