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【書籍化】野生の聖女は料理がしたい!  作者: 枝豆ずんだ
第三章 トールデ街編
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夕食は豚肉のミルク煮、え?食べれるの?


ワカイア、いや、ここは旅の仲間であるから「名前を付けましょう」と私は意気込んだ。物凄く嫌そうな顔をするワカイアの顔を見つめ「よろしくお願いします!アルパカさん!」とこれから堂々とアルパカと呼べるとすっきりした。


そして私とアルパカさんは村を出て、ずっと走り続けた。鞍がないことに不安しか感じなかったが、普段敷物に使っている大きな布を畳み、背中にかけてワカイアの体毛で編んだ太い紐で固定すれば案外なんとかなった。


そして流石は魔法種。

衝撃もなくそして速い。

飛ぶように走る。実際飛ぶわけではないが、母さんと過ごした時に感じたような風に乗って走る、という前世では経験したことのない感覚だった。


この速さのおかげか、途中で魔獣たちに襲われる事もなかった。

流石……私の幸運値はEX!


まずは一番近いという隣村までを目指しているが、大人の足で5日。アルパカさんのこの速度なら半分以下で済むかもしれない。


しかし、とにかく今夜は野宿になりそうだ。


「と、いうことで今晩はお肉です。ワカイアさんはこっちの、ラグの葉っぱです」


私とアルパカさんは大きな木の下で休むことにした。スレイマン製の魔法のテーブルクロスを広げ、手早く水や火を起こしていく。

旅をする上でこのテーブルクロスを沢山使うなら、ラグの紙のストックが重要だ。

だがこの紙は「魔力を使えない一般人でもこの紙を使い魔術式にあてれば魔術が発動する」という、実験的な意味で作ったものらしい。


スレイマンは「お前が自分の魔力を扱えるようになればそんな物はいらんだろう」と言っていたので、私の魔力覚醒を期待したい。


魔力で性質変化を促せるのなら私自身の魔力を流して何か出来る食材もあるかもしれないしね。


「まずはこのフライパンのような浅い鍋で木の実を乾煎りして、母さんの爪を使い細かく刻みます」


私は調理を開始し、誰も聞いていないがその内容を口に出す。


ハバリトンの薄切り肉は全体に塩の実と胡椒がないので乾燥させ粉状にしたラグの木、それに刻んだ薬草をまぶしていく。


「フライパンに植物の実からとった油を引いて、お肉の両面を強火でこんがりと焼きます。薄切りのお肉なのでちゃんと中まで火が通るので安心ですね」


そしてその鍋にカブラの乳を入れ、もう少し塩気が欲しいのなら塩の実を追加する。


「上手にできました~~!」


はいっ、完成と私は木製の器によそって天高くそれを掲げる。


すると調理中からあちこちに湧き上がっていた光の粒が舞うように流れ、私とアルパカの周囲をぐるぐると回り始めた。


「……やっぱり、私が調理すると結界が張れるようになってませんか?」


ねぇ、と私はアルパカさんに聞いてみる。

しかしモシャモシャと葉っぱを食べるのに忙しいアルパカさんは私に顔を向ける事さえしてくれない。わかる。食事、大事。


私はとりあえずミルク煮を一切れ別の器によそり、今晩お世話になる大木にお供えしてみた。


パンパンッと両手を合わせ「明日の朝出発しますので、それまでここで休ませてください」とお祈りをする。


するとコツン、と上から何かが落ちて来た。反射的に顔を上げる。


「……ファー○ーだ」

「かわゆい木の精霊じゃ、ボケがァ」


木の枝の上にちょこん、と乗っているファー○ーがしわがれた老人のような声で悪態をつく。


ずんぐりとした丸い体に大きな目と耳、嘴は短く前足には爪もない頼りない生き物だ。


アルパカさんが胡乱な目で自称木の精霊を眺め、フッと馬鹿にするように鼻で笑った。


「なんじゃァおどれ!喧嘩うっちょるんか!」

「あの、ちょっと……その可愛い外見で残念な台詞やめてください。今から寝るのに、何か気持ち悪い夢見そう」


プリプリと怒る姿は可愛いのに言ってる内容はチンピラのようである。

木の精霊はふわりと私たちの座る敷物の上に飛び降りて、私が大木にお供えしたミルク煮をガツガツと食べ始める。


……肉食べれるんだ、精霊って。


何かこう……朝露とか、花の蜜とか綺麗な空気で生きているイメージがあったが、まぁ、実際目の前でハバリトンの肉が食べられているのである。精霊は肉も食べる、うん、わかった、それでいい。


「んで?おどれらここからどこに行こうっちゅうんじゃ」


お供えした分をしっかり食べ、パンまで要求した森の精霊はお腹……?なのか下半身なのかよくわからないが、とにかくお腹をパンパンにし「ふぅ」と一息つくとそんなことを聞いてきた。


「目的地はこの土地を治める領主の館です。結構遠いとは聞いてるんですが、うちのアルパカさんはとても速く走れますので」

「あァ?あんな呪われた人間種のところにか?止めとけ止めとけ、おどれらのような神性持ちが行くような場所じゃねぇよ」

「と、言いますと?」

「わしら木の精霊は動けねぇでじっとここにいる。だが風があちこちの仲間の話を運んでくれらぁな。それによりゃア、なんじゃあ、あの偉そうな人間種の館はわしがここに生まれるよりずっと前から、悪意の魔女の一柱に憎まれてるそうじゃあねぇか」


そんな物騒な所に行くなんざ止めておけ、と再三の忠告。


私とその横に寝そべるアルパカさんは顔を見合わせ、器用に前足とでハイタッチをした。


「はい!領主さまギルティ!!」


もしかして「今年もうちの子供がマーサと遊びたがったから」強引に連れて行った親ばか路線も可能性としてないわけではない。

だが、やっぱり領主は何かある。


別に喜んでるわけではない。だが敵がはっきりするのは良い事だ。


私はごそごそとベーコンの塊を取り出し、それを一切れ切ってフライパンでカリカリに焼く。そこにパン粉をまぶし、貴重な蜂蜜をたらしてパンに挟んだ。


「おっ?おっ?なんだそれ?なんだ??美味いのか?」


木の精霊は先ほど食べたばかりなのに、喉を鳴らして私の手元を覗きこむ。


「ミルクが染み込んで柔らかいお肉も良いですが、カリッカリにして甘い蜂蜜をかけた甘くてしょっぱいこのベーコンサンドも最高です」

「わしの分もあるんだろうな?」

「これから長旅ですので、食料は貴重です。お供えはさっきのでおしまいです」

「わしは木の精霊じゃア言うちょるに!」

「私は料理人です」


言い返し、私は木の精霊の前にベーコンサンドを置く。


「なのでお代を頂ければこちらをお売りしましょう」

「人間種どもの使う貨幣なんぞわしは持ち合わせておらんぞ」


お金は大事だが、今はまだ大丈夫だ。

私は首を振り、そうではなくて、と続ける。


「これから領主さまの館まで私たちが通る道中に、木の精霊さんはまだまだ沢山いますよね?」

「無論じゃ」

「その精霊さんたちに私たちが寝る場所に困ったり、木の実が欲しかったら助けて下さるよう、木の精霊さんからお伝え頂けないでしょうか?」


勿論その度に結界を周囲に張り、その精霊にお供えもする。

だが先に話が通してあれば便宜を図って貰いやすいだろう。連絡報告相談、大事。


「なんじゃ、そんなことでいいのか?」

「木の精霊さんにとって大したことでなくても、人間の私にとってはとても大したことなんですよ。凄いですね、さすがは木の精霊さん」


簡単な事でベーコンサンドが貰えることに不思議そうな顔をされたので、私はとりあえず持ち上げておいた。フンス、と自慢げに鼻を鳴らす小動物は可愛い。


「まぁ、わしが伝えておらずとも、聖女の結界を張って貰えるなら皆在り難いじゃろうがな。まぁ、知っていれば自分から声をかけてくる者もおるじゃろう。よろしい、伝えて置こう」


言って木の精霊さんはベーコンサンドを啄み始めた。

私は自分用に眠る前の薬湯を沸かし、ひとまず一日目は無事終了したことにほっと息を吐くのだった。




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広島弁の精霊さん見た目と話し方のギャップ、そんなことでいいんか?が可愛い~
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