表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

16 ぐーたら令嬢、決別

 次に目覚めると見覚えのある腕の中だった。ソファーに座って、公爵夫妻に詰め寄るシーンだ。

 公爵の私を見る目が以前よりも嬉しげに見える。今回は泣かなかったので、おとなしい、与し易い子だと思われたのだろうか。

 ともかく、話はだいたい前回と同じ筋を辿って、私は公爵家に引き取られることになった。


 夜。前回は寝た振りをして聞いていた叔母の話を、今回も目を閉じて聞いた。

 親愛と恐怖に挟まれて、それでも投げ出さずにいた強い人。声を聞いているうちにその目を見たくなって、話し終えたタイミングでそっと目を開けた。

 起こしてしまったと思ったのか、少し慌てて抱き上げようとするのを、目で制す。

 まだほんの子供だ。多少見たぐらいで真意が伝わるとも思えなかったが、叔母は動きを止めた。

「オフィーリア…?」

 呼びかけてくる声。恐怖よりも心配が勝った様子の声に、つくづく優しい人なのだと感じる。そんな人にはもっと平凡に、平和に生きてほしかったのに。

 叔母の目は涙をたたえていた。

 私のためでも、自分のためでもいい。一度、泣いてはくれないだろうかと思った。泣いて、心のなかにあるものを全て吐きだして、これを限りに幸せな生活に戻って欲しい、と。

 刹那、叔母の目から一筋、涙がこぼれた。追うように次々と溢れる。

 その涙を拭いながら、それでも、叔母は私を見ていた。頭に焼き付けるように。

 私も、叔母を見ていた。

 オフィーリアをこんなにも愛してくれた人がいる。そのことを覚えておくために。

 心のなかで叫んだ気持ちは伝わっただろうか。


 ごめんね、あなたの姪っ子じゃなくて。

 ごめんね、あなたのお姉さんじゃなくて。

 きっと、あなたのことを何一つ知らないけど。

 それでも、あなたが大好きだよ。

 どうか…幸せな人生を生きてね。



 翌朝、目が覚めると叔母はすでに出立した後だった。

 変わりに残された、枕元に置かれたロケットペンダント。

 私に見えるように開かれたそれには、見知らぬ女性が映っていた。

 叔母とどことなく似た面差し。優しそうなその人は、きっと私の母親なのだろう。

 ここに置いていったところですぐに公爵家の誰かに見つかる。そんなことは叔母もわかっていたはずだ。だからこれは、ただ今日の私に見せるためだけの、プレゼントだった。美しい装飾の施されたそれは、きっと安くない。

 どこまでも、優しい人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ