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星はベットから出て(スニーカーをはいて)木の床の上に立つとうーんとその場で大きく背伸びをした。
『おはよう』魚の声が聞こえる。
「うん。おはよう、魚」星は姿の見えない魚ににっこりと笑って朝の返事を返した。
星はそれから窓際まで移動する。
できれば、晴れていて欲しかったのだけど、残念なことに窓の外は曇りだった。(森には霧のような白い靄がかかっていた)それも、空が全部とても厚い灰色の雲に覆われている、肌寒い冬の朝の天気だった。もしかしたら今すぐにでも雪が降り出すかもしれないと(見る人に)思わせるような(憂鬱な)空模様だ。
ぶるっと一回、その場で星はその体を震わせた。
見ると、暖炉の火は完全に消えていた。
星はそれからドアのところまで移動する。
『澄のところにいくの?』魚は聞く。
「違うわ。バックのところ。本を読みにいくのよ」と星は言った。
(そろそろ、記述が増えた本の内容をきちんと読んでおかねばなるまい)
『甘酸っぱい恋愛ごっこは、もう終わりなの?』
魚が言う。
その言葉を聞いてドアノブに手をかけたままの状態で星の動きがぴたっと止まった。
「……見てたの? 魚?」星がつぶやく。
『うん』と魚は悪びれもなくそう答えた。
……しまった。油断した。(てっきり眠っているのだとばかり思い込んでいた)
……しっかりと覗いていたのか。いやらしい魚だ。
そう思いながら、星は自分の顔が赤く染まっていくことを感じた。
星はドアを開けて、部屋から移動して廊下に出た。




