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2年前のトラウマに囚われたら、幻覚が話しかけてくるようになった  作者: スズミヤ


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門の前の問いかけ

【前回までのあらすじ】


2025年2月15日。キョウラはイケと一緒に試験終了のパーティーを開いた。ナユキも手伝ってくれた。はずだった。


しかし、イケは言った。「ナユキって、誰のこと?」二年前に北海道へ引っ越したはずの幼なじみは、そこにいなかった。


キョウラはナユキの家へ走った。そこにあったのは、誰も住んでいない廃墟だけだった。全ては幻だった。涙が枯れるまで泣いた後、キョウラは前に進むことを決意する――。

今日 2026年5月6日。



私は仕事から帰ってきたところだった。今はもう、書類の山と終わりのない会議に追われる会社員になっている。穏やかな日々は、仕事から帰ったときか、週末だけだ。


帰り道、私はいつも同じ道を通る。あの家を通り過ぎる――ナユキの家。今でもまだ、廃墟のままになっている。


本当にこの家を買う人はいないのだろうか? と、私はよく心の中で思う。昔はあんなにきれいで、笑い声と温もりで満ちていたのに。今はただ、時間に蝕まれた古い骨組みだけが残っている。


その家の真正面に来たとき、突然、冷たい風が背中を強く吹き抜けた。


私は反射的に後ろを振り返った。


そこには、金色に輝く夕日を浴びた彼女がいた。


でも今回は、ナユキではなかった。ピンクの着物を着たナユキでも、制服を着たナユキでもなかった。


小さなナユキが、楽しそうに走り回っていた。そして、小さな私も一緒に。彼らは笑いながら、昔はきれいだった庭で影を追いかけていた。


その光景を見た私は、小さく微笑んだ。そして、背を向けて歩き出した。


――私はもう、その幻と和解しているから。


家の門の前に着いたとき、足が止まった。


見知らぬ女性が一人、そこに立っていた。まるで誰かを待っているかのように。


道に迷ったのだろうか?それとも何か助けが必要なのだろうか?


私はその女性に近づいた。


「あの…何かお手伝いしましょうか?」


女性はすぐに振り返り、私の顔をじっと見つめた。


「あなたは…ナカムラ・キョウラさんですか?」


「あ、はい。そうですけど…何かありましたか?」


「ああ…あなたがそうなんだ。 」


女性はほっとしたように微笑んだ。長い探し物の答えをようやく見つけたかのように。私はまだ、その微笑みの意味が理解できなかった。


「えっとですね…」


彼女は姿勢を正して続けた。


「イケさんから聞いたんです。3ヶ月前くらいに、あなたは鬱で精神状態が不安定だったって。本当ですか? 」


私は一瞬、黙った。高校卒業前のあの暗い日々を思い出していた。


「ああ…はい。そうですけど…それが何か?」


「これを見てください。」


女性は自分のスマホの画面を私に向けた。


そこには、LINEのプロフィールが表示されていた。そして、その持ち主の名前がはっきりと書かれていた。


ナユキ・ノキハラ


私の心臓が激しく鼓動した。


その名前。


ずっと幻の中でしか現れなかったその名前が、今、目の前の見知らぬ女性のスマホの画面に表示されている。


女性は私をじっと見つめた。まるで私の心の奥底まで読み取れるかのように。


そして、小さく微笑んだ。


「ねえ、ナカムラさん。」


「最初からやり直してみる気はある?」



―― 完結 ――

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。


この短い物語を最後まで楽しんでいただけたなら、嬉しく思います。


私には他の作品もいくつかありますので、よろしければそちらも読んでみてください。


また別の作品でお会いしましょう。


ありがとうございました。

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