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中央から来た研究者

「待って、俺のこと、忘れてない?」


 重たい雰囲気が漂っていた会議室に、場違いなほど軽い声が聞こえて、思わず目を向ける。


 ソファに座っていた白髪の男だった。


 白髪なので老人かと思ったが、声も顔も若い。エルンストと同じくらいの年に見える。


 整いすぎた顔に、薄い笑み。


「中央から派遣されてきたアルドさ。魔術院にいたんだけど、今は中央にいる」


 それだけ言って、言葉を切る。

 自己紹介というより、事実確認みたいな口調だった。


「一応、研究者。手伝い要員、ってところかな」


 そこまで言って、アルドは薄く笑った。


「研究室、使えないんでしょ?いや〜不便だねえ」


 まるで、不都合を面白がっているような雰囲気だ。


「はあ」


 私は曖昧に相槌を打つ。

 アルドはエルンストの方に振り返った。


「ねえ、エルンスト、もしかして僕も待機?自由?」


「いや、君はしばらく過去の研究の記録でも読んでおけ。空いた時間は私の雑用だ」


「ええ〜!雑用はいやだね」


 ため息をついたあと、アルドは横目で私を見た。

 一瞬だけ、視線が止まる。


「まあ、どうなるかは君次第でもないし」


 一拍置いて、付け足す。


「——今のところは」


 私はアルドを見返した。

 目が合う。赤い目。


 ——笑ってるはずなのに、そうは見えなかった。


「アルド」


 エルンストが、低く名を呼ぶ。


「冗談だよ、冗談」


 アルドは肩をすくめて、軽く笑った。


 エルンストは小さく息を吐く。


「今日はここまでだ。詳細は改めて詰める」


 私の方を向いて言う。


「フィーネ、今日は帰っていい。また進展があれば連絡する」


「……はい」


 椅子から立ち上がり、扉まで歩く。

 そこで、ふと気づく。


「ルーカス?帰らないの?」


 ルーカスが、一緒に来ていない。


「俺、ちょっと用があるから。フィーネ先帰ってて」


 用。エルンストに。

 この二人に接点などあっただろうか。


 疑問に思いながらも、私は頷いて会議室を後にした。


 背後で、扉が閉まる音がする。

 私が出たあと、誰が、何を話すのだろう。

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