1・IF
「この前、ギャビーと
昔話をしてたんだよ。」
アルマが歯磨き粉に手を伸ばして、
遠くマイクに向かって呟いた。
眼鏡の奥にある目頭を抑え、
歯ブラシを咥えて欠伸を堪える彼女。
『昔話、好きだね。
アルがそれだけ年を重ねたせい?』
液晶画面に映し出された相手、
ティフィがアルマの呟きに関心を示す。
ギャビーはアルマの従姉妹で、
ティフィとは共通の知り合いだった。
「良いだろ、人間は年を重ねるもんだから。
思い出話くらい好きにさせろ。」
『ギャビーと何の話したの?
夜にホラー映画を観たら
トイレに行くのが怖くなって、
揃っておねしょした話とか?』
「何年前の話よ、それ。」
『14年? もうそんなになるんだ。』
歯ブラシを咥えたまま喋るアルマに、
ティフィは疑問混じりに言い返す。
「ティフィ、あたし達って
一緒によく遊んでたでしょ?」
『アルはひと見知りだったもんね。
それはいまもか。』
ティフィに嫌味を言われても、
アルマはそれを聞き流した。
液晶画面を眺めていたアルマは、
正常な動作が確認できたので
シンクでうがいを済ませる。
「ギャビーはあなたのこと
知らないんだって。」
『ぼくは知ってるのに?』
「で、思い返せばティフィがギャビーと
一緒の所を見たことは無かったもんな。
ティフィはあたしが作り出した
イマジナリーフレンドだったなぁって。」
『...なるほどね。』
歯磨きを終えて口を拭うアルマに言われ、
ティフィは得心する。
「で、こうして出来上がったのが、
あんたってわけ。」
アルマは液晶画面に取り付けたカメラ、
ティフィに向かって指をさした。
ティフィは液晶画面の表示を点滅させて、
目を驚かせる。
『え? 作ったの? ぼくを?
…怖い話じゃん!』
「自分を認識しても自己崩壊しない。
耐久テストも合格だ。」
ソファに横たわると深く息を漏らし、
眼鏡を外すアルマ。
『怖い! なにそれ?』
震えて反応を見せるティフィ。
『ちょっとアル! まだ寝ないでよ!
説明してよ!』
眠るアルマはティフィの完成を喜び、
寝ながら笑みを浮かべていた。
▶ つづく




