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「240ZG」  作者: 猫SR
1/3

「奇襲と事件。」 上



愚かな恋の話をしよう。




その女には、

何か特別な空気が有った。


鄙びた温泉街には

不釣り合いな程、

体にぴったりとした

ミニのワンピースとハイヒール。


度々、髪を掻き上げる仕草は

とっても艶が有るんだが

その美しい顔立ちには

ケバさが無かった。


グローブ外してメットを取って

再度、遠目からまじまじ見る。


…好ましい、実にいい感じ。




単車のエンジン切るのも忘れて

その女が友人逹と

土産を選んでいるらしい

姿に見とれていた。


脚なげーし、背たけーな…。

てか、何頭身?




「やい、猫、

何、女見てんだよ、

口、開いてるぜ? 笑

おい、昼飯、行っかよ!」


令二の声に、はっとする。


「お、おう、腹減ったな。」



それが第一印象。




まぁ、要するにだ。


俺はその女に

勇気を振り絞って声を掛け、

何とか連絡先を聞き出した。


たまたま地元が同じだったのは

大袈裟に言ったら

すこぶる運命的だったね。


隣の県まで単車で遊びに行って

そこで声を掛けた女が

同じ地元だったんだぜ? 笑



女はユキと名乗った。




令二は、やっかみ半分で

止めとけって言う。


いい女だから

振り回されてよしだぜ、

てゆーか、男いるぜ、絶対!

…みたいな。



ラーメン啜りながら令二が、


「てか、お前、エリカと

本当に別れたんかよ?」


「別れた風…。

てか、ラーメン熱過ぎて食えん。」


「何だよ?ふうって?

もったいねーな、いい女じゃん?」


「話、する度に泣かれちゃって…。」


「おい猫、お前な、変な優しさは

逆に可哀想だぜ?」






ユキに何度目かに会った夜、

俺はここらで決めようと思って

ホテルのラウンジで飲みながら

全身全霊を賭けて口説き落として

何とかお泊まりOKを取り付けた!


口説き文句は

酔っ払ってて覚えて無い、

てか、恥ずかしくて書けん。


酔いに任せて

土下座しそうな勢いだったのは

覚えてる、確かだ。 笑



さて、、、

客室に移動して、

いや、それも決してすんなり

スマートに

行った訳じゃ無いんだが。


自分でも飲み過ぎた気は

していた。

なのに更にそこでカッコ付けて

ワインを飲んだのが運の尽き、

ユキがシャワーから出るのを

待ってる間に名誉の戦死、


つまり爆睡したんだ。笑



そんなこんなで

色々有ったんだが

付き合う様になりーの、

体の関係が出来ーの、

更には俺の部屋の合鍵を

渡す関係には、なったんだが。




初めて俺の部屋に来た時、

何かを感じたのか、


「ねぇ、前の彼女の件だけど。」


「あ?」


「ちゃんと

切れてるんでしょうね?」


ギク。


「後から揉めんの、嫌だからね?」



ユキの視線を追うと、

壁一面の本棚の中ほどに、

歴史の本に紛れて、、あ、

数冊の少女マンガ…。


げっ、、、


以前、聞かれて答えた、

前の彼女とは自然消滅、

それを急に思い出したのだろう、

俺の部屋に来て。


勘がいいな、そう思った。




ユキには

どこかミステリアスとゆーか

突っ込んでは聞けない何かを

いつも感じていて

体の関係が出来たからって

征服感とか安心感とか、

そんな物は得られ無かった。



だからこっちも自然と

クールを装っちまう、

おチャラけ人間のこの俺が。



で、、


「なんで鍵、渡さないんだろ?」


とか言われた時は、

まさか自分の事とは思わずに


「は?仕事?何か有ったの?」


…なんて的外れに答えて


「鈍いわー、この男!!」


って大笑いされたんだ。



催促されて、

うっかり合鍵を渡したものの。


好きな女が出来たとまで

伝えたのに

まだ精算が出来て無い、

あの関係、どーしよー、


あっちの合鍵…。



これじゃ

アコムとレイクと二ヵ所から

金、借りてるみたいな?

いや金借りてねーし。

例えばの話だっつーの。

お前の喩え話ってーのは

いっつも微妙に変だし。

うっせーな、そんぐらい

ヤバイって話だっつーの。



…自分自答。

…自問自答だら?

うるせーわ。




…自然消滅かー…、




なんて、のんびり構えている内に

事件は起きた。


いや、別に

鉢合わせした訳じゃ無いんだ、

それは、まだ、先の話。




俺とユキは同じ都市でも

やたらと広いこの市内で

お互い住んでるのは

一番あっちと一番こっち。


互いに仕事も有るから

平日なんか滅多に会わない。


けど束縛されないそれが、

俺にはちょうど良かったし。



なんか、お高そうな外見と違って

あっち連れてけとか

こっち行きたいとか

あれが食べたいとか

これは嫌だとか全然、無くて、

日曜は基本、本屋か図書館。



その日も図書館で

つい、うっかり

本に夢中になっちまった、、


はっっと気付いて見渡すと

何処にもいねぇ。


(うわ、やっちまった!)



やっべ、怒ってっかなー、

なんて慌てて捜すと

窓際のちょっとゆったりした席で

何かを一生懸命読んでいた。


長い脚を組んだその姿は

何だかまるで映画の

ワンシーンみたいだった。


いや、化粧品のCMか? 笑



…事件の話からずれた。





精算して無い関係の相手には

別れを言い出せば、

否定され泣かれ、

その女がたまーに平日に

俺の部屋に来るのを

拒めずにいた。


勿論、体の関係はもう無い。


その女には忙しくて

日曜も仕事とか、単車だよとか、

なんとか、かんとか、

切断出来ない関係を

ズルズルと…。


会って話をすれば

泣かれるから、辛い。


それでも電話で

日曜は彼女が来るから

絶対来んなよ、とは伝えた。


泣かれたけど。




暫く音信不通でやれやれと

思い出した頃、

週末、残業して帰ると

部屋が綺麗に片付いていた。


脱ぎ散らかした服とか

洗濯物とかも。



置き手紙が有って

ちゃんと話したいから

最後に会って欲しいと

書いて有り。



マンガも無くなってた。



気が進まないけど

合鍵を返してもらわなきゃ。



…電話して、

それは「超事務的」な感じで

翌週金曜に会う約束をした。





で、、、


次の日曜に単車で峠に行った。

令二と前から約束してたんだ。



散々走り回って

暗くなる頃、部屋に戻ったらさ、


…え?電気点いてる? は?


(まさか?ユキか?それとも?)



ちょっとドキドキしながら

玄関前に単車止めたら

いきなり扉が開いて、


「おかえり。びっくりした?」



満面の笑みを湛えた

ユキだった。



「なんでーや?

来んなら、言えやー、

びっくりするじゃんか。笑」


「でしょ?奇襲攻撃ー。」


「笑、車どこ止めた?

令二らと焼肉行くんだ、

一緒に行くら?」


「ぶー。ご飯作った。」


「は?」


「令二さんに電話してよ、

あたしが来たからって。」




玄関入ってメットを取って

ライダーブーツを脱ぎながら、

上がって直ぐのキッチンには

何だか旨そうな匂い。



グローブ外して

令二に詫びの電話しながら

キッチン抜けて部屋に入ると。


タンスから

全ての服が出されてて

綺麗に畳んで有ってさ、、


一瞬、目が点になった。


…意味が不明。


「え?」


「あ、ごめんね、

今、片付けるから。」


キッチンからユキが答える。


「お?何で?」


「洗濯しといたから。

ついでに他のも畳み直した。」


「あ、そか、

わりぃな、いつも。」



数少ない食器を出して、

ユキの手料理、初めて食って

それは普通に美味しくてさ。


さあ!やる事はひとつ!!笑


抱き寄せ様としたら、


「待って、ごめん、今日、女の子。」


…理解するのに少し掛かる、


「まじー!なら、お口でっ!」


「あのねー、笑」




ちょっかい掛けても

何か、今日は頑なに

拒否られるな、とは

感じていたんだが。


生理だから?

いや、それだけじゃ無い感じ。




でも、いきなりここへ来て

しかも俺が居ない間にだ、

合鍵を渡したとはいえ

初めの事だったし、

何だか嬉しくて、、、


あの女と決着付けなきゃな、

ぼんやりそう思った。




取り敢えず、まあ夜も遅いし

ユキが車を止めた近所の

マックスバリューまで

送ってった。



…ユキは無言で。




さっきから、何かおかしい?



外灯がまだまだ明るい

その駐車場に着いて、

わざわざ店舗から

随分離れた所に停めた

ユキの車に向かいながら、、



…何で、だんまりなんだ?



頭の中はぐるぐる回り、

何だか軽くパニックだし、


部屋片付けてくれた時、

何か、見られた??


少女マンガはもう無いぜ?

あ、食器? お箸?


汗。


後から付いて来る、

ヒールのカツカツ響く音が、

取調室で尋問、受けてる気分に、


何か、やばい感じ??



思い当たるフシだらけ、

叩けば埃の出る身、、、


おー神よ…、


俺の心の中のセンサーが

赤色LEDを点滅させる、


(親方、事件です!ビービー!

親方、事件です!ビービー!)



わかってら!

ユキが何に気付いたか、

それが解らんのに

対策なんか立てれるか!!


あー、ちゃんと精算しとけば!

↑それじゃん!



俺を追い抜き、

ユキは運転席に乗り込んで

大きな音を発ててドアを閉め、

俺を睨み付けてから、

エンジンを掛けた。


緊張が高まる、、、



スーっと窓を開けて、

にっこり微笑む。


こ、怖ひ。)))))))



「猫ちゃんさ、

せっかくあたしが

片付けたんだから、

あんまし、散らかさないでね?

ちゃんと片付けてね?

それから!特に身の回り。

…ね、意味解る?!」


「あ、、は、はい。」


「あの服の畳み方は、

あたしじゃないから。

全部、直しといたから。」




背筋に冷たい汗が流れる。

まともに顔が見れません。


なんか寒いです。


てか、ユキちゃん怖い。



「い、妹が、、、」


「はぁ?」


「いや、何でも無い…、」



俺の顔を覗き込みながら


「お片付け、、

終ったら電話してね?」


笑顔が怖い。


「う…、」


「お返事は?」


「はいっ。」




手を振ってから

ユキは走り出した。



ユキの車のテールランプを

見送りながら

首の皮一枚で繋がったこの命、

無茶苦茶、焦ったけど

嬉しさが込み上げて来た。


か、神様…。


(親方、振られなくて

良かったっすね。)


おー、事件は解決の方向に。

あいつと話さなきゃな。


今度こそ。



タバコに火を点ける。


金曜に女と会う話は

言わなかった、敢えてだ。


(親方、それ正解です、今は。

でも、

何れは、ちゃんと言いましょう。)


…タバコが旨い。




山中鹿之介だっけ?

南無、八幡大菩薩、

我に七難八苦は要らないです。


どうか、穏便に決着を。




そう三日月に祈ろうとしたら



月はもう居なかった。









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