第1話 魔王襲来
俺は天津創一。ある小説投稿サイトでたまに小説を投稿している、どこにでも居そうなごく普通の高校生だ。というのも、小説家という職に憧れを持っていて、今はもう他界してしまった祖父の背を追っている。
今日は家で昼飯を作るために冷蔵庫をあさってみたのだが、それはもう見事にもぬけの殻だった。そのため材料を買いに少し離れたところにあるスーパーまで徒歩でいかなくてはならなくなった。朝までは雨は降っていなかったので後ででもいいかと高をくくっていたのだが、まさか急に雨が降るなんてな……。しかもこの豪雨とはなんてついてない……。
一応俺には天津ひかりという1つ下の妹がいる。彼女は今年入学したばかりで部活に励んでいる。今朝家にあった唯一無二の電動自転車に乗って学校に行ってしまったため、うちにはもう自転車はない。だから仕方なく俺は徒歩なのだが……そのうち彼女は帰ってくるだろうがそれはさすがに俺の腹が持たない。
え? 俺の学校はどうなのかって?
フッ。今日は土曜日だから学校はないのだよ……。
妹の部活は土曜日にも活動するんだから頑張ってると思うぞ。どこまでいっても他人事だけどな。
今にもひっくり返りそうな傘をもってスーパーに向かい、買い物をし終えたその帰り道。
俺は一生忘れられないような運命の出会いをすることになる。
「———わあああああああ!!! そ、そこをどけええええええ!!!!!」
「……ん? ……はあ?!」
声のする方へ振り向くと上からナニかが降ってきたではないか。
しかし俺は傘とスーパーの袋で両手が塞がっている。俺は上を見ながら口をぽかんとあけることしかできず、そのまま俺に衝突。スーパーで買った食品がそこら中に散らばった。幸い周りには誰もいなかったのでけが人は俺と……この得体のしれない……ナニか。いやなんだコイツは。頭に何かつけてんのか? ———まるでそれは、変形したとん○りコーンだった。
俺はその頭についているとん○りコーンをつかんで引っ張った。
「あああ!!! 痛い! わがはいの角を引っ張るなあああ!!!」
「……ツノ?」
どうやらこの角らしきものは、もともとついているものだったらしい。なんというべきか、いかにもライトノベルでよくありそうな魔族みたいな感じだ。
「ああもう、なんで角をひっぱるのだ……ックシ! にしても寒いのだ……おいそこのお前! なんとかするのだ!
」
「……いやその前に言うことが———ちょっ、また風が強くなってる! 早くそれ拾って!!」
「わ、分かったのだ!」
状況が互いに飲み込めていないこの状況下で土砂降りの雨に濡れながら、散らばった食材をとにかく無我夢中に拾った。
こうして何とか散らかった食材を拾って、自宅に帰ってきたものの。ふと後ろを見ると、さっきの幼女がいた。
「……なんでまだいるんだ」
「なんでとは失礼な! 食べ物を運んできたのだぞ!」
そう、あまりにも食材を拾ってからナチュラルすぎて俺が気付かなかったのだ。
俺はこの幼女に対して、「帰るべきところに帰りな」とは言ったが、「帰る場所はない」だの、「見捨てる気か」だの、とんでもないことを言い出すものだから、とにかく黙らせるために、不本意ながらもこの幼女を『不本意ながらも』家に上げた。大事なことなので二回言った。しかし……この無駄な且つ、ヤバい押し問答を誰かに聞かれなくてよかった。幸いにも外の豪雨がかき消してくれていた。本当にこの時だけは雨に感謝したね。
まぁそれはさておき、不本意というのも、向こうからぶつかってきて、食材そこら中にまき散らして、挙句の果てに寒いしびしょ濡れだしで家に上がらせないといけない訳だ。というのもこの幼女のような見た目だ。仮にここで追い返したところで何かしらの事件に巻き込まれかねない……。そしたらどうせ罪悪感にまみれるんだからなぁ……。
そう思案しながら、俺は棚から持ってきたタオルを使って自らの体を拭く。もう一枚はこの幼女に手渡して自分で拭いてもらっている。
この後について長考していると、突然この幼女が腹を鳴らしたので仕方なくコイツの分の食事も作ることにした。
「それで、結局お前はなんだ? その得体の知れない角さえ除けばただの幼女にしか見えないんだが」
俺はフライパンを火にかけながらそう問いかける。
「だ、誰が幼女だ! ———いいか、聞いて恐れ戦け! わがはいは八代目魔王ベリアル・シャーロットなのだ!」
「……あっ、ふーん」
「なんなのだ、その反応は?! さては信じてないのだ?! わがはいが本気を出せば魔法でなんでもできるのだぞ!」
ふんす、とドヤるこの幼女魔王(笑)、説得力が皆無なんだよなぁ。
それはさておき、どうやらこの自称魔王、見た目は幼女にしか見えないが魔法が使えるらしい。どう見ても、いろんな意味で普通の人間ではないし、なにより魔法という点が気になる。なんでもできる……ねぇ……。
「本当になんでもできるのだったら、手始めにこの豪雨を止ませてみせてくれる?」