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「でも、その先に海さんはいなかったんだ。どうやら単純に(澄くんが無理やり青猫を捕まえて星の前に連れてきたから)青猫はどこかに遊びに行きたくて、ずっとその機会をうかがっていて、あの瞬間を逃げ出すチャンスだと判断したみたいなんだよ。それで全速力で僕から逃げて行ったんだ。それを僕は青猫が海さんを見つけたんだと勘違いしちゃったんだよ。ごめんね、星」と澄くんは言った。

「ううん。別にいいよ」星は澄くんの話を聞いて笑っている。

 単純に、とても微笑ましい話だと思ったのだ。

 星は一人っ子だが、まるで大きな弟がいきなりあらわれて、そんな飼い猫との話をお姉さんである星に(声だけだから、電話で)話してくれているみたいだった。

「青猫が澄くんから逃げることって、よくあるの?」

 答えは大体想像できるが、意地悪な(お姉さんである)星は澄くん本人にそんな質問をしてみる。

「もうしょっちゅうだよ。大抵、僕と青猫は追いかけっこをしているね。まあ、いつも最後には僕が勝つんだけどね」

 澄くんは、(きっと壁の向こう側で、胸を張って)そう言った。

 星はいきなり森から飛び出してきた澄くんが青猫をキャッチして、そのまま冬の小川の中にどぼんと落ちていった風景を思い出す。

(川に落ちることはともかくとして)普段からきっと澄くんと青猫はあんな感じなのだろう。

「そっか。そうだったんだね」

 星は澄くんの話してくれたことを自分の中でまとめながら、納得するようにそう言った。


 コートの(手洗いの)洗濯を終えた星は、その山吹色のコートを洗濯場所の洗濯物をかける用の紐(それが最初からその場所にはあった)に洗濯ばさみで引っ掛けた。

 洗濯機はまだ回り続けている。

 洗濯はまだ当分は終わらない。(もう少し時間がかかるようだ)

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