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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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010 闇vs雷


次々と目の前で倒れていく人達。

さっきみたいに魔法を使おうとするものの、私の魔力もヤリスの闇の魔法に使われてしまったようで、うんともすんともいわない。


私達を助けるために、多くの人の命が失われていること。悲しくて、申し訳なくて涙が流れる。


ギュッ


わかちゃんが私の手を握る。その手は震えていて、でも、痛いほど強く握られていて……

心の痛みが伝わってくる。


魔導師達の決死の反撃で、ケルベロスにも傷が増えてきている。だが、魔法の使えない魔導師の攻撃では、致命傷を与えることはできなかった。

一撃の重さが違いすぎる。



ついにケルベロスが動ける最後の1人の体を引き裂いた。

これで、もう動ける魔導師はいない。

そして、当初の目的であるマーレ……マーレ姫に狙いを定めたようだ。


一歩一歩、銀髪の美女に近づいていく3つ首の怪物。


もう一度携帯電話を鳴らそうとするが、手が震えてボタンを押すことができない。


だって……次鳴らしたらきっと私達が殺されてしまう。

先ほど目の前でたくさんの人が殺されたことで、私の……私達の心は打ちのめされてしまったのだ。


でも……きっとマーレ姫が殺されたら次は私達だ。


お姉さんとして、わかちゃんと太陽は守らないと……



ううん、違う。私も守って欲しい……


まだ、死にたくないよ……



誰か……助けてよ……




その時だった。マーレ姫に向かって歩いていたケルベロスの1つの首が、高々と空に舞った。


信じられない光景。

ケルベロスも何が起きたのか分かっていないらしい。痛がるのではなく、キョロキョロしながら右往左往している。


ケルベロスの顔の真下に誰かいる?


その人は、どす黒いオーラのようなものを纏っており、髪の毛が地面まで届いている。


あんな人、さっきまでいたっけ?



……あれ、あの制服、あの靴……まさか?


「か、海斗?海斗なの??」


「うそ?海斗兄?……本当に?」


あの顔、髪の毛は伸びているが、間違いなく海斗だ。

でも、あの黒いオーラ、なんなの?

私が使った魔法とは明らかに違う何か。

ヤリスが使った魔法のような、不快な感じがする。


ケルベロスが体勢を立て直す前に、海斗が攻勢にでる。

顔の下から一瞬で後方に移動すると、そのまま長い尻尾をもぎ取った。

この一撃で、さすがのケルベロスも自分が攻撃にさらされていることに気付いたようだ。だが、反撃しようにも海斗の動きが速すぎて目標を定めることができない。


爪による斬撃は空を切り、黒い炎は周りの草を燃やすだけ。

今度はお腹の真下に回り込むと、腕に黒いオーラを集める。そして、一点目がけて腕を振り上げた。


ズドン!!


黒いオーラがケルベロスの体を貫き、そのまま貫通した。

ケルベロスの残った4つの目が白目を剥く。口から泡を吐きながら、大きな音を立てて倒れた。


勝負あり。


たくさんの人達を殺した圧倒的な怪物は、それを超える圧倒的な力によって討伐された。


喜ぶべきところなのに。危険は去ったのに。

なのに……素直に喜べない自分がいる。


だって、幼なじみで親友の男の子が、なんだか遠くに行ってしまうような気がして……



海斗は倒れたケルベロスの正面に回ると、片方の頭に手をかける。


「か、海斗兄……何するの?」


怯えた声でわかちゃんが聞くが、何も答えない。


そのまま海斗は、ケルベロスの頭をもう一つねじり切った。


「ひっ!!」


「か、海斗兄、もうそいつ死んでる……」


太陽もかすれた声で話しかけるが、やはり返答はない。


聞こえてないの??


最後の顔は吹き飛ばすつもりなのか、先ほどのように黒いオーラを右腕に集めている。


そして……


パンッ!



ケルベロスの頭は……吹き飛んでいない?



「おぅ、お取り込み中悪いな。そのワンちゃん、俺に譲ってくれないか?」


黒いオーラを放つ前に海斗の腕を掴んだのは、電気のようなものをまとった長髪の男。身長は海斗より少し小さく、筋骨隆々というわけではないが、掴んだ腕は全く動かない。


「おまえ……誰だ?」


「おいおい、そういう時は先に自分が名乗るのが筋ってもん…!?」


海斗の腕に集まった黒いオーラが急に形を変え、槍状になって襲いかかる。

長髪の男の人は咄嗟に腕を離し距離を取るも、右腕に怪我を負ったようだ。少し血が流れている。


「なかなかどうして、うまく魔力制御するじゃねーか。だからこそもったいないな、闇に取り込まれやがって。

おい、そこの起きてる3人、頼みがある!」


起きてる3人って……私達のこと!?


「おまえら以外誰がいる?そこでいつまでも寝てる姫様を早く起こしてくれ!!こいつを元に戻すには姫様の力が必要だ!」


私の心の声、いつの間にか念話になってたみたい。

まあそんなことどうでもいい。とにかく今は海斗を元に戻したい。


「わかちゃん、太陽!動ける?」


「おう!何がなんだか分からないけど、とりあえずあそこの女の人を起こせばいいんだよな?」


太陽はすぐにマーレ姫の方へ走り出す。

わかちゃんは……震えてはいるが、大きな茶色の瞳はしっかり前を向いている。

大丈夫だ!


長髪の男の人は、黒いオーラをまとった海斗と互角に戦っている。ケルベロスをも圧倒した海斗とだ。

オーラを自由に操り中距離から攻撃を繰り出す海斗に対し、長髪の男は手から雷の矢を放ち迎撃している。

今度は海斗が超高速で接近して蹴りを蹴り出す。その蹴りに対し電気の壁を作り出し威力を弱め、同じく蹴りで弾き落とす。


一進一退の攻防。

その間に、太陽がマーレ姫の下へたどり着いた。


「姫様、起きてください!」


「う、うーん……」


マーレ姫は、吹き飛ばされ地面に打ち付けられたせいで、頭を切ったようだ。銀髪の半分が血で真っ赤に染まっている。

だが、呼びかけに反応しているところを見ると、命に別状はなさそうだ。


私とわかちゃんも到着し、私は念話で、わかちゃんは太陽と一緒に声をかける。


「マーレ姫、起きてください。お願いします。」


『マーレ姫……マーレ!!私の友達が大変なの。お願い、起きて!!』


「……り、里穂?里穂なの??よかった!あなた達、無事だったのね!」


「マーレ姫こそ、よかった!」


かなり弱っている様子ではあるが、血で濡れていない方の目が少し開いた。


「里穂、若葉!海斗兄がこっちに飛んでくる!」


「えっ!?」


顔を上げると、長髪の男と戦っていたはずの海斗がこちらに全速力で飛んできている。

黒いオーラが一つに集まり、大きな槍となる。


海斗、私達のこと分かってない!?


「こいつ、俺を狙ってるんじゃないのか?

やばい、マーレ!!イージスだ!!」


いや、まだマーレ姫は意識を取り戻したばかりだ。あんなに集中力がいる魔法を使えるとは思えない。


私が……みんなを守らないと!!


イージスというのは、さっきドラゴンに乗っている時にマーレ姫が使っていた防御魔法のことだ。大きな盾を出現させて、炎の竜巻の軌道を逸らしていた。


魔法はイメージ。

マーレ姫に教わったことを思い出しながら魔力を練る。

ヤリスに使われてしまった魔力は戻ったらしい。モヤモヤが私の手の中に集まってくる。


大切な人達を守れる盾。お願い!出て!!


「イージス!!」


集まった魔力を一気に放出すると、巨大な盾が出現した。



ガキーン!!



衝突の衝撃で吹き飛ばされそうになるのを、後ろでわかちゃんと太陽が支えてくれる。

1秒間がスローモーションで流れていく。突破されたら私達はきっと死んでしまう。

そんなの絶対嫌だ。

死にたくないし、何より大切な幼なじみを殺人鬼になんて絶対したくない!!


盾の中心にヒビが入る。それは少しずつ広がっていく。



ヒューン……


そして、海斗は盾に突き刺さったまま止まった。

私の盾は、大切な人を守り切った。


「上出来だ、黒髪!!ライトニングチェーン!」


ガキン!ガキン!!


盾に突き刺さった海斗を、長髪の人は雷の鎖で拘束した。動きを止められた海斗は、拘束を振りほどこうともがいている。


「マーレ!!いつまでぼーっとしてんだ!!早く封印式を展開しろ!!」


ようやく状況を把握したマーレ姫は、海斗の体を包み込むように魔法陣を展開する。


「ごめんなさい、遅くなりました!封印するので魔力を注ぎ込んでください!ホーリーディバイン!!」


長髪の人とマーレ姫、2人の魔力が注がれ魔法陣が白く発光する。


シューン……ドサッ


海斗はついに地面に倒れ込んだ。

慌てて近寄ると、寝息が聞こえてきて安心する。


こうして私達は初めての戦闘をなんとか生き延びることができたのであった。




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