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 この時間の辺りから、二人の間で(少なくとも星の中では)自然とルールのような、目には見えない境界線が引かれるようになった。そのルールによると、大きな部屋は二人の共有できる空間となった。左の部屋は星の部屋と言うことになり、右の部屋は澄くんの部屋と言うことになった。(まあ、本当は全部が澄くんの家なんだけど……)


 星は大きな部屋に戻ると、部屋の中に一つの変化があった。(注意深く周囲を観察していた星はその変化にすぐに気がついた)

 部屋の隅っこにある、小さな(澄くんの個人的な作業机のような)テーブルの上に、今までそこになかったはずの『小さな箱』が一つ、いつの間にか置いてあったのだ。

 箱はテーブルの真ん中に、ほかの小物たちから少し距離を置いて、少しでも目立つように、まるで星にきちんと見つけてもらうために、そうしているかのように、……ぽつんと孤独に置かれていた。

 それは、(今さっき作られたばかりのように、まだ材料となった木の匂いさえ漂うような)とても綺麗な、木製の四角い正方形の箱だった。

 その箱をそっと、(まるでとても壊れやすいものを持つように)星は両手でしっかりと持って、自分の顔の高さまで持ち上げて、それをじっくりと観察した。

 箱には鍵穴があった。ちょうど、まだ使われていない澄くんの持っている鍵束にある小さな鍵と合いそうな鍵穴だった。(おそらくは、そういうことなのだろう。……あの鍵は、きっとこの箱のための鍵なのだ)


『お、お宝発見だね』

 そんなことを星が考えていると、久しぶりに魚がそんなことを暗闇の中で、(しかも嬉しそうな声で)言った。

 星はその魚の言葉を、まるで急に『魚の声が聞こえなくなった』かのように、無視した。

 星は箱を持って自分の椅子に腰を下ろした。

 そこで星は、その小さな箱を、じっと(泥棒に盗まれないように、自分が見守るようにして)とても長い間、……一人で眺め続けていた。


 第七幕 終演

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