表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/447

223

「ねえ、海。いつもみたいにお礼にキスをして」と渚は(後ろを向いたまま)言った。

「いいよ」

 海はそう言って、渚の頬に(渚を後ろから抱きしめるようにして)キスをした。とても優しいキスだ。

 以前、海は星にキスをしたことがあった。

 それは二人が中等部のとき。

 場所は海の部屋だった。

(海の思惑も知らずに、ほいほいと)泊まりにやってきた星が海のベットの中で眠っているときに、星に断りもなく勝手にキスをしたのだ。(身勝手なキスだ)そのことを眠っていた星は知らない。知っているのは世界でただ一人、海だけだ。

 その日は大雨の日で、外ではとても強い雨がずっと(夜中じゅう)降っていた。

 渚にキスをしながら、海はそんなことを(久しぶりに)思い出していた。

 もう三年くらい前の思い出だ。

 あのころの私たちは(……きっと、今もだけど)あまりにも無防備で、そしてあまりにも未成熟だった。

 ……星は自分の未熟さを愛していて、自分の未熟さも海の未熟さも、同様に受け入れてくれていたけど、海は自分の未熟さを(そして星の未熟さを)受けいれることができなかった。

 それは海の、(完璧主義に近い)プライド(傲慢さ)のようなものが原因だったのかもしれない。

 今考えてみると、それは本当に馬鹿みたいな話だった。

 十八歳になった今も、(そして、それはこれから海が年をとって、何歳になったとしても、きっと)海はずっと子供のままだったからだ。

 自分でも情けない話だと思う。でもそれが(本田星の憧れている、目標でもある)山田海の真実だった。


 海はたくさんの人たちに(自分の家族を含めて)嘘をついて生きていた嘘つきな女の子だったが、星にはなぜかあまりうまく嘘をつくことができなかった。それは星はとても純粋な人(あるいは純粋な魂の持ち主)だったからかもしれない。

 海はそんな星の持っている透明さと、純粋さと、素朴さと、素直さと、魂の美しさに、とても強く惹かれていた。……憧れていたと言ってもいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ