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「240ZG」  作者: 猫SR
3/3

「鉢合わせ、」 下





バイパスを海岸から街中へ戻る。


この時間帯なら駅前を抜けても

混んで無いだろう。




もし…、

もう少し時間が早かったら、

或いは…もう少し遅かったら。




追い越し車線から

シフトダウンしながら

エキゾーストノートを響かせて

ウインカーを出し

車線変更をする。


L24型エンジンは今日も快調だ。



追い抜かした市営バスの

ヘッドライトが

バックミラーの中で小さくなる。




「私さ、

別に二番目でもいいのに…。」


聞こえない振りをする。




エンジンの響きが

デュアルマフラーの

咆哮が雄叫びが、心地好い。



駅前の大きな交差点。

外灯とネオンサインが賑やかだ。


…明るい。




赤信号で先頭に停まる。


タバコに火を点ける。



何気無く横断歩道の信号を待つ

右側の歩行者を見た。


最前列にOLさんか?

髪の長い女の二人組??





はうっ!!!


脳内が真っ白に!!!


…ユキ???




慌ててタバコを押し消して、


(緊急事態発生!ビービー!

緊急事態発生!ビービー!)


いかん!なんで?!

何と言うタイミングだっ!!

口から心臓出るわー!



(親方!取り敢えず、

絶対にユキさんと

目を会わせてはいけません!

半開きの目、

鼻の穴を膨らます、

口はあんぐりさせて

別人に成り済ますのです!)


んな、バカな?!


(双子の弟に車を貸した事に

しましょうーw)



有り得ん!!!


どうする?

ちゃんと電話しとけばっ、

くそ、後悔の

アフターカーニバルだっ!



歩行者用信号が青に変わり

ユキと友人が歩き出す!


(見ちゃダメです!親方!)



前を、一点を見詰める、

あ、滝汗が、、、、

でも視線が引き寄せられる、


左右からの人混みの中、

ユキがゆっくりと近付く、

友達と何か話しながら、



み、見てはいけない、



ドキドキドキドキドキド…




…ユキは通り過ぎた、が、

友人らしき女が振り返る、


あ、



ユキも振り返る!


目が合った、う、万事休す。



いきなりユキは引き返す?

まじかー!!!!



運転席側に来て!

窓ガラスを叩く!!


「ちょっと!!!

誰よ、その女っ!!!

窓を開けなさいっ!!」


激しく窓を叩く、

想定外だー!!!!


「いてー!!!」


左太ももに激痛が、


「この人?この人なの?!」


エリカが渾身の力で

俺の太ももをつねる!!!

一瞬、この人の存在、

忘れてたー!!!


どーしよー!!!

脳みそバーン!!!!

何も考えれーん!!!!

対応不可能ー!!!



「窓を開けなさいってば!」


あ、フリーズしる…、、



俺が窓を開けないと見るや

ユキは肩から掛けていたバックの

ストラップを手に持ち変え、

振り上げてから

俺の車のボンネットに

見事に叩き付けた!



ピピーー!!!!!


後続車の警笛が鳴る、

信号が青に変わった事に気付く。



ユキは振り返りもしないで

唖然としてる友人の腕を掴んで

小走りに立ち去る。



一瞬が何時間にも感じた…。




あ、あいつ、やりゃあがった、


と、とにかく、発進しなきゃ、


ちょ、ボンネット、凹んだ?

どーしよ、保険?


どーしました、猫さん?

いや、彼女に

女の子乗せてるとこ、

見付かりましてね、

ハンドバッグでバーンって、

そりゃ保険無理ですがなー

えーそこを何とかー、、、






「停めて!!!」


はっっ!!!!


「停めて!降りるからっ!!」


「あ、うん。」


「追い掛けなくていいの?」


「いや、びっくりして…、

そうか、でも、まあ、

と、とにかく、お、送るわ。」


「いい、あそこのコンビニで

降ろして!

電話しなきゃでしょ?

むっちゃ腹立つんですけど!」




コンビニに取り敢えず、停める。




「はい、鍵。 返すわ。

…キレイな人だね…。」



何も言えずに合鍵を受け取る。





「…ねぇ、手、貸して?」


「ん?」


「違う、反対、左手。」


言われるままに手を出すと、

エリカは自分の左手で

俺の手を包み込む。


自身の右手を添えて。



「お別れの挨拶は左手なの。」


じっと、

俺を見詰める。




(いい女だ。

こんないい女と

俺は…別れるのか…。)



心の内を読み取られそうだ。




エリカが、、


「あれ、、名前、何だっけ?」


「…何が?」


「キリストを裏切った男。」


「イスカリオテのユダ?」



「そう…、、、

貴方は私のユダ。

一生、忘れてあげない。」


「………。」






「振られちゃったら電話してね?」


あれ?笑い顔?、ちくしょー。



「え???」


「嘘よ、さあ、早く何とか

しなきゃでしょ?

釘は熱い内に打て、でしょ?」


お前、それ、なんか色々違う…、



「すまん、ありがと、」


「…じゃあね、

今まで、、、、ありがとね?」


「あぁ、こっちこそ。」




エリカは足早に立ち去り、

一度、振り返って手を振る。



つられて俺も手を振った。



もう表情は読み取れ無い。

オフィス街の中通りを曲がって、



エリカは消えた。





…意外と呆気なかった。

相手を見て、一気に

気持ちが冷めたのだろうか。





…女ってのは解らん。




でも、もう二度と

会わねぇーだろうな…。






ん。


感傷に浸っている暇は無い。


さてどうしたものか。



金曜の約束を

水曜に変項した件は

電話しておくべきだった。


悔やまれるが、仕方が無い。


完全に浮気したと

思ってる事だろう。



この誤解が解けるなら

10万円なら払うぜ…。



むー。




電話してみよ。



「あなたのお掛けになった

電話番号は、電波の、、」



…ちくしょー。




コンビニの前で考える。


ユキの家で待つか?

てか、駅前まで車で来たなら、

さっきが多分、帰る所なら

今からユキの家に行けば

俺が着いた頃には居るかも?

あ、友達、送ってったかな?



考えが纏まらんな…。




ケータイで時間を確認する。


少し考えたんだが

ユキの家に行く事にした。


バイパスを東に。


もどかしい、

反対車線ぶっちぎろうか?

トレーラーを追い越して。


今、パトカーに捕まれば

絶対、一発免停だな。






だが、ユキは帰ってなかった。




ユキの家の近くのコンビニは

客が一人も居ないのに、

無駄に明るい。


地球温暖化に貢献してる。




そのコンビニで

缶コーヒー飲んでから

もう一回、家の前を通って見たが

まだ車は無かった。




ここまで来て、得た成果は

ユキは自分の車で駅前に来た事、

そしてまだ帰って居ない事、


それだけだ。



…だるい。…徒労感。



路上駐車で再度、電話した、

電源は切れてる。


或いは着信拒否か。

いや、コールしないから

やっぱり電源、切ってる。



はー。



さてさて、どうしたものか。




仕方が無い、今夜は帰ろう。

悩むのは性に合わん。

明日、とにかく明日だっ。

何としても誤解を解かねばっ。





発進。

マンションの角を左折。


ふと、目をやると

さっきのコンビニには

やっぱり客が居なかった。




張り詰めた気持ちが溶けたら

どっと疲れた。

運転するのも面倒だわ。




バイパスのインターから

家路に向かう。



対向車のライトがやけに眩しい。


イライラする。



神様は、なんて意地悪なんだ。


全く、愚かな恋の犠牲者だわ。




(仕事も女も、ホウレン草が

大事ですね、親方。笑)


(報告・連絡・あれ、草は

何だっけ?)



…相談だ。てか、うるせー。


ダルダルで運転して帰った。

まるで夜中まで大残業、みたいに。

色々、仕事より疲れたわ…。


ハンドルを握りながら

肩を叩き、首を回す。







燃料計を見ると既にE線だった。

だがもう直ぐだ。


夜、帰る時は超低速で近付き、

マフラー音を絞る。

ご近所様には、

それなりに気を遣うべし。



右にハンドルを切り、

駐車場に着いたら、


カーテン?!電気が点いてる!!



ユキか??



走れ!!


車を降りて玄関まで!



「た、ただいまっ!!!」


玄関開けて、呼び掛ける。




…誰も居ない。

てか、、靴が無いわ。


なんだ電気、消し忘れか…。


呼吸が荒い、、動悸が、、


(へこむー、)


そう思った瞬間、

トイレからユキが出て来た!

片手にはハイヒール?



ビクぅ!!!




「はー、心臓に悪いー、

びっくりしたー!!!」




ジーっとこちらを見る。


「女は?」


「あ、いや、あれは…、」


怒った顔が美しい、

いや、そーでは無くて、、




…それから説明にどれだけの

時間を費やしたか、

どうかご想像頂きたい。笑


こんなに激しい女とは

思わなかった。





…身辺整理をしろと

自分で言ったものの、

凄く心配で、あの後、

泣きながら運転して帰った事、


さっきは無性に腹が立って

電話の電源を切った事、


女とホテルに行ったのか、

部屋に連れ帰るのか、

確認する為にここへ来た事、


そして、別れるつもりだった事。



初めて見る涙。


…知らなかった一面だ。






「帰って来ないかと思って

すっごく不安だったの。

あ、車、ごめんね?弁償するから、」


「いいよ、保険で直るし。」


「ほんと?」


「う、うん、大丈夫、多分。」


「浮気カウント、1ね?」


「は?浮気じゃねぇーら?笑」






「泊まってく?」


「そだね…。」


「風呂は?」


「もういいわ。笑」


「エッチする?」


「猫ちゃん、

自分の立場、解ってる?笑」


「え? あ、はい。」



何か納得いかんけど。





狭いベットで

抱き合って寝た。



ユキは髪を撫でていたら

直ぐに寝息を立てた。



俺は

ムラムラとした

気分を押さえる為に

二次関数と

独立変数に付いて考えた。







朝、起きたら

ユキは居なかった。


きっと、

猛烈に早く出たのだろう。


誤解の解けた安心感からか

寝不足の割りには

爽やかな気分だ。



窓のカーテンを開くと

朝陽がとっても眩しかった。


いい天気だ。




小倉マーガリンのパンと

微糖の缶コーヒーが

テーブルの上に置いて有った。


少し急がねば、寝坊気味だ。


バンと缶コーヒーを手に取り

ポケットに、ねじ込む。



タバコに火を点けながら、

ふと、思った。



…燃えないゴミの日か。






コロコロカーペットを掴み、


俺は部屋を出た。






朝陽が、、、眩しい。


後からユキに電話しよう。








話は 以上だ。










結局、

コロコロカーペットは

捨てなかった。




理由は、特に無い。







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