27話 静かなる斥候(せっこう)
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夜が明け、採掘場には槌の音ではなく、鋭い掛け声が響き始めていた。
ギランが中心となり、体格の大きな男たちを集めて最低限の槍の突き方を教えている。
昨日まで家畜のように扱われていた彼らの目には、まだ怯えが残っているが、その足腰の強さは本物だった。
アッシュは岩場の上からその光景を見届けた後、身支度を始めた。
父の真剣を再びボロ布で隠し、目立たない灰色のマントを羽織る。
「……若、本当に行くおつもりですか」
訓練を一段落させたギランが、汗を拭いながら近づいてきた。その表情は険しい。
「ああ。敵がいつ、どの程度の規模で攻めてくるか分からないまま待つのは、死を待つのと同じだ。……王都での失態は繰り返さない。今度は僕が、先に敵の喉元を覗きに行ってくる」
「……ならば、俺も」
「いや、ギラン。あんたはここに残って、みんなをまとめてくれ。あんたのその大きな体は、ここにいる同胞たちの『柱』なんだ。あんたがいなくなれば、防衛の士気が崩れる」
アッシュの言葉に、ギランは苦渋の表情を浮かべたが、やがて深く頷いた。
「……承知しました。ですが、深追いは禁物ですぞ。若に万が一のことがあれば、我らの希望はまた潰えることになります」
「分かってる。偵察だけだ」
アッシュは腰の袋に干し肉と水筒を詰め込んだ。
王都から採掘場へ続く唯一の街道。
そこを数キロほど遡った地点にある、森の入り口まで移動し、そこを監視ポイントにするつもりだった。
アッシュは、自ら築いた石壁の隙間を抜け、荒野へと足を踏み出した。
背後では、ギランの号令とともに再び訓練の音が鳴り響いている。
(母さん……。僕が、みんなの目になるよ)
照りつける太陽の下、アッシュは影のように音もなく、西の荒野へと消えていった。
それは新生軍として、初めて外の世界の情報を掴みに行く、孤独で重要な任務だった。
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