003 厄介事だらけ
「アネキ!! カチコミですかッ!?」
部下のひとりが、たまたま事務所へ戻ってきたようで、糸に縛られて拳銃を落とすヒットマンに目を向ける。
「クソッ!!」
「……テメェ、ローニンナメてンのか?」
部下はベルトの間からハンドガンを取り出し、躊躇なくヒットマンの頭に銃弾を放つ。微シャッ、と血しぶきが飛び散り、彼は死に至るのだった。
「大丈夫ですか? ラークさん」
「まぁね。絆創膏でも貼れば治るよ」
頬に触れると、赤い血がビッチャリとついていた。僕は頭を傾げ、また煙たくて臭い事務所の中に戻っていく。後始末なんて、部下にやらせておけば良い。
「ラークさん、さっき銃声音が聞こえましたが」
「うん、なんてことないよ。絆創膏ある?」
「はい、どうぞ」
「どうも」
僕はイシハラから渡された絆創膏を右頬に貼り、止血する。
椅子に座り、僕はまたもや作戦を練ることにした。
ただ、ボスを始末するという作戦は、ひとりでは到底できない。となれば……、
「イシハラ、ちょっと応談室へ来て」
「はい」
やはり腹心には伝えておくべきだろう。彼は〝空間移動〟を使えるし、僕ことラークへの忠誠心も高い。ファンブックには、そう書かれていたから間違いない。
「どうしたんですか?」
「イシハラ、当代をどう思う?」
「タケダ親分ですか?」
「そー」
「正直に言うのなら、統率力が足りないと思います」
「だろうね」
「今の親分は世襲ですし、先代のオヤジさんほどのカリスマはないように感じますね」
「まだ若いからね~」
「で、なにが言いたいんですか?」
「仮に今のタケダ総長が死んだらさ、ローニンはもっと巨大化できると思わない?」
「……それはつまり」
「イシハラの考えてる通りだよ。ただ、他の子分にはまだ言わないでね。殺るなら一気に殺りたいし……求心力のない総長から離脱する連中も集めたいしさ」
「分かりました……。しかし、ラークさん。内部抗争なんて起こしたら、他の組織に食い散らかされますよ?」
「分かってるさ。だから、一気に仕掛けたいんだよ。とりあえず、反総長派の連中をリストアップしておいて。ソイツらにも子分がいるし、人数的に優位に立たないと、あのアリ一匹通さない本家は襲えないからね~」
イシハラは、ゴクリと息を呑み込む。どこか力の抜けた口調の僕に思うことがあるのか、それとも内部抗争からのローニン壊滅を恐れているのか。
僕は、イシハラの肩をポンと叩く。
「大丈夫。困難なことはあっても、不可能なことはない」
「……はい」
僕とイシハラは応談室から出てくる。
すると、事務所のソファーに誰かが腰掛けていた。着ているスーツや部下の服装を見る限り、ローニンの幹部級だろう。
「おぉ、ラーク。さっきカチコミされたらしいな」
「えぇ。ミヤタさん」
ミヤタは、ラークよりも階級の高い幹部である。そして、ろくでもないヤツだ。やることといえば、カネの無心か敵対組織を潰せと命令するか。一応同格の幹部なのに、顎で使われるのは、原作のラークも不満に思っていた。
「でよ、頼み事があンだわ」
「なんですか?」
ミヤタはタバコをくわえ、子分に火をつけさせる。
「ブルームーンの連中が、最近ウチのシマに出張ってやがる。あの三下どもをぶちのめしてくれねェか?」
僕は目を細める。自分の組織でなんとかしろよ、と言いかけるも、ひとまずこらえた。
「分かりました。若いのを行かせます」
「いや、オメェが行け」
「なぜですか?」
「ブルームーンに、相当強ェのがいるみてェだからな。オメェほどの手慣れじゃないと、倒すのは無理だ」
そこに、イシハラが割り込んでくる。
「オジキ、ウチのアネキをひとりで行かせるわけには行きません。おれも行きます」
「あぁ、好きにせぇ」




