21--三島兄妹の物語 2 <ばれた…>
「おはよ〜♪」
「おはよ〜♪、ゆかりちゃん。」
いつもの朝の通学路での挨拶だ。
「今日の4時間目は体育だね。」
「そうね。グランドでサッカーだって。」
「うっわ〜。サッカーかぃ! うちのしげき兄ちゃんは好きだけど、私は走り回るのはいやだなあ。 ボールも回って来ないし。 雨振らないかなぁ。」
「うふふ。残念でした。雨は降らないみたいよ。」
「4時間目の体育って、腹ぺこで走り回るの、サイテイ! イャァ〜ダァ〜!」
「ゆかりちゃん? アキラメロン。」
「なにそれ?」
「知り合いのおじいさんの軽口?口癖? ちょっと言ってみただけ。」
なぜかクーボ先生の軽口が出てきた。ゆかりちゃんはこの軽口を知らないみたいだ。あおいちゃんは自分で自分の言葉にこっそり苦笑した。
「ヘプチ!」
あおいちゃんがかわいらしくくしゃみをした。
「あおいちゃん、風邪ひいた?」
「違うと思う。」
「今朝は少し冷え込んだからねぇ。」
「だから風邪じゃないってば。 誰かが私の噂をしているんじゃないの? 誰かに惚れられたかなぁ?」
「う〜ん。あおいちゃんは少し自意識過剰じゃない?」
「そうかなぁ? エヘ。」
ボケたのに、真面目に返されると辛い。笑ってごまかすしかない。ゆかりちゃんの反応が、いつもよりわざとらしく、辛辣なのは気のせいだろうか?
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
4時間目のサッカーが終わると、あおいちゃんはグランド脇のクスノキさんの元へ移動した。その後ろをそっとゆかりちゃんがついて行く。
「クスノキさん。今日も見守ってくれてありがとう。」
『いいえぇ、あおいちゃんを見守るのは私の楽しみなの。今日も元気ね。』
「うん。」
『一時期、元気がなくなっていたみたいね。もう大丈夫なの?』
「うん。もう大丈夫。心配してくれてありがとう。
『ところで、あなたの後ろでゆかりちゃんが耳をダンボにしてるわょ。私とお喋りしているのは…何か、マズくない?』
「えっ?」
あおいちゃんは後ろを振り向いた。あおいちゃんをじっと見ている?観察しているゆかりちゃんと目が合った。
「あおいちゃん。クスノキさんとのおしゃべり、終わった?」
「ななな、なんのことかな?ゆかりちゃん。」
「ごまかしてもダメよ。あおいちゃん、あなた植物とお話しできるのね。」
ゆかりちゃんは、《ウムウムわかっているのよ》といわんばかりに頷いている。
あおいちゃんはゆかりちゃんに嘘を言いたくなかった。
「..うん。でも皆には内緒にしてね。」
「わかった。…でも家のしげき兄ちゃんには話しておきたいの。」
「しげき兄ちゃん? 何で?」
「実はね、あおいちゃんが樹や植物とお話しできるのかもしれないってことを推理したのはうちのお兄ちゃんなの。どうなのかを知りたいそうなの。」
「ゆかりちゃんに秘密がばれるのは、まあかまわないけど。…あったことのない人にばれるのは怖いなあ。」
「わかる。そうよね。でも、あおいちゃんはしげき兄ちゃんに昔会ってるのよ? まだ幼稚園のころに、私ん家に遊びに来たとき、プラレイルで遊んでもらったわよ。
「そんなことがあったような、なかったような。ずいぶん昔のことよね? 憶えてないわ。」
「明日、家に遊びに来ない? まず、しげき兄ちゃんとあってみたら?」
「う〜ん。こわいなぁ。そんな推理ができる人だと、頭がよいんでしょ。」
「そうね。しげき兄ちゃんはアホだけど、バカではないわ。でも、私には優しいお兄ちゃんだし、そんなに身構えなくても大丈夫よ。」
「う〜ん。 悩むなぁ。」
「それに、お兄ちゃんは『エルフの女王様に謁見したい』と言ってたわよ。」
「なにそれ? …ゆかりちゃんのお兄ちゃんって、もしかして少し変な人なの?」
「それは否まないわ。まあ、妙な先入観を持たないでお話ししてみたら?」
次の土曜日の午前中にあおいちゃんは三島さん家を訪問することにした。




