表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これなるは旅の一座にございます。煮ても焼いても食えません  作者: 春巧@金曜更新予定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/59

第十八話の3 三歩めを止め、あの日を仰ぐ

「お父さん、お母さん、私帰ってきたわ」

「クレア、クレアなのかい?」

 少し身長が伸びて恥ずかしそうに笑いかける女性はまさしくクレアだった。

 夫婦はぎゅっとわが子を抱きしめた。


「ああ、信じられない」

「大きくなったね」

 涙にぬれた目でクレアをじっと見る。

「ショーでは私、大人気だったのよ」

 クレアはぽーんと宙返りをして見せた。


 現れた大きな球に乗り、器用に移動しながらどこから取り出したのか、クラブを5個6個とお手玉する。

 パッと球が消えたかと思うと、火がつけられた輪を3つあっという間に潜り抜けた。


「すごい、すごい!」

 夫婦は手をたたいて喜んだ。

 クレアは次々と芸を披露してみせ、そうしてうやうやしく夫婦にお辞儀をした。


「これで私のショーはおしまいよ」

「頑張ったんだね」

「すごかったね」

 クレアを二人はもう一度強く抱きしめた。


「これが現実ならどれだけよかったか」

 ぽつりと妻が言った。

 夫は首を振った。

「もうクレアは戻ってこない。それでも、成長したお前が見れて、私はなんという幸せ者だろうと思うよ」

「そうね、あの人に感謝しなくちゃね」

 夫婦は気づいていた。

 これがうたかたの夢であることを。


「お父さん、お母さん、いつまでも元気でね」

 そういってクレアは笑顔のまま消えた。

 後には人形が残されていた。


「ああ、助かりましたよ。私はこういうのが本当に苦手でしてね」

「旅先で偶然出会ったからってここまで引っ張ってこられるとは思わなかった」

 静まり返った夜の町。小声で仮面の男とフードを被った男が話していた。


「その代わり報酬は弾みますんで。ああ、なんならうちの一座にしばらく滞在していただいても」

「やだよ! お前その分働かせるだろ」

「これは残念」

 フードの男は仮面の男が差し出した包みを受け取ると「確かに報酬受け取った」といい、マントをひらりと翻して空にあがっていった。


「また、どこかでお会いできるといいですね、夢魔君」

「やーだね」

 仮面の男の声に、舌を出して夢魔は消えていった。


 翌朝、夫婦は扉にひっかけられた袋に入っている人形を発見した。添えられた手紙には笑顔で手を振るクレアの絵姿が描かれていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ