第10話 幼馴染の推しは僕!?
「ほんっとうにいい声してる! 私の推し! 私が描いた絵でこんなに良い声の人が動いてる! マジで萌え」
そこにはイヤホンをつけて頭には「ヒロ命」と書いてあるハチマキを頭に巻いてペンライトをブンブンと振っている聖奈の姿があった。
タブレットの画面にはさっき終わったはずの僕の配信がついていた。
……何も見なかったことにしよう。
きっと、この光景は僕が見てはいけない光景……というか、聖奈が隠しておきたい事だろう。
「僕はそう言うのに理解がある男だからね。そっと、なにも見なかったことにしようそうしよう」
そっと扉を閉めて何も見なかった風にしようと思い、扉をしめようとしたら。
ガタッ
「あっ」
「……へ?」
そっと閉めようとしたのに、聖奈の部屋に物が転がりすぎてて閉めるときに音が鳴ってしまったのだ。
……これは不味いか?
「え、はっ? へ? ひ、浩人? い、いつからそこに?」
「え~と、今来たところだよ? うん」
聖奈は耳まで真っ赤にしてプルプル震えながら僕の方を見つめてきた。
なんなら翡翠色の瞳が少し潤んでいるようにも見える。
「絶対に嘘。それに、これも見られた」
言いながら聖奈は頭に巻き付けていたハチマキを外す。
手作りされているであろうそれはかなりクオリティが高かった。
光景だけ見ると推し活をしている幼馴染なんだけど、その推しが僕ってことなのか?
「すごいなそれ。聖奈が作ったのか?」
「う、うん。浩人が初配信する前から準備してた」
「ありがとな。そういうグッズとか作ってないからめっちゃ嬉しい」
他のVtuberや配信者はデビュー記念グッズとかを出してるらしいけど、僕はそう言うのをどうすればいいのかわからなかったからグッズを出していない。
いずれは、作っていきたいと思ってはいる。
「で、でもこんな風に浩人の配信見てこんなことしてる私には幻滅したでしょ。ごめんね気持ち悪い幼馴染で」
「全然気持ち悪くなんかないって。むしろ、聖奈が真剣に応援してくれてるみたいで嬉しいよ」
聖奈は普段から何を感情をあまり表に出さないから、こんな風に真っすぐ何かをしている聖奈を見るとなんだか嬉しくなる。
最近、僕が関わっていない間に変わったんだなぁ~と改めて実感させられる。
幼馴染の成長のようなものを感じられて嬉しい反面、その推しが僕であると知って気恥ずかしくもある。
勿論嬉しいんだけどね。
「ほ、本当に?」
「こんなところで嘘なんかつかないよ。まさか、ペンライトまで振って応援してくれるとはさすがに思ってなかったけどね」
「それについては触れないで……本当に恥ずかしいから」
顔を真っ赤にしている聖奈は本当に可愛くて、こんなにも可愛い女の子を地味女なんて言った理沙を許せないと思う。
でも、わざわざ復讐なんてことをするつもりもないかな。
僕は配信を頑張って生きて行けばいいから。
わざわざ最低な人に時間や感情を割くのはもったいない。
そんな隙間があるなら、聖奈や莉乃姉さんに何かをして恩返しがしたい。
「わかった。何も見なかったことにするよ」
「ん。そうして。それで、今日は何で来たの?」
「なんでって、もう夕飯の時間だぞ?」
「へ?」
聖奈は本当に意識していなかったようで驚いている。
昔から何かに一度没頭すると時間間隔がおかしくなる子だったけど、そこら辺は年齢を重ねても変わらなかったらしい。
今日は聖奈の変化に驚かされたり、変わっていないことに安心したり感情の起伏が激しい一日だった。
ちなみに、僕の二回目の配信は大成功でツッタカターでは再びトレンドの一位に輝いた。
こうやって何回もトレンドに乗ってぜひとも僕の「失恋弟」の汚名を払しょくしたいところである。
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