20話~決着・5~
それからすぐに《グラビティ》をフライヤに使った。その結果は――
(駄目か……)
残念ながら、効果無し。おまけに、火炎玉が掠りそうなほどの至近距離を通り過ぎていき、残っていたHPが半分を切るという結果になってしまった。
(どういう条件だろうとパーティメンバーには効果無し、てことか)
そうなると後者の方法――超上空から牛型モンスター目掛けて急降下、という方法になるのだが……
(成功したら奇跡だよな)
今更ながらに浅慮深さを感じる。自分で考えておいてあれだが、ぶっつけ本番の大博打もいいところだ。
そもそも、《グラビティ》で牛型モンスターの動きを封じたところで横からフライヤに殴られれば一瞬でデスペナだ。麻痺状態とはいえ、フライヤは牛型モンスターの手によって操り人形のように動くことが出来るのだから。
(操り人形…………うん?)
気づけば自分は、首を傾げていた。
フライヤが牛型モンスターによって操られていることは、確定だ。なぜなら、麻痺状態では動くことが出来ないからだ。
だからこそ、フライヤは牛型モンスターの操り人形だと言い切れる。そして操り人形には、必ず動かしている存在がいる。操り手だ。そうでなければ人形は動かないのだから。
ということは、つまり――
(あいつの動きを止めれば、必然的にフライヤの動きも止まる?)
操り手が止まれば操り人形も動きを止める。そしてフライヤを操っているのは――牛型モンスター。試してみる価値は充分にある。
ただ、一つ問題があった。
というのも、《グラビティ》はある程度近づかないとスキルを発動出来ない。最低でも{相手の全身をしっかりと確認できる距離}にまで近づく必要がある。
しかも「しっかりと確認できる距離」に関しては対象の体長なども考慮されている。
例えるなら「微生物は顕微鏡を覗きながらでないと使えない」といったかんじだ。おまけに、牛型モンスターに近づくためにはフライヤという障害をなんとかしなければならない。
もう「麻痺状態だから動けない」は通じない。
操られている以上、空を飛んでもおかしくない。自分の知らないことをしてもおかしくない。自殺してもおかしくない。そう、操り人形は何をしても、おかしくない。そして操られている人形は、何をされてもおかしくないのだ。
上空へと退避していた自分は、フライヤの攻撃の合間を縫うように、少しずつ降下していた。
(もう少し、もう少し)
もう少しで、牛型モンスターの全身がはっきりと見える。
集中力を切らさないようにしながら、着実に近づいていく。
(焦るな)
視界の端へと通り過ぎて行った火炎玉からフライヤへ視線を戻す。残る体力は、赤く染まっている。
上には避けられない以上、回避手段は左右の平面のみ。
一発、火炎玉が通り過ぎて行った。
(……あと五回)
削られたHPを確認し、耐えられるであろう時間を計算する。
(間にあ……うのか?)
牛型モンスターをはっきりと視認できるまでまだ距離がある。残された時間から考えると、現段階ですら成功するかは半々。近づくほど割合は変動するだろう。おまけに、今やっているのは、憶測を実証するためだけの実験だ。
(やっぱり一か八かで突撃するべきだったか)
徐々に削られるHPバーに「博打を仕掛けるべきだったかもしれない」と考えてしまう。
だが意外にも、自分は生き残ったまま《グラビティ》を発動できる距離まで近づいていた。
『《グラビティ》!』
即座に自分はスキルを発動する。その結果、牛型モンスターと共に、フライヤの動きも止まった。
今にも鼻息を鳴らしそうな体勢で牛型モンスターが止まり、自分の接近と共に舞い上がったフライヤが、鍵爪を振り上げた状態で固まる。
要するに、自分の仮説は立証されたということだ。
二秒後、フライヤと牛型モンスターが同時に動き出した。
牛型モンスターが鼻息を鳴らし、近づいてきた自分を近接攻撃で仕留めようとしていたフライヤの鍵爪が宙を舞う。
しかし、その直後――
ガアアアアアアアァァァァァッァァァッァァ!!!!
フライヤが悲鳴と共に、パリン!という音を立て――消滅した。
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