182 第九幕 星 傷だらけだね。大丈夫?
第九幕 星
開演 傷だらけだね。大丈夫?
星は澄くんの背中を見ていた。
そこでは大きな深緑色のリュックサックと黒いカンテラが澄くんの足を動かすリズムに従うようにして、左右にゆらゆらと揺れている。
そして澄くんの肩の上には青猫がいる。青猫はじっと星を見ている。
星は少し早歩きをして澄くんの横に移動する。
星はちらっと横目で澄くんを見た。
それから二人は黙々と雪の積もった冬の森の中を歩き続けた。
歩きながら、星は自分と海の今までの関係のことを、全部澄くんに話すかどうか迷っていた。
でも、結局悩んだ末に星はすべてを澄くんに話すことにした。
一緒に海を探してもらうのだから、つまり私と澄くんはこの森の中でパートナーになったのだから、隠し事はいけない。話せる事情はすべて話すべきだと星は思ったのだ。
「ねえ、澄くん。ちょっと大切な話があるんだけど、いいかな?」と星は言った。
横を向いた澄くんは、星の真面目な顔を見て、星のとても真剣な雰囲気を察したのか、少し表情を硬くして、しっかりと物事を考えるような姿勢をとった。
「それって、大切な話?」
「うん」と言って、星はこくんと頷いた。
「わかった。じゃあ、歩きながらじゃなくて、どこかに座って休憩しながら話をする?」と森の中に続いている小さな道の先を見ながら、澄くんが言う。
「ううん。このままでいい。歩きながらがいい」と星は言う。
澄くんは視線を硯に戻す。
「うん。わかった」と、澄くんは真っ直ぐに星の目を見て言う。
澄くんの気持ちの良い返事を聞いて、星は思わずにっこりと笑った。
二人の周囲の世界には、大地の上だけではなくて、森の木々には雪が多く積もっていた。雪は降ったばかりだからなのか、あるいはこの地方に降る雪の特徴なのか、粉雪のようにとてもさらさらとしていて、雪が溶け出して凍りついたりしている場所は、今のところ星の見た限りではどこにもなかった。
星が自分の話をはじめようとすると、近くの高い木の上からぱらぱらと粉雪は舞い落ちた。星はその粉雪の落ちてきたとても高いところにある木のてっぺん付近の場所を見つめた。空は真っ白な曇り空だった。きらきらと空中で雪がわずかな光を反射して輝いているのが見えた。




