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菩提樹の下で  作者: マーク・ランシット


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8/12

「宮沢賢治の質問については、私の方から少し話をしておこう」

 竹井教授が切り出した。サリーの顔が明るくなった。


「宮沢賢二の言葉が、スリランカの学生たちに共感を与えたとすれば、それは私にとってこれほどの喜びは無い。賢二も熱心な仏教徒だったので、この国の人にとっては共通の意識があったのかも知れない。

賢二は1896年に生まれて、37歳の若さでこの世を去った。彼が、教育者であったとか、詩人や童話作家だったとかは、後世の人が勝手に付けた肩書きに過ぎない。本人は、貧しい農民たちと一緒に、農民として生き続けたいと思っていたんだ。

 彼は、子供たちの為に、たくさんの童話や歌を残している。その中でも、銀河鉄道の夜や風の又三郎は有名だ。

 多くの作家や詩人の中で、なぜ宮沢賢治が今の時代に求められ、人々の心を惹きつけるのか。それは彼の純粋さにあるのだと思う。


 立場は違うけれど、なぜガンジーがこれほど人々に愛され、尊敬され語り継がれるのか。もちろん、その思想の深さ、指導力、実行力。その他にも色々と理由は有るのだろう。

 しかし、最も大きいのはエゴやドグマを持たぬ純粋さだったと思う。見返りを求めぬ、人々への純粋な愛。だからこそ、何年経とうが、いやむしろ時間の経過と共にそのピュアさが際だって行くのだと思うんだ。彼の死後、残された手帳の中に、後に彼の代表作になる詩が発見された。それが、雨ニモマケズという作品だ」


「どんな詩なんですか?」


「こんな詩だった。


 雨ニモマケズ

 風ニモマケズ

 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ

 丈夫ナカラダヲモチ

 欲ハナク

 決シテ瞋ラズ

 イツモシズカニワラッテイル


 一日ニ玄米四合ト

 味噌ト少シノ野菜ヲタベ

 アラユルコトヲ

 ジブンヲカンジョウニ入レズニ

 ヨクミキキシワカリ

 ソシテワスレズ


 野原ノ松ノ林ノ蔭ノ

 小サナ萱ブキノ小屋ニイテ

 東ニ病気ノコドモアレバ

 行ッテ看病シテヤリ

 西ニツカレタ母アレバ

 行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ


 南ニ死ニソウナ人アレバ

 行ッテコワガラナクテモイイトイイ

 北ニケンカヤソショウガアレバ

 ツマラナイカラヤメロトイイ


 ヒデリノトキハナミダヲナガシ

 サムサノナツハオロオロアルキ

 ミンナニデクノボードヨバレ

 ホメラレモセズ

 クニモサレズ


 ソウイウモノニ

 ワタシハナリタイ」


「どっちもすごい・・」

 サリーがポツリと言った。

「宇宙の真理を解き明かそうとしている物理学者たちも、・・そして宮沢賢治も」


「ああ。結局、どちらも詩人なんだよ。先ほどのM理論の補足なんだけれども、原子の発想はすでに古代ギリシャの哲学者デモクリトスの時代に生まれている。今ではそれが素粒子と呼ばれるようになり、その素粒子が100種類を超える様になると、これはおかしいという事になった。


 M理論では、それらの異なる粒子の違いはひも(もしくは膜)の奏でる旋律の違いだと説明し、そのひもが最小の単位だとしているんだ。はじめはひもだと聞いてビックリした科学者も、ひもの奏でる旋律があらゆる物質の性質を規定しているという理論は美しいと感じた。

 真理の匂いがすると直感したんだ。その意味でも、科学者も詩人も同じモノを求めていると感じるのだよ」


 竹井竜一は、そう言って、サリーに微笑んで見せた。



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