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星は、ぼーっとした意識のまま、天井を見つめる。
そして一回だけ、澄くんの唇が触れた自分の頬に触ってから、……少しだけ考えた。
……私、なんでこんなに澄くんに甘えてるんだろう?
自分でも、その答えがよくわからなかった。
これが、人を好きになるってことなのかな? (海に意見を聞いてみたい)
澄くんは先ほど、自分の言っている好きと星の言っている好きは違う好きだと言った。その意味はもちろん星には理解できているが、(友達としてか、恋人としてかという)その意味だけではなくて、本当になんだか、澄くんの好きと星の好きが違う好きという意味の言葉なのではないか、と星には思えるようになっていた。
もしそうだとしたら、それはどう違うのだろう?
私の好きと、澄くんの好きはなにが違うのだろう?
もし本当に私たちの好きに(もしくはあらゆる人の好きに)違いがあるとするのなら、澄くんの好きと言う言葉の意味を、星は知りたいと、……(強く)思った。
「魚」と星は言う。
しかし魚から返事は帰ってこない。(きっと、まだ眠っているのだ)
なら、自分ももう少しだけ眠ろうと星は思った。
星は目を瞑る。
体が重い。
部屋の外から、雨の降る音と、暖炉の中で火がぱちぱちと弾ける音が聞こえてくる。
本田星はあっという間に、再び眠りについた。
それはとても深い眠りだった。
第五幕 終演




