EP13 最終決戦
互いに最上位スキルを解放した俺と大魔王ヴォルガノンの激突は、もはや戦いというより、災害と災害の衝突だった。
「消え飛べ、勇者ァッ!!」
ヴォルガノンの身長三メートルを超える巨体から放たれる、山をも砕く右ストレート。
「遅えよ、大魔王!」
俺は追放ループで表示限界を突破したステータスを全開にし、その巨大な拳を真っ向から受け止めた。
ドゴォォォォォォンッ!!
二人の拳が激突した瞬間、強烈な衝撃波が魔王城の玉座の間を吹き飛ばし、魔界の分厚い雲を真っ二つに割った。
都合のいい「奇跡の回避」も、「土壇場での覚醒バフ」も存在しない。
同格の最上位スキルである【【【なろう系主人公】】】と【【【魔王】】】が互いの強制力を完全に相殺し合っているため、ここにあるのは純粋な暴力と魔力、そして殺意だけの剥き出しの殴り合いだ。
「『【【全属性極大魔法】】』!」
「『【【深淵なる魔界の炎】】』!!」
俺が放った極大魔法の光流を、ヴォルガノンが吐き出したどす黒い瘴気の炎が相殺し、周囲の空間が爆発で歪む。
煙幕を突き破り、俺は神速の斬撃を叩き込むが、ヴォルガノンは鋼のような筋肉と魔力障壁でそれを真っ向から弾き返し、カウンターの蹴りを俺の腹部にねじ込んできた。
「がはっ……!?」
内臓が破裂しそうな衝撃に吹き飛ばされ、瓦礫に激突する。
だが、俺はすぐに痛む体を叩き起こし、ニヤリと笑って剣を構え直した。
「ハハハハハハ! 痛快だ! スキルに強要された『やられ役』ではない、己の意志で振るう全力の拳! これほどの歓喜があるか!」
血を流し、全身をボロボロにしながらも、大魔王は腹の底から笑っていた。
「同感だぜ……! テンプレの無双ゲーなんかより、ずっと生きてるって感じがする!」
俺もまた、口の中の血を吐き捨てながら、魔王に向かって跳躍する。 シナリオ通りに動かされるだけの操り人形だった俺たちは、この泥臭い死闘の中で、初めて「自分の意志」で命を燃やしていた。
そして、数日間に及ぶ、文字通り天地を砕く死闘の末。 魔力のすべてを込めた俺の最後の一撃が、大魔王ヴォルガノンの巨体を捉えた。
「……見事だ、勇者アイン。余の、完全なる敗北だ」
ヴォルガノンはゆっくりと崩れ落ち、満足げな笑みを浮かべて目を閉じた。
かつての世界を脅かした魔王との、純粋な力のぶつかり合い。
それは、テンプレのシナリオなど関係のない、普通で、そして完璧な決着だった。
その瞬間、俺の脳内に無機質なアナウンスが響き渡った。
『――魔王の討伐を確認。世界を救済しました』
『スキルのレベルが上がりました。【【【なろう系主人公】】】が、【【【【なろう系主人公】】】】へと進化しました』
本来なら、ここで大団円だ。
ヒロインたちが集結し、俺を称え、すべてが丸く収まるハッピーエンドが待っているのだろう。 だが、俺は天を仰ぎ、ニヤリと笑って虚空へと向かって口を開いた。
「俺は、この世界の神であり物語の神である
【【【【 鐚鐚鐚鐚鐔鐔鐔鐚醐執鐚 】】】】に対して、この進化したスキルを使う!」
それは、この世界という『物語』の枠組みそのものを創り出した見えざる存在への、明確な宣戦布告だった。
「俺は、お前の用意したハーレムエンドなんて願い下げだ。だから……この魔王と一緒に、俺たちをこの物語から『追放』させてもらうぜ!」
次の瞬間、限界を突破した【【【【なろう系主人公】】】】の力が爆発的に解放された。
それは、システムによる強制ではなく、俺自身の意志で引き起こした『物語の枠外への自主追放』だ。
俺と、倒れ伏していた魔王ヴォルガノンを、まばゆい光の奔流が包み込む。
行き先なんて分からない。このふざけたタイトルの小説の『枠外』なら、どこだっていい。
俺は清々しい笑い声を上げながら、光の中へと消滅し――そして、俺たちはこの異世界の物語から永遠に姿を消した。




