第十六話の2 マチネ
ヨルの歌は思った以上に好評であった。
日によっては弾き語りであったり、吟遊詩人のように滅びた国の悲劇を歌って聞かせたり、そうかと思えば観客を巻きこんで大いに盛り上げる。
おかげでショーが終わったあとの星詠みには少しずつ列ができるようになり、20人もの人が列をなして待つこともあった。
しかしどうさばいているのか、団員が片付けをそろそろ終えようかという頃には列もなくなっており、ショーに迷惑がかかることはなかった。
一度貴族が立場にものを言わせ割り込もうとした時には、ヨルは即座に星詠みの受付を終了すると宣言しさっさと帰ってしまい、民衆がにらむ中その貴族がそそくさと退散する一幕もあった。
陰から見守っていた仮面の男も「やりますねえ」と口笛を吹いた。
「今日は恋愛相談に家庭不和、痩せたいって要望に髪の毛が薄くなったのを気にしてる、ほかいろいろだったねえ」
「『あんたは髪の毛がないほうがかっこいいから思い切って剃った方がいい』には驚きました」
「嘘も方便てやつさね」
いつしか、客がはけたあと仮面の男がやってきてヨルと雑談をするようになっていた。
「そうそう、聞いてみたかったんですが」
仮面の男が言った。
「たまにお客さんに渡している薬のようなもの、あれは何ですか」
「何って…効果があるかもしれない薬だよ」
「あるかもしれない?」
「人間、効くと思って飲めば何とかなるもんさ」
ヨルは笑った。
「もちろん必要な人にはちゃんと効く薬をあげるよ。病気とか怪我とかにはね」
そうして首にかけた小さな袋をあけて、小さな石を取り出した。
「アタイの一族は生まれる時に小さな石をもって生まれてくるんだ。少しだけ治癒の力がある。だがそれ以外はからっきし」
「じゃ恋のおまじないとかやせる薬とかいうのは」
「そ。薬草を煎じた汁だよ。まあ健康にはなれるんじゃない? みんな本当は自力で願いをかなえられるのに気づいてないだけなのさ」
「なるほどねえ」
仮面の男はうなずいた。特に咎めるそぶりはない。
インチキな薬を渡したとしてもヨルはきちんと客の話を聞き、親身になってアドバイスをしていた。だからこそ皆それを信じ、時に「願いがかなった」と大喜びで報告にくるのだろう。




