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雪の残像  作者: Motoki
2/17

 僕と一弥は、高校一年の時に同じクラスになった。

 二年になって別々のクラスになってしまったけれど、一年の時はいつも一緒にいた。

 人見知りの僕に一弥は頻繁に話しかけてくれて、一見すると怖そうな雰囲気を持っているのに、本当はとてもやさしい人だった。

 一緒にいるとすごく楽しくて、父さんの事も、僕を嫌って捨てた母さんの事も、その時は全てを忘れる事が出来た。

 ――周りのざわめきを、気にする事もなかった。

 それなのに最近、一弥との擦れ違いが多くなった気がする。


 それは、クラスが別々になったからかもしれない。

 もうすぐ三年になるから、お互い受験の事で頭がいっぱいなのかもしれない。


 でも、それだけではない事にも気づいていた。

 体を重ねていても、温もりを感じない。

 だって手を伸ばしても、『一弥』には届かない。只孤独の中で、互いの欲望を吐き出すだけの行為となっていた。


 僕の部屋に入っても、一弥は僕の名前すら呼ばない。

 鞄を無造作に床へと放って、無言で僕を引き寄せ口付ける。舌の動きは不機嫌さをぶつけるように、乱暴に僕の中で動き回っていた。

 腰に回された手は力強くて、身動きすら出来なくなる。苦しくなって一弥の胸を押すと、逆にベッドへと突き飛ばされた。

 僕は、鞄と一緒だ。

 無表情な一弥が覆い被さってくる。

「……一弥……」

 僕が怯えた表情をしたからか、名前を呼んだからか、一弥の指先が僕の頬を辿る。そしてその顔は、引きつった笑みを浮かべた。

 僕はそれが悲しくて、顔を逸らしてしまう。

 途端に、後ろを向かされた。

 さっきは僕の頬に触れた指が、後ろを解す事に使われる。さっきは感じた微かなやさしさは、今は感じる事が出来なくなっていた。

 後ろからの衝撃に、「うっ」と思わず声を洩らしてしまう。

 誰がどう聞いたって、感じて出してる声じゃないのに。

 それでも一弥は、突いてくるのを止めない。力任せに、苛立ちを表すように、腰をぶつけ続けていた。

「……イッ……タ……」

 いつからこんなセックスをするようになっちゃったんだ、僕達は。

「――はっ……あ、……あぁ……」

 獣のように這いつくばって、僕は荒い息を吐き出し続ける。

 ポトリと、白いシーツに落ちた小さなシミを、まさか涙かと見間違う。

 それが汗な事に自分でホッとして、雪のようなシーツを握り締めた。

 本当に縋りたいのは、シーツなんかじゃないのに……。

「……一……弥……」

 返事のないまま、揺さぶられ続ける。


 泣いたら負けだ。そう、心に念じながら。


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