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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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信長日記

信長日記 pⅰ


今日、筆を取る


戦を続ける中で、ふと思ったことがある


人は勝った日を覚え


負けた日を忘れようとする


だが本当に忘れてはならないのは、その間に出会った人々ではないだろうか


共に笑った日


共に酒を酌み交わした夜


命を懸けて守ってくれた家臣


私を信じ続けてくれた仲間


そして敵として剣を交えた武将たち


誰一人として無駄な出会いではなかった


もし私が明日この世を去ることになっても


彼らのことだけは忘れたくない


だから今日も書き残す


私が歩いた道を


私が感じた想いを


未来を生きる誰かが、この日記を開いた時


戦の強さではなく


人を想う心こそが一番大切だったと知ってもらえることを願いながら


織田信長

第九十三章


信長日記 ― 天下への道、そして海の向こうへ ―


私は織田信長


この日記を書く理由は一つしかない


勝者として名を残すためではない


天下人として語り継がれるためでもない


私が見てきた景色


私が出会った人々


私が流した涙


私が抱いた夢


そのすべてを未来へ残したいからだ


もしこの日記を読む者がいるなら知ってほしい


歴史に残る出来事だけが人生ではない


人と人との出会い


何気ない会話


笑い合った時間


悔し涙を流した夜


その一つ一つが人生を形づくっている


幼い頃の私は「うつけ」と呼ばれていた


誰も私を信じなかった


町を歩けば笑われ


家臣たちはため息をつき


家族でさえ私を理解できなかった


だが私は怒らなかった


笑いたい者には笑わせればいい


未来は誰にも見えない


見えているのは今だけだ


私は未来だけを見て歩いていた


父・信秀は厳しい人だった


褒められた記憶は多くない


それでも父の背中を見て学んだことは多い


国を守る責任


人の上に立つ重み


決断する勇気


父が亡くなった日


私は初めて孤独というものを知った


誰も助けてくれない


誰も答えを教えてくれない


だから自分で答えを探した


帰蝶は静かに私を支えてくれた


多くを語る人ではない


だが私が苦しい時には必ず隣にいた


戦へ向かう朝には笑顔で送り出し


敗れた夜には何も聞かず酒を差し出してくれた


あの優しさがなければ私は折れていたかもしれない


桶狭間


あの日の空は今でも忘れない


激しい雨


ぬかるむ大地


今川義元という巨大な壁


誰も勝てるとは思っていなかった


家臣たちも覚悟を決めていた


死ぬ覚悟だった


だが私は違った


勝つ覚悟だった


命を懸けるなら未来を切り開くために懸けたい


その一心だけだった


勝利した瞬間


兵たちは泣いていた


私も心の中では泣いていた


生き残れた喜びより


多くの命が散った悲しみの方が大きかった


美濃を手に入れ


岐阜と名付けた時


私は天下布武という言葉を掲げた


それは力で支配するという意味ではない


戦を終わらせるために国を一つへまとめたいという願いだった


だが願いとは裏腹に


戦は続いた


敵を倒せばまた新たな敵が現れる


昨日まで味方だった者が敵になることもあった


人の心ほど難しいものはない


斎藤道三


あの男との出会いは私を変えた


初めて会った時


私は試されていた


武勇ではない


器を見られていた


道三は私を見て笑った


その笑顔の意味を理解できたのは何年も後のことだった


柴田勝家


豪快で頼もしい男


酒を飲めば誰よりも陽気だった


戦になれば誰よりも前へ出た


私が危険な場所へ向かえば必ず隣にいた


前田利家


若く真っすぐな男


失敗もした


迷いもあった


それでも決して逃げなかった


その成長を見ているのが私は好きだった


木下藤吉郎


不思議な男だ


どれほど苦しい時でも笑う


笑顔は兵たちへ勇気を与えた


知恵では誰にも負けない


いつか大きな男になる


私はそう思っていた


丹羽長秀


冷静そのものだった


私が熱くなれば冷静になり


私が迷えば静かに助言をくれた


彼がいたから織田軍は何度も危機を乗り越えられた


私は家臣たちへ命令を出してきた


だが本当は私が支えられていた


一人では何もできなかった


皆がいたから今の私がある


本能寺


あの炎は忘れられない


熱かった


苦しかった


裏切られた悲しみより


夢が終わる悔しさの方が大きかった


天下は目前だった


あと少しだった


それでも終わった


そう思っていた


だが運命は私へもう一度歩く機会を与えてくれた


目覚めた時


私は決めた


今度は天下だけを目指さない


人の心を救う旅をしようと


数え切れない戦を越えた


絶体絶命もあった


仲間を失う悲しみも味わった


敵を討ち取りながら涙を流した夜もあった


三つの髑髏へ酒を供えた日


私は初めて敵へ感謝した


敵がいたから己を知れた


敵がいたから強くなれた


敵もまた一人の人間だった


修羅丸との出会いは忘れられない


彼は化け物ではなかった


悲しみそのものだった


誰にも語られず


誰にも覚えられず


歴史から消えた武将たちの叫び


その悲しみが形になった存在だった


私は剣を振るいながら思った


本当に倒すべき敵は人ではない


憎しみなのだと


そして私は海を渡った


異国の港で見た世界は想像を超えていた


巨大な船


見上げるほど高い建物


異なる言葉


異なる文化


異なる食べ物


異なる祈り


だが笑顔だけは同じだった


子どもは夢を語り


親は家族を守り


老人は平和を願う


国が違っても人は変わらない


だから私は学びたい


世界を知りたい


日本だけではなく


もっと広い世界を


互いに争うためではなく


互いに助け合うために


もし未来の者がこの日記を読むなら


私を英雄とは呼ばなくてよい


天下人とも呼ばなくてよい


ただ一人の人間として覚えていてほしい


迷い


悩み


泣き


笑い


何度倒れても立ち上がった一人の男として


私の旅はまだ終わらない


歴史はまだ終わらない


新しい仲間との出会いもあるだろう


新しい別れもあるだろう


それでも私は歩く


剣を持つ手が震えても


髪が白くなっても


声がかすれても


最後の一歩まで歩き続ける


それが織田信長という男の生き方だからだ


この日記の続きを書く日が来ることを願いながら


今日の筆を静かに置く

信長日記 portⅡ


今日も無事に筆を置くことができた


思い返せば長い旅だった


うつけと笑われた日々


桶狭間で命を懸けた戦い


仲間との出会い


裏切り



別れ


そして新たな希望


一つの出来事が終われば


また新しい試練が待っている


それでも私は歩みを止めない


止まれば未来は動かないからだ


海の向こうには、まだ見たことのない世界が広がっていた


その景色は私の心を大きく揺さぶった


天下とは国を治めることだけではない


人を知り


文化を知り


互いを認め合うこともまた、大きな天下への道なのだと気付かされた


明日はどんな人と出会うのだろう


どんな困難が待っているのだろう


不安はある


だが、それ以上に楽しみでもある


私は最後まで歩き続ける


この日記のページが終わるその日まで


そして、その最後の一行にはこう書きたい


「良き人生であった」と


織田信長

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