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第7話 ホームステイ

「…おはよう」

「…はよう…ます」

 僕が氷川さんに挨拶をすると、途切れ途切れでヤンキーみたいになって挨拶が返ってくる。


 まだ昨日の事怒ってるのか…。

 まぁ、怒っているなら好都合か。僕の正体がバレにくくなる訳だし。


 僕はそれをほっとく事にして、朝のホームルームが始まるまで雄太郎と話した。



「空よ…知ってるか? あの噂」

「噂? 何だよ?」

 雄太郎が大仰に言う。


「知らないのか!? 今日、隣の国際コースにホームステイとかで女の子が来るらしいぞ!!」

「へー」

「うっっっす!! リアクション薄すぎだろ!!」

 雄太郎がヘドバンしてんのかぐらいに、頭を振っている。


「僕は何で逆に、そんなテンション高いのか分からないよ」

 僕がそう言うと、待ってましたと言わんばかりに口角を上げ、雄太郎が僕を見る。


「なんと! なんと!! その女の子が可愛いらしい!!」

「ふーん」

 僕はいつも通り、雄太郎の話を聞き流す。


 雄太郎のこの手の話って大体まるっきり違う話だったりするから、ほぼ信じられないんだよなぁ。予想外の事が起きるから周囲の警戒9、信じる1くらいの気持ちで待っているのがベストなんだよな。

 僕が外を見ていると、ある事に気づく。



 …氷川さん、チラチラこっち見てる。



 氷川さんが眉毛を八の字に変え、此方を見ている。



 何だ? やっぱり叩いた事とか謝りたいのかな?

 僕が氷川さんの方を向くと、氷川さんは同時に僕のいる方向の逆方向を見る。



 …いや、いいんだって。正体バレないから。どうしても僕の平凡な善心が謝った方が良いって言ってるけどこれが最善のはずなんだ。


 そんな事を思っていると、聞き流していたのが気に食わなかったのか、雄太郎が僕の肩を掴む。


「信じてないだろ!? 今回は本当なんだって!!」

「あー、はいはい。分かった分かった」

「見てろよ〜!! 今日の体育の時間! それが証明されるんだからなぁっ!!」

 雄太郎はそう言うと自分の席へと走って行った。


 今日の体育の時間。ウチの学校の体育は基本的に2つのクラス合同で行う。時間割的にそうするしかないのだ。



 僕は雄太郎がいなくなった事を確認すると、隣にいる怒っているだろう人を見る。


 まだ怒ってるか?

 そんな気持ちでチラッと見たのだが…


 その顔は先程とは違い、目をキラキラさせていた。



 な、何だ!? さっきと何が変わったんだ!? 強いて言うなら雄太郎がいなくなった事か!?


 僕は勇気を出して先程話題になった言葉を言ってみる。




「エ、エロ本…」


 ギロッ!!


 ひ、ひぃっ! ち、違ったみたいだ! 当たり前だよ! 言ってみたかっただけだから!

 僕は急いで窓の方を向く。


 な、何が彼女の琴線に触れたんだ?


「いやー、新学期始まって初の()()だなー」

「しかも今日の()()からは…ぐふふふふふっ!」

 男子が不穏な会話を繰り広げている。


 そして気づいた事がある。


 氷川さんはその会話の中、ある言葉の時、目を一層キラキラさせていた。




 氷川さんって多分、()()好きだ。

「面白い!」

「続きが気になる!」

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