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課長の誘惑

「ひろむ、ひろむ」

ぺちぺちと頬を叩かれ意識が浮上する。

どうやら意識を失っていた模様。

暖かい腕の中でまどろみながら、今日みんなが少しおかしかったことを話した。

「もしかして、私のフェロモンのせいかも」

「ティリエルの?」

「そう、私たちは異性を引き付けるフェロモンをだしているんです。食欲のために強姦なんて犯罪はまずいでしょ。だからなるべく穏便にことにいたるために相手から…ね。」

なにが、ねっだ。それっていわゆる食虫植物の理論じゃないか。

俺は罠にはまった哀れな羽虫ってことか…

「おそらく前の日、女の体でいたときのフェロモンが移り香して、異性である男性が寄ってきたのでは?」

あぁ、やっぱりそうなんだ。いままで誘われたこともないのに、やれお昼だ、晩御飯だ、飲み会だと昨日は入社して以来の誘われっぷりだった。

たしかに新入社員のときはそれなりに誘われたけど、それも2,3か月だけで断り続けているとそれもなくなった。

いっても話題についていけないし、趣味も特技もない俺ではしゃべることもないしね。

誘われないのは気が楽だったし、それでいいと思っていた。

それがまた復活って。

ぼんやりベッドでまったりしているとあっという間に出社時間!

慌てて家を飛び出した。

遅刻してでもシャワー浴びてくればよかったとちょっと後悔。

「香月、今日はお昼一緒しようぜ。」

同期だというのに、すでに課長で俺の上司な男、赤川 康介(あかがわ こうすけ)が朝一、声をかけてきた。

昨日、まとめて断っちゃったからな。

少し反省して、今日は付き合うことにした。

一回くらい一緒して楽しくなければ次からは誘われないだろという合理的に答えたつもりだった。

今日もアフターのお誘いもいくつかあったが、それらは丁重にお断りした。

「俺の誘い以外は全部断ったんだって?」

なぜか嬉しそうにテーブル越しに話してくる。

そりゃ、同期とはいえまがりなりにも上司のお誘いをすげなくそう何度もお断りできないだろう。

と心の中でぼやきながら、笑顔でパスタランチをほおばった。

ランチを食べ終わったくらいからなんだか気分が悪くなってきた。

なにか合わないものでもはいっていたんだろうか?

胸のあたりがむかむかする。

朝シャワーを浴びれなかった気持ち悪さも相まってなんだか吐きそうだ。

「おい、大丈夫か? 顔真っ青だぞ。」

そういって支えてくれるが、気持ち悪くてふらふらする。

「とりあえず、その辺入るぞ。」

ささえられて飛び込んだ先は、路地裏の喫茶店…などではなく、ホテル…?

なんでこんなとこ、とは思いつつ。さすがに気持ち悪いのが先行した。

部屋にはいるなりトイレに直行。

吐くと少し楽になった気がする。

赤川は楽しそうにベッドに寝っ転がり携帯をいじっていたので、俺は失礼してシャワーを浴びさせてもらった。

「俺と外回りでたことにしたから、ゆっくりしてきていいぞー」

シャワーを浴びる俺に声をかけ、自分は仮眠をとるつもりらしい。

職権乱用だな。

おもいつつもありがたく、ゆっくりと風呂にはいり体調を戻した。

俺が部屋に戻ると赤川はぐーぐーと気持ちよさそうに眠っていた。

こいつも疲れてるんだなぁっと思いながらベッドのはしにこしかけた。

顔にかかった髪をすくいあげ、同い年で課長って立場的にも大変なんだろうなぁ。

と、同情する。

「なに? 誘ってるの?」

髪にふれた手をとられ、まっすぐな目がみつめてくる。

手をふりほどき、その場から飛びのいた。

「まさか、そんなわけないだろ。ただ、疲れてそうだなっと。」

慌てて言い訳のような言い方になったのは仕方ない、なんといっても経験値がひくすぎる。

「俺は良いぜ、入社した時から気になってたし。」

え? 俺もしかしてそれこそ誘われてる?

「お前だってそのつもりでついてきたんじゃないのか?」

「まさか、俺は…」

「シャワーまで浴びてやる気満々なんじゃ?」

「ちが、それは朝から風呂はいりそこなって、だから気持ち悪くて…」

言いながらせまってくる赤川をどうしたものかと後ずさるが、狭い室内、すぐに壁際まで追い込まれてしまう。

「そうおびえるなよ。悪いようにはしないって。」

悪いようにはって悪役が言うセリフだ。お前は一体何をするつもりだ。

俺がとる選択肢は3つ


1、つきとばして逃げる


2.助けを求める…誰に?


3.大人しく誘いにのる…のは却下!!


やっぱ1が現実的か…とか考えてるうちにもどんどん迫ってくる。

逃げるタイミングを逸した俺を壁に追い詰めた赤川の顔がすぐ近くまで迫った。

唇がふれそうなほど近づいた瞬間ばさばさっと羽根の音がしたような気がした。

「お前、誰だ!」

赤川の声に固くつむった目を開けると俺は羽根に包まれていた。

「ティリエ…?」

「もう大丈夫ですよ、ひろむ」

「どこから入ってきた。」

少しパニクっていた赤川と反対に俺はティリエルの羽根につつまれ、そこからの記憶がない…

どうしたんだっけ?





誤字脱字、文章ミス等多々あると思いますが、見つけ次第訂正していきますので、ご容赦ください。

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