第25話 対抗戦会議
「よーし、じゃあ会議を始めるっすよ〜!」
「お〜!」
俺たちは学園の会議室に集まり、円を描くように机を並べていた。
司会進行は元気いっぱいな紬ちゃん。今日もポニーテールをブンブン振り回しながら音頭をとってくれているうちのムードメーカーだ。
カタカタとパソコンで議事録を取ってくれているのは小春ちゃん。おでこのうえで髪をまとめてチョンマゲになってる。大きな丸メガネもつけて万全の状態だ。
そして俺。
試作品と称して小春ちゃんに改造着物服を着せられている俺である。
袖が分割式になっており、二の腕と脇が露出。丈は短く、ミニスカートくらいでひらひらとしている。気をつけなければパンツが丸見えになってしまうだろう。
「いや、どうして!?」
「まったく、うるさいよ。それともその服の性能について小一時間説明を受けたいかい?」
「ヒェ、やめときます」
「よろしい」
おっと大事な人を忘れてはいけない。
我らが生徒会長にして実質的なアステリア学園運営者。莉子会長である。
『こんにちは、聞こえてますか?』
「大丈夫っす!こっちも聞こえてるっすか?」
『問題なさそうです』
莉子会長は病院からリモート参加だ。まだ退院の予定は先のため、今回は院長に頼み込んで会議室を借りているらしい。
「じゃあさっそくっすけど、議題をどん!」
そういってホワイトボードに書類をバンと貼る。
それは、学外対抗戦の案内だった。
「ようやく来たか」
「ようやくっすよ」
この書類が来るということは、いまだアステリア学園が養成校の一角を成すという証明である。
今までは莉子会長の献身によって支えられてきた学園だが今は違う。
学園に収益源ができた。
その収益源とは、紬ちゃんの配信だ。
俺がちょくちょく顔を出すことで知名度にブーストがかかり、その勢いのまま先日収益化が通った。
その知名度と収益によって、対抗戦への参加案内が届けられたといっても過言ではない。
「この対抗戦に出るためにここまで我慢してきたというもんだ」
「我慢?何をだい?」
そりゃあんたの着せ替え人形になるという我慢だよとは口に出さなかった。
特にここ数週間は週ごとに新たな戦闘服が仕上がってくる始末。たくさん開発してくれてうれしいという気持ちと、でも全部丈がミニで恥ずかしいんだよなという気持ちがある。
「とにかく、話を進めるっす」
紬ちゃんの一声によって、会議はスタートした。
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会議の内容を話すより先に、まずは対抗戦のルールについて説明しておこうと思う。
対抗戦とはまず、養成校同士の交流と、戦闘技術の向上を目指すという名目で行われる、競技会である。
しかし競技とは名目ばかり、交流の面を強く押し出した『祭り』という側面もあるのが対抗戦の楽しみだ。
話を競技の面に戻そう。
競技では、それぞれ刃を潰したような模造武器で戦うことになる。鈍器や俺のような籠手とかは、緩衝材をつける必要がある。もちろん小春ちゃんに注文済みである。
競技が殺し合いに発展することはない。そこは対抗戦の主催、全探索者の高み、ランク5の頂点が目を光らせ、場合によっては介入するらしい。
そういやなんだかんだでその人のことを知らないんだよな。対抗戦で顔が拝めるだろうから楽しみだ。
勝ち負けに関しては、ルールは単純。
相手を拘束するか、まいったと言わせれば勝ちだ。
多種多様な戦い方があるからこそ、シンプルに勝ち負けが決まる。
対抗戦は学校ごとに先鋒・中堅・大将の3人出場制。各学校の精鋭3人が出てくることになる。
アステリア学園からも3人出場することとなる。
今回の議題はそこから始まる。
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「で、院長先生はなんていってたっすか」
『ええと、対抗戦の日には退院は間に合う見込みだと』
「むむ、なにか隠してるっす!そんな匂いがするっす!」
『匂いもなにもリモート参加ですが』
「つべこべ言わずに白状するっす!」
『……退院後もしばらくは安静にと』
やっぱそうなるか。
そもそも退院も交渉して早めてもらっているらしいから、その指示は妥当だろう。
「となると、やっぱりこの3人で出るしかないっすね」
紬ちゃんは俺と小春ちゃんを交互に見つめる。
「まあ任せとけ、先鋒で出て全部勝ってやるよ」
「いや、セナちゃんは大将にするっす」
「なっ!?なんでだ?」
「あのねぇ、決勝まで何戦あると思ってるんだい」
「体力を温存できるならそれに越したことはないっす。我が校の要だからこそ大将に腰を据えてもらうっす」
「それにだね」
「それにっす」
「「私たちも対抗戦で戦いたい」っす」
「そうか、すまん」
「わかってくれればいいっす」
紬ちゃんはビシッと俺を指さしながらそう言って見せた。
そうか、失念していた。
これは戦いじゃない。養成校全体で催される『祭り』だ。
2人だって、そして莉子会長だって、参加したいと思うだろう。
「じゃあ、3人でどう勝つか、作戦会議と行こうか」
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――都内某所
「……なんだ、お前か」
「そんなぁ怖い顔や~めて」
「何の用だ、大食い女」
「お届けモノさ、皇ちゃんに頼まれちゃってね~」
カバンから出された書類が手渡される。
「これは……対抗戦のトーナメント表?」
「せいか~い」
「……ちっ」
「あはは!予想通りの反応!」
牙門の目は、一つの学園名に吸い寄せられていた。そしてその学園が初戦で当たる敵にも。
「君のお気に入りなんだっけ、彼女。でも残念、私が彼女を先に食べちゃうね」
「せいぜいそうやって油断しとけ、大食い女」
用が以上だとわかると、牙門は書類を自分のカバンにつっこんで、その場を去っていった。
「油断?この私が?」
ペロリと唇を舐める。
「するわけないでしょ」
ランク5最弱は、いつだって油断とは無縁の性格をしていた。




