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「星!!」
突然、後方から星を呼ぶ叫ぶ声がした。
それは澄くんの声だった。
どうやら澄くんは星のことを心配して(星の、待っていて、と言う意味の言葉も聞かずに)森の中まで追いかけてきてくれたようだ。
その声を聞いて『海』が、澄くんの姿を確認しようとして、少しだけ攻撃的な体の姿勢を変える。(緩める)
声とほぼ同時に、葉っぱを踏む音がして(星からは見えないけど)澄くんが二人のいる場所に姿を現した。海の姿勢の変化と澄くんを見る視線の動きから、星はそのことを察知する。
それと同時に、(澄くんの声がきっかけとなって)星は思いっきり地面を蹴って、海に向かって駆け出した。
海が星の行動に気がついて、驚いたように慌てて、星を自分の世界から(世界の穴の最下層に)追放しようとする。
……残念だけど、それは間に合わない。
星の動きは(速度は)ずっと力をためていたことで、弾丸のように素早かった。星は思いっきり海の体に(抱きつくようにして)、どん! と体当たりをした。
勢いよく、二人が雨と落ち葉で一杯になった地面の上に倒れ込む。星の体の下で、海がまるで駄々っ子のようにもがく。(とても強い力だ)
星は海を押さえつける。二人は地面の上で、もがくようにして乱闘している。そして星は(そんな海をあやすように)、力一杯、(真っ黒な闇の色に染まった)海の体をぎゅっと優しく抱きしめた。
(本当は太陽みたいに暖かいはずの)海の体は、まるで雪のように(あるいは白い月のように)冷たかった。
……そのことで、星は海のことがとても心配になった。




