序章 後に犠牲者と呼ばれるようになる8人達 ①
戦乱から500年、戦争が既に過去の歴史となった魔界・人間界、その境界にまたがる関所兼交易所にてそれは起こった。
空間そのものを歪曲させる圧倒的な魔力と共に出現したそれは、遥か上空に浮かぶ山脈程もある未知の超存在の曖昧な影であった
あまりの出来事に魔族・人間共に逃げる事すら出来ずにただただ空のそれを見上げていると
「…ふむ、この時点の転移による物質化はやはり出来ぬか…異界の下等存在達よ、我はこれよりこの次元を支配する真なる神となる存在だ、この次元の神とやらも我の前では塵に等しい、我の完全な具現化までのこの世界における一年間の内に我に全てを委ねる準備を済ませておけ、決して逃れる事は出来ぬ」と言い残し、一際巨大な空間の歪曲と共に時空の彼方に去っていった
震える一人の魔族の炎術師の男が言う
「し、信じられない…奴の、奴の魔力は魔王様のそれを超えている…!見ろ!私は魔王様への謁見状を持っている!」
男は刺繍入りの厳かな書面を懐から取り出し周りへと見せびらかす
「魔王様と直接謁見した私が断言する!奴の力は魔王様の魔力を超えたものだ!奴の言うことは本当なんだ!」
人々は蒼白となりじわじわと混乱を起こし始める
「魔王様よりも強い存在…?」
「そんな者もはやどうしようも無いのでは…?」「半神の人間の国王はどうだ…?」
「ダメだ…!遥か昔、かつての戦争の英雄だと聞くが今は年老いている!」
「再び闘争の時代が…?いや、そもそも戦いになる相手なのか!?」
人々が顔が絶望に染まりつつある中一つの荘厳な声が空間に響く
魔王「魔族の同胞達、そして人間共よ、我は魔王、この事態を我はこの平和の時代を脅かす、いやこの世界そのものに関わる存亡の危機と捉えた」
人々のざわめきが一層と増し絶望が更に加速する、そこへまた別の荘厳な声が響く
国王「案ずるな世界の兄弟達よ、我は人の王、この凶事に対して我々は既に共同で対策を講じる事を決定した、だがしかし奴が我々を越えた力を持つ存在である事も揺るがない事実である」
魔王「そこで我らは1つ、いや2つの案を練った、まずは魔族の中でも様々な強さを持つ4人の選抜者達を選ぶ、そしてここに戦乱の時代に残して久しい【四天王】の復活を宣言する!」
国王「人類としても同様である!我々の新しい希望となる【勇者隊】4名の結成を行う!」
人々のどよめきと希望を取り戻し始めた驚嘆の声
「歴史に記された英雄達の再結成…!」「しかも、争い合っていた当時とは違い共同戦線などとは」「我々は神話の中にいるのか…!?」
魔王「だがしかし、ただ両陣営の頂点の存在を集めたとしても奴の力は神域、我々と共に戦ったとて勝てる保証は無い」
国王「精鋭達の力も我々と同じ神域の淵に踏み込まなくてはならない」
魔王「そこで我々はこの世界の正当なる神との交信を開始する、8名へ神託を授け神域へと導く道標となっていただくのだ!」
あまりの事の壮大さに人々は言葉を失う
国王「誓おう、我々はこの世界を奴へと渡しはしないと!」
魔王「同胞達よ一年後を恐れる必要は無い、祈れ、そして時が来た時、刮目するのだ、英雄達の結束を!」
人々の歓声と共に両王の念波は途切れていった
ー それは8人が一部の者達から【犠牲者】と呼ばれるようになるちょうど一年前の出来事であった。 ー




