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マダムリーズの帝都レフィーユコレクション  作者: 白百合三咲
撫子マドモワゼル
95/146

振り袖の令嬢

「フローラ、今日はピクニックに行きましょう。」

「そうね、エミリー。ピクニックは軽井沢が、いいかしら?」

「フローラ、私ヨーロッパがいいわ。フランスのモンマルトルはどうかしら?」

玄関先で二体の人形と遊んでいるのは律子である。ピンクのドレスを着ているのがフローラ、ブルーのドレスがエミリーである。

「律子ちゃん、ごきげんよう。」

「あっ、お姉さん。」

「リーズよ。」

やって来たのは日比谷でブティックを経営するマダムリーズである。

「あら、フローラも久しぶりね。」 

フローラはリーズが律子にあげたものだ。

「今、皆でピクニックに行くお話をしていたの。フローラの希望でモンマルトルに行くの。」

「まあ、里帰りね。」

リーズがパリから来た時にフローラも一緒に日本に来た。当然フローラの故郷はフランスである。

「ねえ、お母様はいらっしゃる?」

リーズが律子に栄子への取り次ぎをお願いしようとしたとき、

「マダム、お待ちしておりましたわ。」

栄子が侍女を連れて現れた。リーズは客間へと案内させる。

「香子を呼んできて。」

栄子は侍女の1人に娘を呼びに行かせる。

リーズが侍女に入れてもらったお茶を飲んでいると

「奥様、香子様を連れて参りました。」

侍女に連れられて赤地に白い水仙の花の振り袖の少女が入ってくる。長い髪はピンク色の簪で纏められている。

「貴女、まだその振り袖着ていたの?」

栄子が少女の着ている振り袖を指摘する。

「だってお気に入りなんですもの。」

「さあ、香子。マダムリーズよ。ご挨拶なさい。」

「高草木香子と申します。お会いできて光栄です。」

「こちらこそお会いできて光栄ですわ。」

「香子、この方はフランスの方よ。フランス語で挨拶なさい。」

「いえ、わたくしは日本は長いので日本語でも構いませんわ。」

リーズは流暢な日本語で返す。

「貴女が香子さんね、留学はいつされるの?」

「あの、」

香子は言葉につまる。

「香子は来年の9月に留学する予定ですわ。年明けに試験を控えておりますの。」

代わりに栄子が答える。

「夫人、わたくしはお嬢さんに聞いているのよ。香子さん、いかが?」

香子はうつむいたままで何も言わない。

「香子、マダムが洋装の服を作ってくださるのだからしっかりお願いしなさい。」

「お母様、わたくし洋装よりも着物のがいいわ。」

「イギリスで着物なんて着るわけにはいかないでしょ。」

香子はあまり洋装に乗り気ではないようだ。

「栄子夫人、お嬢さんはあまり洋装には興味がなさそうですし、これ以上わたくしが関与することはできませんわ。ごめんなさい。」

リーズは断りを入れ高草木家の屋敷を後にする。

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