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TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?  作者: 畑渚


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第40話 日常に差し込む緋

 あの日から、俺達の日常は少し変わった。


「莉子、ただいま」


「おかえり、姉さん」


 まずは亜季ちゃんが頻繁に寄るようになった。

 2人きりで近況報告しあっては、話に花を咲かせている。


 でも俺は知っている。

 毎度の如く、玄関前で立ち止まっては、身体の鱗を悩ましげに撫で、ため息をついていることを。


 なにも用事もなしに亜季ちゃんは来ているわけではない。

 あの一件以来、生物学にやる気を出した小春ちゃんに生体サンプルを提供しているらしい。


 小春ちゃんは以前にも増して研究に没頭するようになっていた。

 よくご飯に遅れては、紬ちゃんに怒られている。


 そんな紬ちゃんは、良くも悪くも、何も変わらなかった。

 ランク3の中堅ダンジョン配信者というのが、今の肩書きだろうか。

 配信の収益はいまやアステリア学園の皆の胃袋を支える、欠かせないものになっている。そういう意味では、大黒柱だ。


 そして俺。いつもどおり自由奔放に生きている。行きつけだった店に寄ったり、ダンジョンで紬ちゃんとモンスターを倒してみたり。

 最近はランク4の昇格試験について調べているところだ。


 ランク4となると、いわゆる異能が必要になってくる。

 未だ素のフィジカルだけでランク4になった人はいない。それほどの高みなのだ。


 まあそんなこんなで、俺達の日常は落ち着きを見せ始めていた。



 その日までは



<=>



「よぉ、来たぜ~」


 土産を手に、俺がナナセの方へ尋ねたときだった。


「……っ!」


 血の匂いがした。ダンジョンの中とはいえ、ナナセの基地で血が流れるとは思えない。


 いつもより辺りが暗い。それをよく見るために俺は近づく必要があった。


 ぐちょり


 生暖かい感触が、足に当たる。恐る恐る、スマホでソレを照らす。


 亜季ちゃんだ。


 いや、亜季ちゃんだったものだ。


「おい!どうなってるんだ!?」


 俺は急いで傷口を探り当て、血で服が汚れるのも気にせずに手を突っ込んだ。



 すでに、核は破壊された後だった。



 身体の端から、サラサラと砂のように形を失っていく。

 核を失ったモンスターの運命は一つ。静かにダンジョンへと還っていくのみだ。


「……っ、ナナセ!どこだ!」


 手から重みが消えた頃、俺はようやく現実を受け入れて立ち上がった。

 部屋の奥。暗闇の方へ歩みを進める。


 一歩一歩が沼を歩くかのように重い。しかし、この事実を受け止めなければいけなかった。


「ナナセ!」


 見覚えのある銀髪が見えて、駆け寄ろうとした。


 しかしソレはナナセではなかった。


 俺の声に振り向いたソレは、ナナセとは似ても似つかない緋い瞳をしていた。


「君がセナか」


「誰だてめぇ……!」


 ソレは、振り向きざまに何かから手を引き抜いた。

 手を引き抜かれた存在は、もぞもぞと動いていた。


 その蠢く何かは、せっかくの銀髪を血の色で染めてしまっていた。


「ナナセっ!」


「ああ、もうそいつ価値ないから」


 ソレはそう言って、ナナセの核を踏み抜いた。

 一言も話せずナナセは、絶命した。


「何者だお前!」


「何者か?そうだね。新しいダンジョンの管理者ってとこかな」


「管理者?」


「前任者がとんだサボり魔だったからね、ダンジョンが新しく私を作り出したってワケ」


 そういってソレは、手についた血を振り払った。


「ダンジョンの意思だって言いたいのかよ」


「もちろん。そしてそれはつまり、私の意思でもある」


 こちらに手を翳してくるソレは、最後にこう述べた。


「私はそうだな、ネネと名乗っておこうか。ネネは3日後、地上の民に宣戦布告する」


 そう言った瞬間、俺は吹き飛ばされた。

 まるで理外の……そう異能の力のようだった。


「これ、もらっとくね」


 部屋から弾き出される寸前、俺が落としたスマホを拾ってネネと名乗る人物はクスリと笑って見せた。



<=>



「どうなってんだ!?」


「さっきまでダンジョンにいたのに!?」


 気がつくとそこは、門の前だった。門兵たちも、そしてそこにいる多数の探索者たちも、何も理解できなかった。


 俺だけはなんとなく、わかった。

 『すべての探索者をダンジョンから転送した』のだ。


 やつはこれまで続いてきたダンジョンと日本との関係性を変える気だ。


 具体的には、戦場をダンジョンの中ではなく、外にする気だ。

 この一斉転送が、それが可能であることを証明している。


「……まずいな」


 俺は走って門から離れ、タクシーを捕まえる。


「急いで走ってくれ!緊急事態だ!」


「嬢ちゃんそういったってねぇ」


「捕まらないギリギリでいいから、ほんとに早く急いでくれ」


「はぁ、はいよ」


 呆れたようにタクシーが出発する。

 このドライバーもわかっていない。街が戦場になるということがどういうことか。


 俺はひどく焦っていた。


 それは何故か?答えは簡単だ。


 モンスターはダンジョンの外で長時間活動できない。それがいままでの常識だった。


 その常識をひっくり返したのは、まぎれもなく、俺たちだ。


「頼む、間に合ってくれよ」



 開戦まで、残り3日。


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