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Rule of Scramble  作者: こーたろー
第六編 鏖殺の果て
143/220

証言B 隣国に務めるある兵士の記憶

 ん? アンタこの辺りでは見ねえ顔だな。冬だってのにサングラスなんか付けて、不審者だと思われるぜ?

 この国の酒場が見たい? あんた観光客かい。こっちよりも、隣のサウスブリテンの方が見るところは多いと思うんだが……ああなるほど、あっちは全部見ちまったのかい。なら付いてくるといい。今から行きつけの店に行くところだったから、あんたも来なよ。もともと一人で飲むつもりだったけど、さすがに観光客をひとり地方の酒場にぶっ込んで終わりってのも忍びねえ。

 ……………………。

 そら、ここだ。


 あ、そうだそうだ、聞いてくれよ。

 この前、息子が路地裏に潜んでやがった魔術師崩れの奴らに襲われそうになった時、なんと偶然通りがかったかの英雄様が息子を助けてくれたらしいんだ。

 そうそう……隣の国の、あの英雄様だよ。

 一国をまとめてるってのに、こんな下々の――それも、隣国の冴えない子供を助けてくれるなんざ、よっぽど人間が出来てんだろうなあ。イワンの奴も喜んでたよ。ああ、すまねえ。イワンってのは俺の息子だ。


 ん? 別に人間が出来てるわけじゃないって?

 何でそう思うんだよ。

 ああ、確かに。

 あの人にとっちゃあ、ウチもアッチも、同じブリテン――いや、イギリスなんだっけか。ノースブリテンには魔術の恩恵を与え、サウスブリテンは科学の恩恵を受け入れる。法則戦争なんていう世界の奔流に逆らい、信じる道を行く姿は、確かに俺たちの英雄だよ。


 いつか、俺もあの人の役に立ちてえもんだよ。

 はは、俺は北の兵士だけどよ。

 そんで、いつか。

『俺たち』が笑い合える日がさ。


 ……あれ、何だアンタ、もう行くのかよ。

 そんな飲んでねえだろ。

 はあ、まあいいけど。いやいや、お礼なんていいての。

 って、おいおい、こんな大金貰えねえわ! はあ? だから何のお礼――……って、アンタ、どっかで……?


 あ、ちょ、待ってくれ。

 なあ、アンタもしかして――!

 あーあ、行っちまったよ。

 ったく……お礼ぐらい言わせてくれよな。


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