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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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若狭沖海戦 ― 天下人、海へ ―

ヴォルグ・カイゼルの一言


レオン、お前は変わった。


かつては誰よりも勇敢で、勝利だけを信じていた男だった。


だが今は違う。


平和だの、友好だの、民を守るだの……。


そんな甘い理想では、この世界は生き残れん。


歴史は強者が築く。


弱者は強者に従う。


それが世界の理だ。


織田信長。


お前は乱世を終わらせた英雄だと聞く。


ならば、この海で証明してみせろ。


お前の信念と、私の信念。


最後に勝つのはどちらなのか。


海はすべてを見届ける。


そして、この若狭の海が、新たな歴史の分岐点となるだろう。


――ヴォルグ・カイゼル

第六十章 若狭沖海戦 ― 天下人、海へ ―


夜明け前。


若狭の海は、不気味なほど静まり返っていた。


波は穏やかだったが、その静けさは嵐の前触れのようだった。


水平線には、ヴォルグ・カイゼルが支配する反乱艦隊が黒い影となって並んでいる。


大小合わせて二十五隻。


砲門はすべて開かれ、甲板には武装した兵士たちが整列していた。


一方、港では信長軍とレオン率いる忠誠派艦隊が出陣の準備を進めていた。


織田軍の兵士たちは海戦の経験が少ない。


しかし、その表情に恐れはなかった。


「上様のために!」


「日本を守るぞ!」


港中に力強い声が響く。


信長は港の高台から海を見渡した。


その隣にはレオン・ヴァルディスが立っている。


「レオン。」


「海の戦いは、おぬしたちの方が詳しい。」


「指揮は任せる。」


レオンは深く一礼した。


「ありがとうございます。」


「ですが、この戦いは私一人のものではありません。」


「日本を守る戦いでもあります。」


信長は満足そうに頷いた。


「ならば共に勝とう。」


そこへ秀吉が駆け寄る。


「上様。」


「港の民はすべて避難を終えました。」


「食料も安全な場所へ移しております。」


家康も続ける。


「敵は補給を断とうとしております。」


「長引けば不利になります。」


十兵衛は海図を広げた。


「沖には暗礁があります。」


「敵をそこへ誘い込めば、大型艦でも動きが鈍るでしょう。」


レオンは目を輝かせた。


「見事です。」


「それなら我々の高速艦で敵を誘導できます。」


信長は軍配を高く掲げた。


「よし!」


「作戦を開始する!」


法螺貝が鳴り響く。


忠誠派艦隊が港を出港した。


朝日に照らされた海を、白い波しぶきを上げながら進む。


その頃。


反乱軍旗艦ではヴォルグが双眼鏡で海を見つめていた。


「来たか。」


部下が報告する。


「敵艦十五隻。」


「織田軍も乗船しております。」


ヴォルグは不敵に笑う。


「海では陸の英雄など無力だ。」


「砲撃準備!」


一斉に砲門が開く。


「撃てぇぇぇっ!」


轟音とともに砲弾が海を裂いた。


海面に巨大な水柱が立ち上る。


レオンは叫んだ。


「面舵いっぱい!」


忠誠派艦隊は見事な操船で砲撃をかわす。


信長はその光景に目を見張った。


「これが海の戦か……。」


「陸とはまるで違う。」


レオンは剣を抜いた。


「まだ始まったばかりです!」


一方、秀吉は小型船で別働隊を率いていた。


「今じゃ!」


「敵の横腹を突け!」


織田兵が火矢を放つ。


炎は反乱軍の補給船へ燃え移った。


「火事だ!」


「消火しろ!」


敵陣が混乱する。


その隙を逃さず、家康隊が港を奪還。


捕らえられていた民やレオン派の兵士たちを次々と救出していく。


「もう安心だ!」


「織田軍が来てくれた!」


港では歓声が上がった。


しかし、その時。


ヴォルグが巨大な旗艦を前進させる。


「総督!」


「決着をつけようではないか!」


レオンは旗艦の船首へ立った。


「ヴォルグ!」


「まだ引き返せる!」


ヴォルグは激しく笑う。


「平和など夢物語だ!」


「力ある者だけが世界を支配する!」


信長は静かに刀を抜いた。


「その考えでは民はついて来ぬ。」


「力だけでは天下は築けない。」


ヴォルグは信長を睨みつける。


「織田信長……。」


「貴様から討ち取ってやる!」


巨大な旗艦同士が接近する。


船と船が激しくぶつかり、鈍い音が海に響く。


「突撃!」


両軍の兵士たちが一斉に飛び移り、甲板の上で激しい戦いが始まった。


剣と剣がぶつかり合う。


槍がうなりを上げる。


砲声と怒号が海原を震わせる。


信長は弥助とともに敵陣へ斬り込む。


秀吉は巧みな指揮で味方を援護し、家康は冷静に敵の退路を断つ。


十兵衛は電光石火の剣で敵将を次々と倒していく。


そして船首では――。


レオン・ヴァルディスとヴォルグ・カイゼル。


かつて同じ旗の下で戦った二人が、ついに剣を交えた。


「レオン!」


「お前の理想は甘すぎる!」


「ヴォルグ!」


「力で築いた帝国に、真の平和は訪れない!」


二人の剣が激しく火花を散らす。


その戦いを見つめながら、信長は静かに刀を構えた。


「この戦いは、日本だけの戦ではない。」


「未来を選ぶ戦いだ。」


海を揺るがす決戦は、ついに最高潮を迎えようとしていた。

登場人物


織田信長おだ のぶなが

天下統一を成し遂げた武将。海を越えて訪れた新たな脅威から日本を守るため、レオンと手を組み海戦に挑む。


羽柴秀吉はしば ひでよし

信長の忠臣。持ち前の知略で別働隊を率い、敵の補給船を攻撃して反乱軍を混乱へ陥れる。


徳川家康とくがわ いえやす

冷静沈着な名将。港の奪還作戦を指揮し、捕らえられていた民や忠誠派の兵士たちを救出する。


柳生十兵衛やぎゅう じゅうべえ

柳生新陰流の剣豪。敵艦へ乗り込み、圧倒的な剣技で反乱軍を切り崩す。


弥助やすけ

信長の側近で豪勇を誇る武将。信長とともに敵旗艦へ突撃し、最前線で味方を鼓舞する。


織田信栄おだ のぶひで

信長の嫡男。若き将として後方部隊をまとめ、兵站と援軍の指揮を担う。


綾姫あやひめ

信長の側室。京で負傷兵の手当てや兵糧の手配を行い、戦を陰から支える。


艦隊総督 レオン・ヴァルディス

東方遠征艦隊を率いる総督。平和を信念とし、反乱を起こしたヴォルグを止めるため信長と共闘する。


ヴォルグ・カイゼル

反乱軍を率いる艦隊副司令官。武力による世界征服を掲げ、日本侵攻を企む物語最大の敵の一人。


アレン

レオン配下の若き士官。ヴォルグの陰謀を知り、命懸けで真実を伝えた忠義の士。


異国忠誠派艦隊

レオンに忠誠を誓う艦隊。信長率いる織田軍と協力し、反乱軍との海戦に挑む。


ヴォルグ反乱軍

ヴォルグに従う艦隊と兵士たち。巨大な軍艦と大砲を武器に、日本征服を目論む。


若狭の港の人々

戦火に巻き込まれながらも、信長軍とレオン率いる忠誠派の活躍によって避難し、平和を願い続ける人々。

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