21話~決着・6~
パリン!
陶器が割れたような音と共に、視界へポリゴンの欠片が映った。それと同時に、パーティメンバーからフライヤの欄が消える。
(え?)
突然のことに、頭が混乱していた。
「殺された」という単純な答えすら、出てこなかった。
起きた出来事を理解できなかった。
それでもなんとか理解できたのは、フライヤが死んだということだけ。
(何が……起きたんだ?)
動かない頭を動かす。しかし、ゼロは何乗してもゼロ。結局何も分からなかった。
(フライヤを殺したのは、自分だ)
しばらくして、再開された思考がそう結論をだす。
というのも、フライヤは操られた段階で奴の攻撃手段であり、盾であり、人質だったのだ。そして自身の身に危険が迫ったが為に、人質を、ということだろう。
つまり、フライヤを死に追いやってしまったのは――自分だ。
フライヤが消滅する直前に視界の端へわずかに見えた電撃。あれが致命傷だろう。おそらく最大出力で放たれたに違いない。
そうしてフライヤは永久に消滅した。FLOは現実と同様に即死する可能性があるのだから、雷レベルの電撃が直撃したと考えれば当然だ。
当然なのだが――
(だとしたら、あんまりだろ……)
自分の脳裏へ「クソゲーすぎて辞めた」というプレイヤー達の声が浮かぶ。
彼らの言葉は、これを示していたのだろうか?
目の前にいる仲間が、現実と同じように簡単に死ぬ。一瞬の内に言葉もなく消える。そんなの、いくらリアル思考の強いFLOとはいえ――酷すぎる。
残したい言葉すら言えず虚空へと消えていく。そうして残るのは、残された側が抱く悲しみや喪失感といった感情。
気づけば自分は考えていた。「生まれて初めて抱いたこの思いを和らげるには、どうすればいいのだろうか?」と。
「カァ……」(はは……)
意図せず人殺しならぬ龍殺しとなった自分は、小さく声をあげた。自分の抱く感情を、喪失感を埋める最も簡単な方法を思いついたからだ。
(あの牛型モンスターも消してしまえばいい。フライヤと同じ目に合わせてやればいいだけじゃないか)
どうせ自分は死なないんだ、何度倒されようが関係ない。あいつを殺すまで何度も戦えばいい。
それが自分の導きだした結論だった。
そこからは、あまり覚えていない。ただただ自分の中に渦巻いていた感情のままに戦った。
何度かデスペナを貰ったような気もするし、貰っていないような気もする。
ただ確かなのは、たった今、自分の目の前で牛型モンスターが消滅したということ。
(終わった――)
消滅の瞬間を見た瞬間、全身から力が抜けるように落下した。受け身をとる気力すら湧かず、自分はそのまま墜落する。
ドサッ! という音と共に、自分の残り体力がゼロになった。
大地へ墜落した自分は、視界に映った空をぼんやりと見る。
牛型モンスターを倒した。フライヤの仇をとった。大きな満足感があった。それなのに、自分の心には、ぽっかりと穴が開いたような喪失感が残っていた。
(なんか、疲れたな……)
パリン! と音が響いた。体が消滅し、灯火の状態になった。
これから、何をしようか。
何もしなくてもいいかもしれない。所詮はゲームなんだし。
一人に戻っただけだ、元々ソロプレイのつもりだったのだから、問題は無い。
ひとまず――今日はもう眠ろう。
――ピロン!
「《姫龍の記憶》のクエストを開始しました」
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